【ツナグ・ソリューションズ】不況期の雇用ニーズを捉え、新しいビジネスモデルで成長

ツナグ・ソリューションズは2007年2月に設立された採用コンサルティング会社だ。販売・サービス、流通などの非正規労働者を大量に採用しなければならない業界に着目し、アルバイト・パートの採用代行という需要を切り開くことに成功している。同社を創業した米田光宏社長にサービス内容と実績、そして、今後の事業プランを聞いた。

ツナグ・ソリューションズ

ツナグ・ソリューションズ
米田 光宏 代表取締役社長

1969年生まれ。関西学院大学卒業後、リクルートフロムエー入社。マーケティングや商品開発・組織コンサルティング業務を担当。一貫してアルバイト・パート採用領域に携わる。2007年ツナグ・ソリューションズを設立。自走する組織をテーマとした著書『Tsuna・Good !―社員が走りたくなる8つのシカケ―』(クロスメディア・パブリッシング社)がある。

アルバイト・パートの採用ソリューションが、主力事業と聞いています。

当社の事業は、主にアルバイト・パートに特化した人材採用ソリューション、定着・戦力化ソリューション、労務管理ソリューションの3つがあります。顧客は主に、アルバイトやパートを大量に活用している販売・サービス、流通、介護・福祉など、労働集約型の業界となります。

採用ソリューション事業は、アルバイト・パートの確保が難しい場所や大量採用が必要な場合に、現地施設や周辺地域の競合や時給などを徹底的に調査し、採用計画を立案します。その採用計画に基づいて、さまざまな募集媒体の中から最適な手法を選択します。そして、当社のコンサルタントが、応募者の中から戦力となる人材をスクリーニングし、店舗や施設の責任者が最終的な面接で採用の可否をすぐに判断できるところまで支援を行っています。

サービス業の店長は、現場でのオペーレーション、仕入れやコスト管理、アルバイト・パートの管理と採用など、さまざまな業務を任されています。その中でも、アルバイト・パートの募集では、実際に電話で応募を受け付けたり、応募を管理したり、面談をするための時間が必要になっています。

また、アルバイト・パートは採用のミスマッチも多く、すぐに辞めてしまうことも多いため採用にかかる負担は非常に大きなウェイトを占めています。当社が関わることによって、募集広告、説明会の実施、面談などにかかる間接業務の負担を軽減し、店舗マネジメントに集中してもらうことができます。

採用以外では、どのようなサービスを提供していますか。

定着・戦力化ソリューションでは、「売上拡大」「利益向上」といった経営視点で現場の解決すべき課題を洗い出し、実践可能で現実的な解決策を策定します。アルバイト・パートには、時給を重視する人、自由な時間を大事にする人、仕事を通して社会に認められたい人など、さまざまな価値観の人がおり、同質性の高い価値基準を持った正社員よりも難しいマネジメントが求められています。

そうした「モザイク型」の組織をうまく運営しなければなりません。アルバイト・パートのモチベーションを高めて定着させ、戦力化することで労働生産性を高めることが非常に重要になってきます。そのため、有期のプロジェクトを発足させ、専任のコンサルタントがプロジェクトに参加することで課題解決を図ります。

労務管理ソリューションでは、改正パートタイム労働法が2008年に施行されたことで、より一層コンプライアンスが重視されていることから、法的な問題が発生しないように事前に社内体制や労務管理の根拠となる就業規則などを整備しています。非正規従業員の職務内容、人材活用の仕組み、契約期間などの要件が規定されるようになり、問題が発生しがちな現場施設におけるアルバイト・パートの管理についても具体的なアドバイスを行っています。

ツナグ・ソリューションズ

リーマン・ショックでは、人材会社の業績は軒並み悪化しました。その影響はなかったのでしょうか。

当社は2007年2月に設立しました。その直後に、リーマン・ショックがあり雇用環境は大きく変化しました。リーマン・ショック以前は、いくら募集してもアルバイト・パートが集まらない状況で、首都圏では一人当たりの採用費用も平均10万円前後でしたが、リーマン・ショック後は一転して人余りの状況になり、一人当たりの採用費用は2万円前後まで急落しました。

顧客の当社に対するニーズも変化し、現場のマネジメントに支障が生じるぐらい求人募集に応募者が大量に集まってしまうことから、採用代行の役割が求められるようになりました。募集広告、説明会やイベントの運営、電話の受け付け、応募管理、面談によるスクリーニングと有能なアルバイト・パートを集めるためのサービスが活用されるようになっています。こうしたサービスにおける実績が高く評価されて、最近は新卒採用に関する業務も任されるようになっています。

当社にご依頼いただくときのコンサルティング・フィーは、サービスパッケージもありますが、業務の工程を細分化して委託が必要な部分に対して規定の報酬をいただくようにしています。また、顧客へのコミットメントとして、採用コストの20~25%削減を提案しています。

貴社のサービスに対する顧客の評価を教えてください。

サービスに対する顧客の評価は、売上に顕著に現れています。09年第3期の売上は3億4000万円、10年第4期5億円、11年第5期7億5000万円とリーマン・ショック後も順調に拡大しており、来期は10億円を計画しています。創業当時は社員9人でスタートしましたが、現在は約150人の従業員がいます。リーマン・ショックの影響は皆無ではありませんでしたが、何とか回避できたのは、リーマン・ショック後に生まれてきたアルバイト・パートの採用業務代行というニーズをいち早くつかむことができたからだと思っています。

正社員が減少する中で、非正規労働者を大量に採用し活用しようとする企業はリーマン・ショック後も増えています。多くの人材が応募してくるようになり、現場のマネジャーや店長にかかってくる時間的な負担が増大しました。現場ではこうした一連の募集業務に時間を割くことはできない状況となっているのです。

アルバイト・パートの採用コンサルティング会社を創業した経緯を教えてください。

創業の経緯ですが、もともと私自身はリクルート社でアルバイト求人を募集する事業に従事していました。この仕事に長年かかわるうちに、急速に多様な雇用形態が拡大してきました。同時に、非正規労働者の中には働き方にとらわれないさまざまな価値観の人材がいることに気付きました。このような人材は、この20年で全労働者の35%を占めるようになり、さらに10年後には50%前後にまで拡大することが予想されています。

新卒採用でも中途採用でもないアルバイト・パートの採用支援という新たなカテゴリーで創業を思い立ったのは、このような人材マーケットが明確になっており、年間を通して人材供給が必要になるということを想定していたからです。

採用代行という形は、リーマン・ショック後に顧客の要望に応じて必要とされた最適な採用手法の一つであったわけです。また、ビジネスモデルとしても年間を通して行われるアルバイト・パートの採用代行業務は、単価に対して財務的には安定した運営が可能です。

今後は、どのような事業プランを持っていますか。

店舗力診断についても力を入れていくことを考えています。直接お客様と接するのは主に、アルバイト・パートを始めとする「現場」のメンバー。商品やサービスの良し悪しに限らず、店長とアルバイト・パートのコミュニケーション状況や、モチベーションの有無などが、売上に左右されることもあります。

それらの診断を行うことで現状を知っていただくとともに、アルバイト・パート向けの研修や、モチベーションアップの施策検討といった、現場力向上への打ち手開発へと繋げていくことも考えています。

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