利便性の高さと一律の料金で研修担当者の課題を解決する【リスキル】

法人向け研修サービス事業を展開するリスキルは、市場参入から短期間で急成長を実現し、 2024年12月17日に東証グロース市場へ上場した。「一人でも多くの人に社会人教育を届ける」 をミッションに掲げてさらなる事業拡大を目指している同社の松田航社長に、事業内容やサービ スの特徴、今後の事業方針などを聞いた。(取材・執筆・編集:日本人材ニュース編集部

リスキル 松田 航 代表取締役社長

リスキル
松田 航 代表取締役社長

【PROFILE】早稲田大学理工学部卒業。早稲田大学大学院先進理工学科中退。 2012年、リカレントに参画。2015年7月から同社社長。2022年、リカレントから法人事業部を分社化してリスキルを設立、社長に就任。

事業内容を教えてください。

主として社員研修のサービスを提供しています。講師派遣やオンラインによって一社のみで実施する「一社研修」、複数企業が集まる日程が決まった参加型の「公開講座」、1人から手軽に即日導入できるeラーニング「動画講座」の3つの方法での提供です。

ハイクオリティーな内容の研修を、時間を掛けて作り上げ、高い料金を設定するという研修会社もありますが、私たちはそうではありません。例えば、ハイブランドで高額なバッグを買う人がいれば、手頃な価格で使い勝手の良いカバンを必要とする人もたくさんいます。

数多くある研修会社の中で、私たちは利便性の高いサービスによって、より多くの人たちに教育の機会を提供するというポジションをとりたいと考えています。

利便性を追求するようになった理由を教えてください。

事業戦略とミッションの実現という2つの面があります。

私たちがビジネス研修の市場に参入したのは2019年で、わずか5年ほど前です。先発の研修会社がたくさんある中で、同じような方針でやっていても存在価値を出すことは難しいだろうと考えました。

また、私たちは1986年に個人向け社会人教育事業から始まった会社で、「一人でも多くの人に社会人教育を届ける」をミッションに掲げています。このミッションを事業の中で実現していくことも私たちにとっては重要でした。

これらの面から考えた方向性が「利便性」です。利便性を追求すれば、多くの企業が研修を実施しやすくなり、多くの人が教育を享受できるようになるのではないかと。

実際に、企業の研修担当者の方に「なぜ私たちを選んでいただいたのか」をうかがうと、「多くの社員に研修をスムーズに提供するために、利便性が高いサービスを探していた」という声が非常に多くなっています。

「利便性が高いサービスを探していた」という声が多いということですが、研修に関する企業の課題をどのように感じていますか。

本来は、研修担当者の方が経営層や管理職、現場の社員にしっかりとヒアリングを行ってニーズを把握したり、経営戦略に合わせた人事戦略を実現していくための能力ギャップを埋めていく研修を作っていくのが当たり前になされるべきです。

ところが現実は、日々の研修の準備や運営に研修担当者の手間がものすごく掛かっていて、申込手続きや参加者の確認、研修資料のプリント・ファイリング、名札や名簿を作るみたいな業務に追われています。そうすると、どのような研修が必要なのかを考える時間がとれず、経営戦略が変更されていようとなかろうと同じ研修を続けるようなことになってしまうわけです。

戦略を実行できる人材を育てるための研修であるべきなのに、研修を実施することありきでは意味がないですよね。研修担当者の方が本質的ではない業務に時間を取られすぎているというところは非常に大きな課題ではないでしょうか。

提供しているサービスの特徴を教えてください。

ビジネス研修の提供において、研修料金を全て一律に設定しているところが大きな特徴の一つとなっています。

研修というのは直前で参加者が増減するのは頻繁に起こることですし、内容を少し変更したいみたいな話も多々あります。申し込んだ後に変更したいとなった時に、いちいち料金が変わってしまうと、担当者としては稟議を取り直したり、稟議が通らないといったことになると、本当は社員に受けさせたい研修ができなくなってしまいます。

