近年、働き方改革やデジタル化の推進により、人事制度改革や組織変革の必要性が高まっており、専門的な人事コンサルティングサービスへのニーズが急拡大している。本記事では、組織・人事コンサルタントに焦点を当てて、組織・人事コンサルタントの種類や業務形態、依頼するメリット・デメリットなどについて解説する。(文:日本人材ニュース編集部)

組織・人事コンサルタントとは?

組織・人事コンサルタントとは、企業が抱える経営課題を解決する経営コンサルタントの一つで、組織・人事領域に特化し、課題解決のための支援を行う仕事である。
近年は終身雇用制度の崩壊や少子高齢化の影響もあり、組織構造や人事戦略に課題を抱えている企業が多く、組織・人事コンサルタントの需要は年々高まっている。
組織・人事コンサルタントの主な種類と提供するサービス
- 人事制度コンサルタント
- 人材採用コンサルタント
- 人材育成コンサルタント
- 業務改革コンサルタント
一口に組織・人事コンサルタントといっても、いくつかの種類が存在する。そこで本章では、組織・人事コンサルタントの4つの種類とそれぞれが提供するサービスについて解説する。
人事制度コンサルタント
制度や組織構造の設計に特化したコンサルタントである。主なサービス内容としては、人事制度の設計や見直し、組織構造の改革や再編などが挙げられる。企業の経営戦略に基づいて、最適な人事制度や組織構造を構築するための手助けを行うのが特徴で、特に評価制度の構築、賃金制度の設計、昇進・昇格制度の整備など、従業員のモチベーション向上と企業成長の両立を図る制度設計に強みを持つ。
人材採用コンサルタント
採用活動に特化したコンサルタントである。採用活動に課題を抱えている企業に対して、ノウハウの提供や最適な戦略・プロセスの提案などを行う。場合によっては、採用業務の一部をサポートしたり、代わりに採用活動を行ったりすることもある。
近年では、ダイバーシティ採用やリモート採用、採用ブランディングなど、新しい採用手法への対応支援も重要なサービス領域となっている。
人材育成コンサルタント
人材育成に特化し、全社的なパフォーマンスの向上を支援するコンサルタントである。教育・育成方針の策定から研修プログラムの企画立案までをサポートし、人材育成に関わる課題の解決を支援する。
リーダーシップ開発、スキルアップ研修、キャリア開発支援など、従業員の成長段階に応じた体系的な育成プログラムの構築を行う。
業務改革コンサルタント
業務改革に特化し、業務過多になりがちな人事業務のBPRを支援するコンサルタントである。BPRとは、「ビジネスプロセス・リエンジニアリング(Business Process Re-engineering)」の略称で、業務フローやシステムなどを根本的に見直し、再設計することである。代表的なものとしては、ITシステムの導入による各種手続きのペーパーレス化の促進などが挙げられる。
組織・人事コンサルティング会社の主な業務形態

