2024年春闘の賃上げ率は33年ぶりの高水準となったものの、賃上げ後の賃金に満足している人は2割に満たないことが、NTTデータ経営研究所の「働き方改革2024」に関する調査で分かった。(文:日本人材ニュース編集部)
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賃上げに対する満足度を確認するため、2023年または2024年に賃上げを経験した従業員に、賃上げ後の賃金が「物価上昇に対して追いついているか」、「自身の業務に見合っているか」を聞いたところ、満足している人はいずれも2割に満たなかった。
物価上昇に対して追いついているか | 自身の業務に見合っているか | |
大いに感じている | 4.1% | 2.0% |
感じている | 11.7% | 17.7% |
どちらともいえない | 26.4% | 35.7% |
あまり感じていない | 24.2% | 23.0% |
全く感じていない | 33.6% | 21.6% |
2024年の賃上げは、従業員100人以上の1783社が回答した厚労省の調査で1999年以降で最も高くなったが、今回の調査によると、2023年または2024年に賃上げを経験した従業員は、企業規模による違いが大きく、従業員5000人以上企業では58.9%だったが、従業員99人以下企業では34.5%にとどまっている。
また、従業員5000人以上企業でも29.1%は2023年、2024年ともに賃上げがなく、企業間の格差が大きい。
「働き方改革」、「ウェルビーイング経営」、「能力開発・支援」などの取り組みが「従業員エンゲージメント」や「勤続意向」に与える影響を調査した結果、これらに「取り組んでいる」企業等は「取り組んでいない」企業等に比べ、従業員エンゲージメントや勤続意向が約2倍から3倍高くなっている。
NTTデータ経営研究所ビジネストランスフォーメーションユニットの坂本太郎氏、古山達也氏、上野夏鈴氏は、「今回の調査により、『賃上げ』にとどまらず、『働き方改革』、『ウェルビーイングの推進』、『リスキリング等の取り組み』において、二極化が生じていることが確認されました。この二極化は、人材の確保・定着における競争力の差として、より一層格差が広がっていくと予想されます」と解説している。
実際に、2025年も賃上げや初任給アップを表明する企業が続出しているが、さまざまな人事施策を強化する企業も増えている。例えば、セガサミーホールディングスの笠井敬博人財開発本部長は「トレンドや社会環境、テクノロジーが劇的に変化していく中、会社も社員にも進化が求められます。まずは自己を認知し、どこに向かっていきたいか、そこに向けて今持っているものは足りているのか足りていないのかを理解し、タイムリーにスキルセットを見つける必要があります」と話し、社員のスキルアップを後押しする。
また、オンワードホールディングスは、2019年8月から社員の働き方改革プロジェクト「働き方デザイン」 を推進し、離職率の低下につなげている。
大手研修会社インソース執行役員の百瀬康倫氏は、企業から離職防止の相談が多くなっていることから、「自社の人材要件や成長できる可能性を社員に対して丁寧に伝えることがより大切になっています。会社はどんな人材を求めているか、各年代や役職で身につけてほしいスキルなどを可視化し発信すれば、社員は自社でのキャリアや得られる収入などが分かりやすくなります」とアドバイスする。
人的資本経営の推進が重要な経営課題となり、「人手不足」倒産する企業も出てきている。持続的な企業成長に向けて人材を確保するための取り組みが欠かせなくなっている。
「働き方改革2024」に関する調査の詳細はこちら
https://www.nttdata-strategy.com/knowledge/ncom-survey/250218/