4月の入社を控え、新社会人としての準備を進めている人が多くなる時期になった。ビジネスの世界では、知識とスキルを持つことでスタートダッシュが決まる。そこで、日本人材ニュース編集部が入社前に読んでおくべきビジネス書を人事担当者に取材した。本記事では、人事担当者が推薦する「仕事の基本が身につく入門書」「仕事の質を高めるスキルアップ書」「キャリアの展望を広げる発展書」の3つのカテゴリに分けて紹介する。(文:日本人材ニュース編集部)

新入社員がビジネス書を読むべき理由
ビジネス基礎力を効率的に身につけることができる
「仕事は経験が全て」とよく言われるが、ビジネス書を読むことで、多くの成功者の経験値を短時間で吸収することができる。新入社員研修では教えられない実践的な知識や、現場で使える具体的なテクニックを学べることは、ビジネス書を読む大きなメリットである。
社員先輩との会話の質が変わる
ビジネス書で得た知識は、社内/社外を問わずコミュニケーションをより意味のあるものにする。基本的なビジネス用語や考え方を理解していることで、より深い議論が可能になり、成長の機会も増えていくだろう。
評価される社員の共通点「読書習慣」
マイナビの調査によると、高い評価を得ている(=出世している)人、つまり高年収の人ほど読書をしているという結果であった。 また、管理職は非管理職の人に比べて本を多く読んでいることも分かった。
仕事の基本が身につく入門書:5選
社会人としての第一歩を踏み出すにあたって、まずは仕事の「いろは」をしっかりと押さえておくことが重要だ。ビジネスマナーから論理的思考、効果的なコミュニケーション術まで、これから毎日の業務で必要となる基礎知識を効率よく学べる5冊を選んでもらった。
『入社1年目の教科書』(著:岩瀬大輔)
選定理由: 社会人として求められる基本姿勢や仕事の進め方を紹介している。上司の期待に応える方法や、優先順位の付け方など、実践的な内容が多い。入社前後に読むことで、社会人としての基礎を固めることができる。

『1分で話せ』(著:伊藤羊一)
選定理由:「結論から話せ」と指示されても、実際にどう話せばよいのか分からないことが多い。本書では、簡潔で分かりやすい伝え方を解説しており、報告や会議での発言が向上する。1年目から「話が分かりやすい」と評価される力が身につく。

『伝え方が9割』(著:佐々木圭一)
選定理由:同じ内容でも、伝え方次第で相手の反応は大きく変わる。相手に好印象を与え、説得力のある話し方を学ぶことで、上司や先輩とのコミュニケーションが円滑になる。実践的なフレーズやテクニックが多く、すぐに使える内容である。

『ロジカル・シンキング』(著:照屋華子・岡田恵子)
選定理由:筋道を立てて考え、分かりやすく説明する力を養うための一冊である。論理的思考の基本を学ぶことで、上司への報告や資料作成の精度が向上し、仕事の信頼度が増す。論理的に考え、伝える力を鍛えたい人に適している。

『最新ビジネスマナーと 今さら聞けない 仕事の超基本』(著:宮本ゆみ子、監修:石川和男)
選定理由:基本的なマナーから最新のコミュニケーションツールの活用法まで、図解とイラストでわかりやすくわかりやすい。また、仕事の進め方や時間管理のコツ、各種社内制度の知識も含まれており、新入社員研修の代わりとしても活用できる内容となっている。

参考)人事専門誌「日本人材ニュース」で紹介した本:
【著者が語る】入社1年目上手くいく人へ成長するコツ33
【著者が語る】令和の新ビジネスマナー
仕事の質を高めるスキルアップ書:5選
基本を身に付けたら、次はスキルの段階。Excel操作やデザイン、仕事の進め方など、新入社員ではあるが即戦力として活躍するためのテクニックを学べる5冊を紹介する。
『たった1日で即戦力になるExcelの教科書』(著:吉田拳)
選定理由:Excelの基本操作から関数、ピボットテーブル、ショートカットなど、業務で役立つスキルを網羅している。作業効率を高め、データ処理の正確性を向上させることができる。Excelを使いこなせるようになれば業務のスピードが格段に上がるので、必ず読んでおきたい一冊。

