アンテロープキャリアコンサルティング
小倉 基弘 代表取締役
【PROFILE】上智大学法学部卒。日興證券(現SMBC日興証券)を経て、建築関連の商社を設立。約7年の事業経営後、キャリア形成に関連する起業を目指して、人材エージェントにて4年間経験。2002年、アンテロープキャリアコンサルティングを設立。
当社は投資銀行業務等の金融スキル、コンサルティングスキルを持ったプロフェッショナルに対してエッジの効いた(厳しい競争環境の中で自己成長と高収入が手にできる)機会を提供するエージェントです。
カバーしている範囲は投資銀行、バイアウトファンド(プライベートエクイティ)、アセットマネジメント(投信投資顧問)、不動産金融(J-REIT等)、グローバルマーケット分野及びコンサルティングファーム全般になります。
今回はこれらの分野の中から金融分野にフォーカスして現状の求人動向、求職者動向、企業が採用を成功させるポイント、求職者が転職を成功させるポイントについて以下説明します。
金融業界ジョブマーケットは景気動向に敏感に反応します。特に金融指標である、為替、日経平均が2012年12月にそれぞれ80円前半、9000円台であったのがアベノミクス政策により、昨年夏まで円安の進行、日経平均の上昇(2015年8月為替125円台、日経平均2万946円)が続いていた状態が一旦ピークをうちました。
その後ボックス圏に入っていることが金融業界全体、ひいては金融業界ジョブマーケットに徐々に影響を与えています。
足下では昨年中盤までの堅調さが残ってはおり、直近のジョブマーケット指標も2016年2月の完全失業率3.3%、有効求人倍率1.28倍と指標面では良い数値を示していますが、今後は上記のとおり、特に金融業界は実体経済の緩やかな下降局面に合わせるようにダウントレンドに入っていく可能性が高いと思われます。
現状ではエクイティマーケット、JGBを中心とする流動性の高い国内債券マーケットを相手にしているバイサイドの資産運用業界、セルサイドのトレーディング関連部門での採用意欲が弱くなり始めているのが感じられます。
一方、その他の投資銀行部門、投資ファンド(プライベートエクイティ)、不動産ファンド等については昨年度からの堅調さが維持されています。
特に投資ファンド業界では既存ファンドからの独立による新規ファンド立上げ、海外からの新規ファンド参入また新たな政府系ファンド設立による新規採用もあり、ファンド間での転職、投資銀行、戦略系コンサルティングファームから投資ファンドへの転職も依然活発な状況です。
新規分野ではベンチャーキャピタル、フィンテック等に関連するものも徐々には求人が出てきていますが、まだマーケットは小さく今後に期待するところになります。
総じて金融業界のジョブマーケットは需給が均衡している状況で売り手市場になっているわけではなく、上記のプロフェッショナルポジションについては即戦力、経験者採用がほとんどであることは変わりません。
求人動向が上記で示した通りであるため、個別事情を除いて人員削減が行われてはおらず求職者の9割以上は現職を持った状態で活動をしています。
また足元の堅調さを反映してステップアップになる転職、例えば日系証券から外資系投資銀行、証券・投資銀行から投資ファンド、不動産ディベロッパー・不動産鑑定士から不動産ファンド、金融リテール営業からプライベートバンカーといった動きが主流になっています。
ただし、今年後半にかけての金融ジョブマーケットは徐々に弱まる可能性もあり、業界でのステップアップを考えている方は早めに活動に入ったほうが良いかもしれません。
プロフェッショナルファーム出身で強い向上心、高い学習能力を持った人材を獲得するためには以下の要素が影響すると思われます。
・給与水準
・業界内の序列/ブランディング
・ファームとしての実績/キャリアパスとしての魅力(その組織に所属していたことが後のキャリアにプラスになるか)
・組織構造、文化がフラットか(例:Carryが全メンバーに配分されるか)
・裁量権が広いか
・面接プロセスが柔軟か(面接者は多くてもスピーディにプロセスが進めているか)
現状ではマーケットは堅調なため、スキルが高くパフォーマンスを発揮している求職者については複数の内定が獲得できる状況ではあります。そのため、上記のような要素が採用力に影響を与えています。
ただし、今後、景気動向が弱含む方向になり、採用力のある企業が求人数を絞り込むような場面が出てくると、採用力が弱い企業にとって絶好の人材獲得時期が来るかもしれません。