労働政策研究・研修機構が実施した「第4回 新型コロナウイルス感染症が企業経営に及ぼす影響に関する調査」によると、 生産・売上額等の水準が今後も継続する場合でも6割以上の企業が雇用を維持する方針であることが明らかとなった。
調査を実施した2021 年5月時点の生産・売上額等の水準が今後も継続する場合に現状の雇用を維持できる期間について、18.8%の企業が半年以内、31.7%の企業が1年以内としている一方、「雇用削減の必要はない」(39.6%)、「2年以上雇用削減の予定はない」(24.8%)を合わせると6割以上の企業が雇用を維持する方針だ。
労働者の過不足状況について、「不足」「やや不足」と回答した企業が 32.7%となり、「過剰」「やや過剰」と回答した企業(18.1%)を上回っていることから、 労働政策研究・研修機構では「コロナ禍においても企業の人手不足感は根強く、厳しい経営環境の中でも企業の雇用維持のスタンスが強まっている」と分析している。
業績の見通しは「回復して元の水準に戻るには半年から1年くらいかかる」が17.3%と最も高く、次いで「分からない」が17.2%、「回復して元の水準に戻るには1年超から2年くらいかかる」となっている。
2021年5月時点の労働者は、70.7%の企業で前年5月とほぼ同じとなっており、増加した企業(15.6%)が減少した企業(13.7%)を上回っている。
雇用形態別にみると、「正社員・正規従業員」では「増加」(15.3%)が「減少」(12.4%)を上回っているが、「パート・アルバイト・契約社員」(「増加」8.3%、「減少」12.2%)、「派遣労働者」(「増加」8.9%、「減少」15.2%)は「減少」が「増加」を上回っている。
1年後の労働者の増減の見込みでは、「増加」する企業(28.0%)が「減少」する企業(8.5%)を上回っている。産業別にみると、「情報通信業」が最も高く48.1%、「飲食・宿泊業」(40.2%)、「運輸業」(33.0%)と続き、増やすと回答した企業の割合が最も少ないのは「医療・福祉」で15.6%。
今後の見通しを踏まえた将来の人材戦略は「雇用や人材の育成を重視する」(69.1%)、「年齢に関わりなく能力・成果に応じた登用を進め、正社員の年功賃金割合を小さくする」(50.5%)、「中途採用を強化する」(36.9%)、「教育訓練・能力開発を進める」(36.1%)の割合が高くなっている。
調査は、2021年6月1日~15日、インターネット調査会社のモニター登録企業(従業員無しを除く)の全数にあたる1万1622社を対象にWEBで調査し、3769社の有効回答を得た。