人材採用

【マイスター60】専門性と経験が必要とされる分野で活躍するシニア

少子高齢化を背景に労働力人口は減少の一途を辿る。高年齢者の雇用政策は大きな課題となっているが、雇用延長等の施策には様々な課題が顕在化している。シニア層に特化した人材サービスを行うマイスター60社長の柴田一郎氏に、人材マネジメントの現状や人材ニーズを聞いた。

マイスター60

マイスター60
柴田 一郎 取締役社長

1947年、兵庫県出身。神戸大学経済学部卒業後、伊藤忠商事入社。自動車部門部長、機械カンパニー経営企画部長等を歴任。2007年マイスター60取締役社長に就任。マイスターエンジニアリング取締役常務執行役員。

東日本大震災による被害はなかったでしょうか。

当社では幸いにして直接的な人的・物的な被害はありませんでした。大震災により亡くなられた方に衷心よりお悔やみ申し上げます。併せて被災された皆様に謹んでお見舞い申し上げます。

当社はシニア層に特化した人材サービスを行っており、昨年で創業20年を迎えました。特に施設管理、建築設計、電気工事関連などの専門家が多数登録していることから、今回の大震災では、損害保険会社から「家屋の被害状況を調べるために経験のある鑑定士が百人単位で必要だ」といった依頼や、被災者を受け入れるための施設整備に伴う人材需要に対応しています。当社の得意とする分野で復興に貢献したいと考えています。

シニアの人材マネジメントはどのような状況でしょうか。

2006年に改正高年齢者雇用安定法が施行されてから、定年後の継続雇用制度はほとんどの企業で導入されています。しかし、継続雇用となっているシニアの様子を見ていると、今までと同じ仕事をしながら給与が大きく減るといった報酬体系や、かつての部下の下で働くことへの心理的な抵抗感などから、モチベーションが低下している方が多いように見受けられます。

法律に従って仕方なく雇用延長をしているという意識が強い経営者がいるのも事実でしょう。一方で新しい仕事を探すのは大変だから不満があっても我慢して働き続けているという方も多いわけですから、活躍を促すような制度運用ができている企業は少ないのではないでしょうか。

シニアの活躍を促すための人事施策に関する課題は?

70歳まで働くことが視野に入っている時代です。専門性の高いシニアが60歳から新しい仕事を探せば、その後10年間働き続ける道は見えやすいのでが、雇用延長を終えた65歳から新しい仕事を探すのは採用時のハードルが非常に高くなってしまい、仕事を得られない可能性が高まります。

当社は「60歳新入社員、70歳選択定年」という旗印を掲げていますが、雇用延長の影響で登録している人材の平均年齢はここ数年で2歳ほど上がり65歳に近づいています。20年にわたる実績がありますので、当社からの派遣・紹介であれば受け入れていただけるクライアントは多いのですが、65歳の人材を新たに受け入れるという判断は企業にとってなかなか難しいものです。ですから、雇用延長については、65歳以降の働き方まで企業、シニア双方が十分に考えていく必要があります。

労働力人口の減少は急速に進み、シニアの活用は欠かせませんが、モチベーションの低下を招くような制度を漫然と続けていくのは得策ではありません。モチベーションを持続して活躍してもらうための仕掛け、特にホワイトカラーの処遇にはどの企業も頭を悩ませています。制度を整えたから急にできることでもありませんので、シニアの受け入れに対して組織として取り組んでいくための工夫が必要だと思います。

マイスター60

派遣・紹介したシニアはどのような分野で活躍していますか。

当社が得意とする施設管理、建築設計、電気工事関連という分野は非常に地味ではありますが安定した事業運営には欠かすことができない仕事です。このような仕事にはどうしても若い人の目が向かないため人材確保に苦労している企業が多いのです。資格が必要とされることも多く、専門性が高く豊かな経験を持つシニアが求められます。

最近では、人材派遣に対するコンプライアンスを意識して、紹介予定派遣、人材紹介での相談が増えています。信頼できるシニアを直接雇用することのメリットと人材派遣のコストを比較すると最近では直接雇用を選ぶ企業が出てきています。

海外で活躍するシニアも増えているのでしょうか。

グローバル市場で日本企業を成功させるために活躍している日本人はたくさんいます。特に東南アジアには日本の建設会社が多数進出していますので、設計、据付、施設管理、メンテナンスといった仕事に対して専門性を持つシニアを求める依頼があります。

商社や銀行がアジア市場でのプロジェクトを積極的に進めていますので、フィージビリティスタディの段階から検討に加わり、必要な人材の調達を支援しています。最近、タイとベトナムに出張し、大規模な工業団地を訪問しました。700社のうち500社が日系企業で、工業団地の責任者からは、専門性と豊かな経験を持つ日本人のシニアは大歓迎だと言われました。

新たな人材ニーズにはどのようなものがありますか。

知的財産権の調査を業務委託で行っています。大手企業には専門部署がありますが、中堅・中小企業では専門家が不足しています。世界でも有数の技術を持つ企業でも知的財産の手続きや管理が十分でないケースがありますので専門知識を持つシニアが支援します。

当社には約2400人のシニアが登録していますが、知的財産の専門家が100人程度います。少ないように思われるかもしれませんが、業種や技術分野ごとの専門性が問われ、専門家の絶対数が少ないため貴重な人材です。ITを活用して在宅勤務も可能な仕事ですので働きやすく、現在24人が稼動していますが、需要の拡大が見込める領域です。このようにシニアの能力をフル活用できるサービスを作り出して、企業の成長とシニアの雇用機会の創出に一層貢献したいと考えています。

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