転職市場に出てこない優秀なミドル層のヘッドハンティングで、クライアント企業から高い支持を得ているプロフェッショナルバンク。「企業の人材ニーズが集中しているのは即戦力のミドル層」と語る同社の兒玉彰社長に、企業の求人状況や同社のヘッドハンティングの特徴などを聞いた。
プロフェッショナルバンク
兒玉 彰 代表取締役社長
1964年兵庫県生まれ。獨協大学外国語学部英語学科卒業後、テンポラリーセンター(現パソナグループ)入社。営業部を経てパソナオーストラリア現地法人代表就任。1993年パソナ営業部帰任。首都圏営業統括執行役員、東日本営業統括常務執行役員を歴任後2004年8月常務執行役員退任。その後プロフェッショナルバンク代表取締役副社長、2007年4月同社代表取締役社長就任。
企業の人材マネジメントの変化について感じていることはありますか。
商品・サービスはもちろん、産業や企業の寿命が短くなる中で、企業を成長させ続けるには即戦力の人材の強化で対応される企業が急増しています。新卒を採用して終身雇用をベースとした人材ポートフォリオを組むという組織運営では、社内にいる人材や能力を前提に事業戦略を考えることになります。しかし、それでは事業や商品・サービスの短サイクル化にキャッチアップし切れない局面が多く、外部の経験者を即戦力として採用することで、時間の短縮を図っています。
業績を伸ばしている企業の共通した特長は、「理想の姿」がまず先にあって、その実現には何が不足しているかと逆算し、埋める即戦力の人材を採用するという考え方を取っているところが多いと思います。新興の成長企業だけでなく、例えば繊維大手が燃料電池の専門技術者を採用して新規事業を始めるなど、歴史のある大企業の中にも「このままでは衰退しかない」と危機感を持つ経営者や人事責任者が増えています。
特にどのような業種や職種で人材ニーズが高まっていますか。
業種や職種によって人材需給のバラつきは大きく、ミスマッチがますます進んでいます。当社への求人依頼についていえば、業種ではIT、ライフサイエンス・製薬、医療・介護、建設、職種では研究開発職やエンジニア、法人営業などのニーズが多くなっています。
日本企業の海外進出に伴い、海外部門の責任者や現地法人トップの求人も多いですね。特に日本と現地をつなぐことができるブリッジ人材の依頼が急増しています。当社のグループ会社MRI Japanは世界最大級の人材サーチネットワークMRI Networkのメンバーなので、こうした海外関連の求人にも積極的に対応しています。
また、経営層では事業承継にかかわるニーズが増えています。後継者がいる場合も「二代目にしっかりした番頭役が欲しい」、逆に「先代に仕えていた番頭を変えたい」といった要望が寄せられています。共通するのは「求人メディアや登録型の人材紹介ではどうしても採れない」という相談だということです。
貴社はそのような採用が難しい人材のヘッドハンティングを行っているということですね。
リーマン・ショック以降ずっと感じていることですが、「欠員が出たら募集し、集まった中からベストな人材を選考する」といった従来の採用手法では、本当に業績に貢献できる人材を採用できない状況になっています。
当社では事業部長や次長、課長、専門職といったミドル層のヘッドハンティングに注力していますが、企業の人材ニーズが集中しているのはまさにこの階層です。しかし、ミドル層で即戦力となる求職者は転職市場にはそう多くいません。まして、どの企業も欲しいような評価の高い人材は、当然、現職場からも評価されて待遇も良いでしょうから自ら動くことはまれです。
ですからこちらから動いて仕掛けていく「攻めの採用手法」が必要です。比較的名前が表に出やすい経営者や役員クラスにアプローチするエグゼクティブのヘッドハンティングとは異なり、ミドル層の人材を探し出すには専門的なノウハウが求められます。
どのような方法で人材情報を集めているのでしょうか。また、貴社の強みとなっている点は?
あらゆるソースや業界人へのネットワークを活用して人材情報を集めています。マスメディアや業界紙などはもちろん、特許などの専門分野によって必要となる情報もリサーチします。また、ネットにある情報から必要とする内容をクロールする独自のシステムも導入しています。
当社のコンサルタントは業界経験が平均15年程度と長い人物が多く、それぞれが独自ネットワークを持っていますが、その情報共有力は非常に高いと自負しています。当社では、1人のコンサルタントがクライアントと候補者の双方に対応する「一気通貫型」でコンサルティングを行っていますが、コンサルタントは自らの案件を決めるだけでなく、様々な情報を全社に提供することについても求められています。
人材業界では、コンサルタントが業績を上げるために自分のネットワークを抱え込むことが多いと聞きますが、それはその人材会社の評価制度がコンサルタント個人の成果だけを評価するものになっているからかもしれません。全員のネットワークを全社で共有して成果を最大化しようという社風ができていることと、専門性の高いコンサルタントが非常に労力が掛かるヘッドハンティングを地道にコツコツとやり続けていることが、当社の強みとなっています。
現職で活躍している人に転職を納得してもらうのは、なかなか難しいのではないでしょうか。
人の志向はそれぞれ違います。一見満足しているように見えても、「活躍の割に収入が少ない」「権限が小さい」「扱える事業予算が少ない」「望まない勤務地」「ワークライフバランスが悪い」など、どこかしら不満はあるものです。
それを私たちは「フックポイント」と言っているのですが、それを的確に把握する力がコンサルタントには不可欠で、転職の専門家として候補者に様々な可能性があることを示すわけです。また、コンサルタントはクライアントや仕事の魅力を的確に伝えるという役割を果たします。優秀な人材へ直接アプローチしたり、ハードな交渉も頻繁に起こるヘッドハンティングの現場における数多くのケーススタディーを蓄積し、クライアントと共有しています。
最後に、最近の業績と今後の事業方針について教えてください。
おかげさまで、業績は前年比で140~150%という好調なペースで推移しています。求人依頼に対するヘッドハンティングの成功率は92%で、良い人材を採用できたクライアントは「ヘッドハンティングなら採用できるんだ」という効果を実感し依頼を受ける職種も広がるため、リピート率は60%を超えています。
好調な業績の要因は、クライアントが真に必要とする人材像を明確にして、積極的にヘッドハンティングしていくスタイルにこだわり、注力してきたことだと思います。当社のヘッドハンティングは、コンサルタントがクライアントに深く入り込んで最適な採用プロジェクトを提案するオーダーメード・サービスで、「セミリテーナー」という着手金と成功報酬という料金体系となっています。
採用活動を「見える化」して、透明性の高いプロセスによって一つ一つのヘッドハンティングを確実に成功させることを大切にしていきたいと考えています。今後もクライアントの成長に最も貢献できるミドル層のヘッドハンティングを追求していきます。