アルバイトスタッフのカスハラ被害、7割の企業が対策不十分

2025年4月、東京都で全国初のカスタマーハラスメント防止条例が施行される。企業にとって従業員へのカスハラ対策が課題となる中、人材サービスのマイナビが実施した「アルバイト従業員へのカスタマーハラスメント実態調査」から、企業の対応の遅れが浮き彫りとなった。(文:日本人材ニュース編集部

日本人材ニュース

調査によると、45.7%の企業で自社のアルバイト従業員が何らかのカスハラ被害を受けていることが分かった。特に対面での接客を伴う業種での被害が顕著で、パチンコやカラオケなどの販売・接客業では77.7%、コンビニやスーパーなどの販売・接客業では70.3%の企業が被害を報告している。

被害の具体的な内容としては、「大きな怒鳴り声を上げられた」が36.3%で最も多く、次いで「理不尽な要望を繰り返し問い合わせられた」が32.1%となっている。

特徴的なのは、ホールキッチン・調理補助の業種で「SNSに悪い口コミを書くなど、ブランドイメージを下げるような脅しをされた」という被害が37.5%と最も多かった点だ。SNSの影響力を逆手に取った新たな形の嫌がらせが広がっているようだ。

しかし、こうした深刻な被害状況に対し、企業の対応は追いついていない。調査では36.7%の企業が「特に対策を行っていない」と回答。

対策を実施している企業でも、「会社としてのカスタマーハラスメントに対する基本方針を策定する」(29.7%)、「カスタマーハラスメント対応マニュアルを作り、周知する」(25.5%)といった全体的な取り組みが中心で、「アルバイトとの面談でハラスメント発生状況を把握する」(13.2%)、「カスタマーハラスメントの相談窓口を社内に設置する」(11.7%)など、具体的な被害把握や対応体制の整備は進んでいない。

カスハラ対策の遅れは、人材の確保・定着にも影響を及ぼしている。カスハラ被害のあった企業では1カ月以内の早期離職が34.2%に上り、被害のなかった企業と比べて11.5ポイント高くなっている。

2024年12月には厚生労働省の労働政策審議会で、カスタマーハラスメントの対応策を企業に義務づける法改正が提案され、企業には従業員を守る具体的な対策の実施が求められる。賃上げや福利厚生の拡充に加え、従業員の安全性や安心感を高める取り組みが、人材の確保・定着において重要性を増している。

調査は、2024年11月25日~12月4日に、直近1年以内にアルバイト採用業務に携わった20~69歳の会社員(会社役員・自営業含む)を対象に実施し、1500人(各業種100人ずつ)の有効回答を得た。

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