「一人でも多くの人に」という私たちのミッションにも反しますし、お客様の利便性が大きく下がってしまいます。このようなことが続くと研修を実施したくなくなってしまいますので、いかにしてこうした部分を無くしていくかというところは、かなりこだわりを持って作り上げてきたつもりです。

研修内容にはどのような特徴がありますか。

研修内容に大きな特徴はありません。また、特定分野の研修に絞り込んでいくということも考えていません。ベーシックな研修が「とにかくシンプルに質が高いよね」と言ってもらえることが理想です。

今ですと、カスタマーハラスメント研修は売れますし、ChatGPT研修のニーズもあります。トレンドが合ったものが売れることはあっていいと思いますが、「今しか売れないかもしれない」という研修に注力していくということはあまりしたくありません。

なぜなら、研修内容がブラッシュアップされていかないからです。ベーシックな研修を磨いて磨いて、良い研修を提供していきたいと考えています。

リスキルの競争優位性と売上高推移

リスキル
(出所)リスキル「事業計画及び成長可能性に関する説明資料」(22 年5月1日までは分社前会社リカレントでの法人売上数字。25 年3月期は業績予想)

オンラインとオフラインの研修について、現状はいかがですか。

研修の提供については、コロナ禍はオンラインがほぼ全てでしたが、現在はオンラインとオフラインが半々くらい、オフラインの方がやや多くなっているかもしれません。

公開講座はコロナ禍にオンライン前提でスタートしたので、現在もオンラインのみとなっています。教室の費用がない分を全て料金に反映させているので、かなり料金を落とすことができました。他の研修会社の30 ~ 40パーセントぐらい安く提供できていると思います。

上場の狙いを教えてください。

3年後、4年後を見据えると、一定の事業規模になった時に社員数を一気に増やしていかなければならないタイミングがくるはずです。今でも人材採用の難易度が少子化でかなり上がっており、特に会社が設立されてからの期間が短い当社のような会社では、親御さんからのブロックみたいなことも発生しがちです。上場による信頼性の向上には、特に人材採用という部分において大きなメリットがあります。

ただ、上場したと言っても業界の中でまだまだ小さい存在です。できる限り早く投資家の皆さんに対しても価値ある企業にならなければいけないと思います。一方で、この会社サイズでPERばかり気にしても仕方がありませんので、まずは純粋に業績をどのように伸ばしていくかにエネルギーを注ぎたいです。

2024年12月17日、東京証券取引所グロース市場に上場した

今後の事業方針について教えてください。

現在行っている事業が好調で順調に成長していますので、仮に失敗したとしても大きな影響はないという意味で、少し冒険的なことにも取り組んでいきたいと思っています。最近発表したシンガポールへの進出もそうしたものの一つで、現地の企業に英語で研修を提供します。

来年度は20パーセント程度の成長をキープしながらやっていくという見通しです。売り上げや利益は大切ですが、サービスを提供できている人数をしっかり見ています。

おかげ様で今年度は約10万人の方に提供できていますが、これに満足することなく、できるだけ早く100万人、1000万人の達成を目指していきます。それを実現することによって、結果として売り上げや利益につながっていくのが理想です。

そして、これまで以上に多くの社員に対して、研修をスムーズに実施できるようになったことがものすごく喜ばれていますので、引き続き利便性を追求し、研修担当者の方が本質的な業務により集中できる環境づくりを支援していきたいと考えています。

(2025年2月25日インタビュー)

株式会社リスキル

代表者:代表取締役社長 松田航
設立: 20022年
所在地:東京都新宿区四谷4-28-4 YKBエンサインビル10F
TEL:0120-299-194
事業内容:人事育成コンサルティング、ビジネス研修、ITトレーニング、社会人育成
運営ブランド:リスキル、リスキルテクノロジー

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