- 総合系コンサルティングファーム
- 採用コンサルティングファーム
- 組織・人事特化型コンサルティングファーム
- シンクタンク系コンサルティングファーム
- 国内独立系コンサルティングファーム
組織・人事コンサルティング会社はその支援領域に応じて、業務形態もいくつかに分かれている。そこで本章では、組織・人事コンサルティング会社の5つの業務形態について、それぞれの特徴を解説する。
総合系コンサルティングファーム
企業の経営課題を総合的に支援するコンサルティングファームである。規模が非常に大きい点が特徴で、中には数万人を超える規模のファームも存在する。経営課題のほぼ全てを網羅してサポートするため、ワンストップでコンサルティングを依頼したい企業に向いている。
大手企業や上場企業をクライアントとすることが多く、経営戦略から組織改革まで包括的なソリューションを提供できる体制が整っている。
採用コンサルティング会社
企業の採用活動の支援に特化したコンサルティングファームである。「採用戦略に強い」「採用ブランディングに強い」など、ファームによってそれぞれ得意分野が異なる点が特徴である。応募者数が伸び悩んでいたり、定着率が悪かったりと、採用活動に課題を抱えている企業に向いている。
組織・人事コンサルティング会社
組織・人事領域の課題解決に特化したコンサルティングファームである。外資系のファームが多い点が特徴である。組織・人事制度や人材育成、組織構造などに課題がある企業に向いている。
人事制度設計から組織診断、チェンジマネジメントまで、人事領域の専門性を活かした深いコンサルティングを提供する。
シンクタンク系コンサルティングファーム
主に、官公庁をはじめとした公的機関向けのリサーチを行うコンサルティングファームであるが、人事領域のコンサルティングも行っている。メガバンクや大手企業を親会社に持っていることが多く、サービスの質や安定性を重視する企業に向いている。
国内独立系コンサルティングファーム
大手企業に所属しておらず、独自で経営課題を支援する国内のコンサルティングファームである。中・小規模のファームが多いことから、現場レベルの下流工程の課題解決を得意としている。中小企業向けのコンサルティングファームといえるだろう。
組織・人事コンサルタントに依頼するメリット・デメリット
メリット | デメリット |
---|---|
・専門家の知識やスキルを活用できる ・課題解決のスピードが高まる ・人事担当者の負担が軽減される | ・コストがかかる ・自社内に知見をためることが難しい |
組織・人事コンサルタントに依頼する最大のメリットは、専門家の知識やスキルを活用できる点である。
豊富な経験と実績を持つコンサルタントの支援により、客観的な視点での課題分析や最新の人事トレンドを踏まえた解決策の提案を受けることができる。専門家の力を借りることで、課題の早期解決や人事担当者の負担軽減が期待できる。
また、他社事例やベストプラクティスの知見を活用できることも大きなメリットといえる。一方、デメリットとしてはコストが発生する点や、社内にノウハウを蓄積できない点が挙げられる。
さらに、コンサルタントとの相性や、自社の企業文化との適合性も重要な検討要素となる。
組織・人事コンサルタントに依頼する流れ
- 自社の経営課題を洗い出し、目標を決めて到達に必要なものを整理する
- 課題解決に見合った人事コンサルティング会社の候補を挙げる
- 候補の会社の提案を受ける
- 依頼する会社を決めて発注する
実際に組織・人事コンサルタントに依頼する際は、正しい手順に沿って進めていくことが必要である。そこで本章では、組織・人事コンサルタントに依頼する基本の流れについて解説する。
自社の経営課題を洗い出し、ゴールを決めて到達に必要なものを整理する
まずは自社の現状を整理しておこう。最終的なゴールが明確になっていない状態でコンサルティングを依頼しても、十分な効果を得ることは困難である。事前に自社の経営課題を洗い出し、ゴールから逆算して到達に必要なものを整理しておこう。
この際、現状分析、課題の優先順位付け、成果指標の設定を行うことで、より効果的なコンサルティングが期待できる。なお、その際は予算も同時に定めておくことを推奨する。
課題解決に見合った人事コンサルティング会社の候補を挙げる
自社の現状を整理したら、次に課題解決に見合った人事コンサルティング会社の候補を洗い出していく。コンサルティング会社によって特徴や強みは異なるため、その会社の得意分野と自社のニーズがマッチしているかを照らし合わせながら、候補を絞っていこう。
候補の会社の提案を受ける
発注先の候補が出揃ったら、続いて各コンサルティング会社に問い合わせし、提案を受ける。提案を受ける際は、実現性のある内容か判断するために根拠や基準も確認しよう。
また、提案内容とあわせて、コンサルティング会社のこれまでの実績もチェックしておくと安心である。同業他社での成功事例や、類似課題への対応経験があるかも重要な判断材料となる。
依頼する会社を決めて発注する
全ての候補先から提案を受け終えたら、最終的に依頼する会社を決めて正式発注する。提案内容をもとに各候補間で比較を行い、会社ごとの特色や強み、相性の良し悪しを分析しよう。契約後に後悔をしないためにも、十分に検討を重ねることが大切である。
組織・人事コンサルタントに依頼する際のポイント

- 依頼する際はゴールを明確に伝える
- 社内で認識を統一しておく
- 自社に知見をためたいなら人事コンサルタントの採用を検討する
コンサルティングの依頼にはコストが発生するため、事前にどこまでのサポートを受けたいのか明確にしておく必要がある。そこで本章では、組織・人事コンサルタントに依頼する際の3つのポイントを紹介する。
依頼する際はゴールを明確に伝える
依頼時はコンサルティングにおけるゴールを明確に伝えよう。コンサルタントに相談した結果、本筋とは別の課題が見つかるケースは珍しくない。
最初にゴールを明確に伝えておくことによって、お互いに建設的な話し合いができ、より適切なアドバイスを受けられるようになる。具体的な成果目標や期待値、プロジェクト完了時の理想的な状態を数値化して共有することが重要である。
社内で認識を統一しておく
コンサルティングを依頼する前にあらかじめ社内で依頼内容やゴールに関する認識を統一しておくことが大切である。認識のズレが生じていると、プロジェクトが難航し、思うような結果を得られない可能性が高くなる。
経営層、人事部門、現場管理者の間で課題認識と改善方向性を共有し、全社的なコミットメントを確保することが成功の鍵となる。もし社内で認識がまとまらないようであれば、コンサルタントにその旨を伝え、すり合わせ段階からアドバイスを受けよう。
自社に知見をためたいなら人事コンサルタントの採用を検討する
コンサルティングの依頼は課題の早期解決にはつながるものの、社内にノウハウを蓄積できないため、人材育成には向かない。よって、長期に渡って課題に取り組む必要がある場合は、社内に人事コンサルタントを取り入れて、自社に知見を蓄積する方法も検討しよう。
信頼できる組織・人事コンサルタントを見つけることが重要
組織・人事コンサルタントは、組織・人事領域における課題解決のスペシャリストではあるが、コンサルタントに任せておけば万事解決というわけではない。本気で自社の課題を解決したいのであれば、コンサルタントとの密接な連携が不可欠である。そのためには、ベストパートナーとなり得るような、信頼の置ける組織・人事コンサルタントを見つけることが重要だろう。
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