『伝わるデザインの基本 増補改訂3版 よい資料を作るためのレイアウトのルール』(著:高橋佑磨・片山なつ)
選定理由:WordやPowerPointなどの資料作成に必要な「見せ方」の基本を学ぶことができる。フォントや配色、レイアウトを工夫することで、説得力のある資料を作成できるようになる。上司やクライアントに伝わりやすい資料を作りたい人に適している、合計15万部以上も発行された、デザインの入門書。

『[図解]トヨタの片づけ』(著:OJTソリューションズ)
選定理由:デスクやデータを整理し、業務効率を向上させる方法を学ぶことができる。シンプルな整理整頓の習慣を身につけることで、作業スピードが上がり、ミスを減らすことが可能となる。効率的に仕事を進めるための基礎を身につけたい人におすすめの一冊。
![[図解]トヨタの片づけ](https://jinzainews.net/wp-content/uploads/2025/02/8-564x800.webp)
『ゼロ秒思考 頭がよくなる世界一シンプルなトレーニング』(著:赤羽雄二)
選定理由:考えを素早く整理し、即断即決できるようになる思考法を解説している。紙に1分で書き出すだけで、思考のスピードと精度を高めることができる。仕事の意思決定が速くなり、上司や同僚からの評価向上にもつながる。

『なぜ、あなたの仕事は終わらないのか』(著:中島聡)
選定理由:タスクの分解方法や優先順位の付け方、「完了」の定義づけなど、効率的な仕事の進め方を学ぶことができる。 特に「時間管理」ではなく「仕事の仕方」に焦点を当てており、プロフェッショナルとしての仕事の進め方を学ぶことができる。

参考)人事専門誌「日本人材ニュース」で紹介した本:
【著者が語る】ハイパフォーマー思考 高い成果を出し続ける人に共通する7つの思考・行動様式
【著者が語る】仕事が速い人は何をしているのか? ビジネスフレームワーク活用
キャリアの展望を広げる発展書:5選
『嫌われる勇気 自己啓発の源流「アドラー」の教え』(著:岸見一郎・古賀史健)
選定理由:アドラー心理学をもとに、他人の評価に左右されずに生きる考え方を学べる。他者にどう思われるかではなく、自分の信念を持って行動することの大切さを理解することができる。主体的に仕事を進めたい人に適している。

『働く君に伝えたい「お金」の教養』(著:出口治明)
選定理由:働くこととお金の関係について基礎から学べる一冊。給与、貯蓄、投資など、人生を豊かにするためのお金の知識を得ることができる。早い段階で理解しておくことで、将来の資産形成にも役立つ。

『20代で得た知見』(著:F)
選定理由:ビジネス書ではないが、20代のうちに何を学び、どのような経験を積むべきかを考えさせる内容である。社会人としての成長に必要な考え方や行動指針を学ぶヒントになるかもしれない。

『働き方の哲学 360度の視点で仕事を考える』(著:村山 昇、イラスト:若田 紗希)
選定理由:古代・中世から現代にいたるまで、多くの先人(哲学者、経済&経営学者、心理学者、経営者など)が遺した知恵がコンパクトにまとまった1冊。「仕事や生き方について、偉大な先人たちはどう考えたのか?」を網羅的に知ることができる。

『生きづらい時代のキャリアデザインの教科書』(著:大垣尚司)
選定理由:先の不透明な現代において、人に経済やお金のはなし、働くことについて、幸福と時間の捉え方など自分で自分の身を守るための、全く新しいキャリアの考え方が学ぶことができる。

参考)人事専門誌「日本人材ニュース」で紹介した本:
【著者が語る】WILL「キャリアの羅針盤」の見つけ方
まとめ
ビジネス書はただ知識の詰め込みではなく、実践的なスキルを身につけるための良きガイドとなる。この記事で紹介した15冊は、すべて人事担当者が「新入社員に読んでほしいビジネス書」「若手社員の成長に効果的」と評価した書籍だ。
社会人としての第一歩を踏み出す前に、成長のための基礎知識を身につけることは、スムーズな職場適応と能力強化への近道となる。入社後は学んだ知識を実践に移し、その結果を振り返って改善するというサイクルを意識的に回していくことが重要だ。
知識と実践の両輪があってこそ、真のビジネススキル向上が実現できる。この記事で紹介したビジネス書を新入社員のこれからの社会人生活で役立ててほしい。