採用人数減少で見直し進む採用手法

不況が長引き、中途採用における企業の厳選採用が定着してきたことで、人材採用の手法に大きな変化が生じてきている。今後、どのような採用手法が最適となるのだろうか。企業が求めている人材の動向と、それに伴う採用方法の変化を調べた。

企業が求める人材は収益に直結する即戦力人材

企業の人材採用の方法が変質してきている。企業の採用は、長引く不況で採用人数は極端に減少。厳選採用が浸透し、求める人材はポテンシャルからより即戦力重視へと変化した。

本誌が採用担当者を対象に行った「2011年企業の中途採用動向調査」では、中途採用で拡充したい人材は、「営業職」(54%)、「技術・研究職」(42%)が上位を占め、それ以外の「経営・企画」「マーケティング」「財務経理」「法務・人事・総務」「IT・システム」「その他」は、すべて15%以下となっている。

採用理由は、「事業・組織の強化」(62%)、「欠員の補充」(58%)、「専門性が高い人材の確保」(54%)が上位を占めている。まさに、「営業職」「技術・研究職」といった「企業の収益に直結する専門性が高い即戦力人材の採用で、事業・組織を強化しようとする」企業の採用動向がうかがえる。

だが、即戦力人材の採用は容易ではない。こうした状況を裏付けるように、採用の課題として、「採用条件を満たす人材が見つからない」(62%)を挙げる企業が最も多かった。

中堅層の即戦力人材で人材紹介会社の利用が進む

「企業の収益に直結する専門性が高い即戦力人材の採用で、事業・組織を強化しようとする」という採用ニーズが明らかになったわけだが、こうした人材を採用するために企業の採用手法は大きく変化してきている。

求人数の減少とともに求人サイトの広告価格は、一時最低価格が10万円台にまで下落した。価格下落の原因は、単に求人需要が減少したというだけではない。様々な原因が考えられるが、企業が求める即戦力人材を、求人サイトでは集めにくくなっていることが要因の1つとなっている。

大手企業の中途採用では、企業のウェブサイトから直接、応募する人材が増えており、求人サイトを利用する意味が薄れつつある。また、求める人材像に見合わない応募者が集まりすぎるという悩みもある。

「限られた採用担当者で、大量の応募書類の中から候補となる人材を見落とさないように集中して目を通すだけでも大変な負担となっている」(大手アウトソーシング会社人事部長)

中小企業では、求人サイト内の情報に埋もれてしまうため採用情報の露出が少ない上に、限られたスペースでは知名度やブランディングで劣る中小企業の魅力を十分に伝えることができないため、優秀な人材が集まり難い状況にある。こうした理由から、今後、かつての価格帯まで戻す可能性は低いと思われる。

一方で、難しい求人案件については人材紹介会社を活用する企業が増えてきている。

「事業のキーマンをピンポイントで探す場合は、競合他社に情報を知られたくないので、人材紹介会社を利用する。事業部門からも求人広告ではなく、人材紹介会社を利用してほしいという要望を受けている」(IT企業人事課長)

中途採用で求める人材については、若手ポテンシャル層は求人サイト、中堅層の即戦力は人材紹介と人材サービスの使い分けが一層進んできている。

紹介会社の活用にも変化、利用社数は5社~10社

人材紹介会社の使い方にも、大きな変化が出てきている。これまで企業の人材紹介会社の利用社数は多いときには50社以上にも及んでいたが、いまは実績のある人材紹介会社5社~10社としか付き合わない企業が増加している。

その理由は、求人の職務内容、社風・職場風土など、採用に必要な情報をより詳しく人材紹介会社に伝え、ミスマッチを防ぐと同時に、さらに社風に合った優秀な人材を採用するためだ。実績の上がらない人材紹介会社については、随時、入れ替えるようになってきている。

「継続的に依頼する会社を絞り込みました。コンサルティング能力が低く、紹介したい人材がいる時だけ連絡してくるような紹介会社はお断りしています」(専門商社採用担当者)

人材紹介会社側にもメリットがある。候補者の決定確率が高くなり、人材コンサルタントのやる気が高まるなど好循環が生まれているのだ。

また、中小・ベンチャー企業でも、候補者に会社の魅力を伝えることで、社風に合った人材を採用することができることから、人材紹介会社を利用する会社が増えている。

中小、ベンチャーでは新卒人材紹介の活用企業が増加

中小企業、ベンチャー、地方企業において、新卒採用で人材紹介を活用する企業が増えたことも注目される。中小企業では、これまで、大卒の採用は非常に難しかった。合同説明会への参加や求人サイトへの広告出稿と様々な採用活動をしてきたが、苦戦が続いていた。

少人数の採用であれば、そうした経費や手間をかけるのと、人材紹介にかかるコストはほぼ変わらない。同等のコストであれば、新卒人材紹介を利用して、確実に大卒新入社員を採用しようとする企業が増えているのだ。新卒採用においても、人材紹介の手法が利用され始めている。

リーマンショック後、採用環境は大きく変化した。今後、採用担当者は人材戦略で求められる「質」と「量」に合わせ、最適な人材採用の手法を考えていく必要があるだろう。

PAGE TOP