人材採用

【インターワークス】母集団を多く集めるよりも効率よく採用できるサービスを創造する

求人メディア、人材紹介、採用支援等のサービスを展開する人材会社インターワークスが昨年12月に東証マザーズ市場に上場した。採用のミスマッチなど様々な課題がある企業の人材採用にどのようなサービスを提供するのか、インターワークス社長の雨宮玲於奈氏に聞いた。

インターワークス

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雨宮 玲於奈 代表取締役社長

1975年神奈川県生まれ。法政大学経済学部卒業後、光通信を経て2003年リクルートエイブリック(現リクルートキャリア)に入社。入社後、リクルートにてメディカル・ヘルスケア業界を対象とした事業開発を手掛ける。同時にグループ会社である日本医療情報センター(現リクルートメディカルキャリア)代表取締役を兼務。12年リクルートエージェント(現リクルートキャリア)にて中途事業本部領域企画統括部執行役員に就任し、メディア・人材紹介ビジネスを担当。13年リクルートホールディングス国内事業統括室カンパニーパートナーに就任。同時にグループ会社であるスタッフサービス・ホールディングス取締役、リクルートスタッフィング取締役を兼務。14年1月当社副社長を経て4月から代表取締役社長に就任。

事業の概要を教えてください。

メディアサービス事業は、全国の製造業の求人情報を集めた「工場WORKS」、人材派遣・正社員・アルバイトの求人情報を網羅した「お仕事マイサーチ」、アパレル業界に特化した「アパレルWORKS」、販売や接客の仕事を集めた「販売・接客WORKS」、インターネット上に掲載されている転職・派遣・アルバイト・新卒などの求人情報を集めて一括で検索できる求人情報サービス「Waccle(わっくる)」などのサイトを通じて、人が介在しないネットによる「メディアマッチング」を行っています。

人材紹介事業は、自動車や半導体等の製造業界、IT・インターネット業界のエンジニア職やプログラマー等の業界専門職種、業種を問わない管理部門職種やグローバル職種といった業界・職種ごとに担当組織を編成し、求人企業の中核を担うミドルマネジメント層を中心とした高付加価値人材を正社員として紹介しています。

そして採用支援事業は、子会社の日本データビジョンが、求職者の応募受付からセミナーや選考会の運営、内定者フォローまでの採用実務の代行を行っています。2013年に当社グループに加わりましたが、それまで毎年1000人ほどの新卒の採用支援に取り組んできた実績のある会社です。企業にとっては業務効率化によるコストメリットが大きく、リピート率は80%以上と大変高くなっています。

企業の採用の課題に対して、どのようなサービスの強化が必要だと考えていますか。

主力サイトの「工場WORKS」のクライアントは、工場に求職者を派遣する人材派遣会社と、求職者を自ら直接確保しようとする製造業の企業です。製造業では、景気が多少良くなっていることと少子高齢化の影響で、製造ラインの労働者が不足しているという状況にあります。

従来は派遣会社から期間工を充足できていたのですが、それでは足りなくなってきたので「自社の従業員は自力で揃えよう」という動きが出てきています。そのため、製造業の企業からの直接の求人件数が圧倒的に伸びています。 採用においては、数とコストが二律背反する問題で、優秀な人材をいかに低コストで効率的に採用するかが採用担当者の至上命題です。昨今のように景況が良くなると競争が激化し、コストも上昇します。

また、「100人面接して1人しか採れない」という非効率な採用活動がまん延しています。そして、やや無理をして採用すると辞退も含めて応募後のミスマッチが増えて充足率が低下します。これが日本経済の足を引っ張っているわけです。こうした中で、当社としては多くの母集団を集めるということよりも、必要な応募者をきちんと集めて効率よく採用できるサービスを創っていくことが大事だと思っています。

我々が「メディアマッチング」と称しているのは、高いコストを掛けることなく、サイトを活用して人材が充足できる確率を高めていくサービスを指しています。このサービスを磨き込んでいきたいと考えています。また、日本ではホワイトカラーに対する人材サービスは普及していると思いますが、ホワイトカラー以外の求人については、主にチラシやハローワークに頼っているのが現状です。したがって、ホワイトカラー以外の人たちに対する求人情報をもっと充実させることが非常に重要だという発想がベースにあります。

そこでネットを活用し、セグメントキラー的なサイトを展開していくことが有効ではないかと考えています。「工場WORKS」の分野でも、チラシやフリーペーパーなどはあるにしても、正社員や契約社員・期間工、派遣まで包含する工場労働者のマッチングサイトとしての競合は存在していないのではないかと思います。

インターワークス

インターワークスの社長に転じた経緯を教えてください。

前職のリクルートエイブリック(現リクルートキャリア)では、ヘルスケア領域の人材紹介に携わりました。主に製薬会社がクライアントでしたが、真のパートナーになるために製薬会社の顧客は誰かを考えたときに認識したのがドクターという存在です。

そのことからドクターの斡旋ビジネスに関心を深め、2005年に医療機関への医師紹介・看護師派遣事業を手がける日本医療情報センターを買収し、リクルートドクターズキャリアという社名に変えて代表に就任しました。400程度の病院を回りましたが、その間に医師の偏在という問題を目の前にして、ビジネスを超えた問題解決への情熱を焚き点けられたのです。それが当社に転じた大きな理由にもなっています。

12年にリクルートがホールディングス体制に移行した際に役員としてリクルートキャリアへ戻り、ここで非ホワイトカラーへの情報提供レベルの低さを再認識しました。そこで、「工場WORKS」の存在を知ってしまったわけです(笑)。そして14年1月に当社に入社しました。

リクルートという大きな看板の経営陣の一角として次世代に繋ぐ役割と、まだまだ自分が世の中に提供できることを自分の手でやるということの大きな選択でした。当時38歳で、やるならリクルートの延長線上ではなく、「なぜその会社?」と言われるようなところでやろうという思いに至ったのです。 インターワークスには、「工場WORKS」という発想力と商品設計の志向を持っているところに大きな魅力を感じました。

今後の事業展開について教えてください。

求職者が求人メディアにある応募ボタンを押すと、企業側はそのことを把握します。このシステムはどのサイトにも構築されていますが、そのサイトのためだけにつくられているわけです。一方、当社は正社員からアルバイトまで全方位的にサービスを行き届かせることが大切だと考えています。日本に400万人の応募者がいるのならば、そのすべてをトラッキングできる容量のシステムを先につくればいい。

つまり、このトラッキングシステムで応募者の属性をビッグデータ的に集めて、どういう案件に絞り込めば採用決定確率が高まるかを逆算的に導き出すわけです。さらに言えば、応募者と企業の本質的な部分をマッチングするような機能を実装する。そうすることで全体的な効率化が図れます。こうしたシステムへの先行投資を行っていくことが大事ではないかと思います。

そして、当社だけでなく、様々な業界・業種の企業がマッチングシステムを考えていると思いますが、そうした企業とも連携し、全体として人材の充足確率を高めていくことも大切です。現在でも応募を促進するためにビッグデータの活用が行われていますが、我々は応募を促進することだけに価値は置かず、あくまでも充足確率を高めるところに価値があると考えています。

すべての仕事の価値は同じレベルで、そこに差はありません。したがって、提供する情報量に差をつけてはならないと思います。ですから、工場のワーカーやアパレルのスタッフといった領域に特化する形で、“情報過疎”を埋めるサイトを提供していきたいと思っています。そして、ただサイトをつくるだけでなく、工場やアパレルの現場で働く意味はどこにあるのか、といった本質的な部分も伝えるようなサイトにしていきます。

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