近年、コンサルティング会社出身者である「ポストコンサル」を積極的に採用する動きが本格化し、外資系企業もターゲットにしているという。企業のポストコンサル採用を数多く支援している人材紹介会社コンコードエグゼクティブグループ社長の渡辺秀和氏に、外資系企業の採用動向やポストコンサル採用の狙いなどを聞いた。
コンコードエグゼクティブグループ
渡辺 秀和 代表取締役社長 CEO
一橋大学商学部卒。三和総合研究所 戦略コンサルティング部門を経て、2008年にコンコードエグゼクティブグループを設立し、代表取締役社長CEOに就任。戦略コンサルタント、投資銀行・ファンド、外資系エグゼクティブ、起業家などへ1000人を超えるビジネスリーダーの転身を支援。第1回「日本ヘッドハンター大賞」コンサルティング部門で初代MVPを受賞。東京大学×コンコード「未来をつくるキャリアの授業」コースディレクター。著書『ビジネスエリートへのキャリア戦略』(ダイヤモンド社)、『未来をつくるキャリアの授業』(日経新聞出版社)。
外資系企業の採用動向について教えてください。
外資系企業が採用条件で必須とする「英語ができる人材」は奪い合いとなっています。以前は英語ができる人材の転職先は外資系企業が多かったのですが、日本企業の海外進出が本格化したことによって、あらゆる業種や職種において英語ができる人材が求められています。
特に成長企業は会社設立時から海外進出を目指している場合もあり、採用に積極的です。 英語ができる日本人は増えてきましたが、ビジネスの能力も兼ね備えた人材は限られています。採用上のライバルが急増したため、苦戦する外資系企業が増えています。もともと外資系企業の採用は大変高度な業務ですが、人材市場の変化により、難易度が一層高まっています。
転職者の意識に変化はありますか。
かつては外資系企業の日本オフィスがアジアパシフィック全体を統括していたのですが、最近は日本市場だけを見ているケースが増えています。一方、海外進出に伴い、日本企業でも海外に関わる仕事ができる機会が増えてきたため、仕事内容という面で外資系企業の魅力が相対的に下がってきています。
また、コンサルファーム、金融機関、製薬会社などを除くと、外資系企業だからといって必ずしも給与水準が高い訳ではありません。英語ができる人材に対しては日本企業でも高額な報酬を柔軟に用意するようになってきています。外資系企業が魅力的な条件を提示できずに、優秀な人材を日系企業に採用されてしまうことも珍しくありません。
外資系企業が採用において魅力を示せる部分はないでしょうか。
専門性を重視したキャリア形成、経営幹部を育てるためのリーダーシッププログラムなどの人材育成の仕組みが充実していることは、成長意欲が高い若手が魅力を感じる点です。日本の大手企業は社員全員を平等に処遇しないと職場のモチベーションが保てないと考えているため、若手を選抜して育てる仕組みがほとんどありません。
そのため、外資系企業は人材育成の強みを積極的に打ち出すことによって、優秀な若手を引きつけることが可能です。最近の当社の紹介事例でも、リーダーシッププログラムを用意した外資系事業会社が、引く手あまただった20代後半の大手戦略コンサル出身者の採用に成功しています。
どのような人材が外資系企業に採用されていますか。
外資系企業が求める人材のベーススキルは、「英語力」と外国人のエグゼクティブと意思疎通ができる「論理的思考力(ロジカルシンキング&コミュニケーション)」です。当社はコンサルティング会社への人材紹介とともに、コンサルティング会社出身者である「ポストコンサル」を事業会社に数多く紹介しています。ポストコンサルには英語力を備えた海外事業経験者が多くいます。
また、若い時期から企業の経営課題を解決するプロジェクトを経験しており、物事を論理的に分析し、問題解決する力が鍛えられています。そのため、ポストコンサルを有望な採用ターゲットとする外資系企業が増えています。一方、成長意欲が高い若手のコンサルタントは、人材育成の体制が整っている企業を選ぶ傾向があり、双方にとって大変相性が良いと言えます。
「英語力」と「論理的思考力」を備えた人材がポストコンサルには豊富にいる
女性のポストコンサルの紹介も増えていると聞いています。
多くの外資系企業の日本法人は、本社から女性社員の比率を高めるように求められています。そのような中、安倍政権の方針もあり、日本企業でも女性の経営幹部や幹部候補の採用に本腰を入れる企業が登場してきています。今後、女性の採用についても競争が激化することが予想されます。
女性のポストコンサルを採用している企業は、経営に関する見識、目線の高さ、プロ意識などを高く評価しています。また、仕事ぶりを間近に見ている女性社員たちを活性化させるなど、社内のロールモデルとしても活躍しているという声が多数挙がっています。女性社員の採用とリテンションのためのロールモデルという観点からも女性のポストコンサル採用は注目されています。
外資系企業が採用を成功させるために必要なことは何でしょうか。
採用業務の効率化ということで付き合う人材紹介会社を絞りすぎている外資系企業が多いように感じます。候補者に対して自社をポジティブに“無料”でPRしてくれる紹介会社を限定するのは得策ではありません。
採用に成功している企業は多くの紹介会社と契約しながら、実績に応じてインセンティブを付けるなどの工夫を行って多くの候補者に自社を売り込んでもらっています。日本での知名度が高くない外資系企業が優秀な候補者を引きつけるためには、紹介会社をもっと上手く活用することが必要ではないでしょうか。