就職情報サービスのマイナビの「マイナビ2026年卒 企業新卒採用予定調査」によると、新卒採用予定数を増やす企業は2年連続で減少したことが分かった。新卒採用競争は激化しているが、富士通が新卒一括採用を廃止すると表明するなど、ジョブ型人事制度の導入や中途採用の強化などで日本企業の新卒採用戦略は変化しつつある。(文:日本人材ニュース編集部)

2026年卒の採用予定数を増やす企業は、文系が21.3%、理系が23.2%で、文系・理系ともに2年連続で減少した。調査を行ったマイナビは、「採用充足率が年々低下するなか、前年同様、採用予定目標数はこれ以上増やせない状態まで達し、採用予定数が据え置かれている」と推測している。
採用予定数を増やす企業の割合
文系 | 理系 | |
2021年卒 | 23.2% | 28.5% |
2022年卒 | 13.5% | 17.3% |
2023年卒 | 19.1% | 22.9% |
2024年卒 | 27.7% | 29.8% |
2025年卒 | 23.3% | 25.1% |
2026年卒 | 21.3% | 23.2% |
新卒採用は売り手市場となっているが、2025年卒の採用においても日本経済新聞社が主要2242社を集計した採用計画調査によると、大卒採用計画人数は前年度実績比15.6%増の13万5711人で、増加幅は前年の21.8%を下回った。製造業派遣やドラッグストアなどの企業で大量採用が計画されているものの新卒採用数の伸びは鈍化している。
大手企業の採用動向に詳しいワークス・ジャパンの清水信一郎社長は、日本人材ニュースの取材に対して「以前は大量採用していたメガバンクなどは中途採用を強化しています。ジョブ型人事を導入する企業も出てきていますが、本来ジョブ型人事と新卒採用は相容れにくいものですので、新卒採用は曲がり角を迎えています。またコロナ禍で新卒採用した社員のパフォーマンスが低いようなら、新卒採用数をさらに絞っていく企業が増えるかもしれません」と話している。
実際に、富士通が2026年卒から新卒一括採用の廃止を表明し、新卒や中途の区別や採用計画数も定めず、職務内容に応じて必要な人材を必要な時に獲得するジョブ型人事制度の定着を目指している。
新卒採用においては、インターンシップを強化したり転勤制度を見直す企業なども出てきており、優秀な人材をいかに獲得するかをめぐって企業の新卒採用戦略は変化しつつある。
新卒全体の採用環境の見通しについて、「厳しくなる」と回答した企業は78.1%。「自社の新卒採用が厳しくなっている要因」は、「新卒学生全体の数が減っていること」(67.7%)が最多で、増加幅が最も大きいのは、「給与が低いこと(業界平均などと比較して)」(28.9%)で前年比で4.1ポイント増加した。
例えば金融業界ではメガバンクの初任給引き上げに地方銀行が追随し、横浜銀行、福岡銀行や西日本シティ銀行などは2025年度から26万円に引き上げ、九州フィナンシャルグループは30万円にする方針を決めている。
建設業界でも鹿島が2024年に28万円へ引き上げたが、大林組も28万円に引き上げるなど採用競合を意識した引き上げが行われている。
こうした動きを反映し、初任給を引き上げる企業は前年から6.9ポイント増加して54.1%。初任給(学卒生・支給額)の平均額は22万5786円で、2025年卒に比べて8999円増加した。
調査を担当したマイナビキャリアリサーチラボ長谷川洋介研究員は、「賃上げの機運が高まるなか初任給を引き上げる企業も増加し、また引き上げの動きが上場企業以外にも波及し始めています。一方で、福利厚生を活用することで社員の手取りを実質的に増額させる「第3の賃上げ」の動きも見られるなど、学生が感じる経済状況や将来の見通しへの不安を軽減・解消するために企業がさまざまな取り組みを行っていることもうかがえます」と分析している。
「マイナビ 2026年卒 企業新卒採用予定調査」の詳細はこちら
https://career-research.mynavi.jp/reserch/20250226_92878/
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