組織開発における8つのフレームワークとは?導入手順やポイントも解説

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本記事では、組織開発に焦点を当てて、組織開発の概要や目的、再注目されている理由などについて解説します。また、実践に役立つ組織開発に役立つ代表的なフレームワークや、組織開発を成功させるポイントについてもご紹介します。

組織開発とは?

組織開発とは、組織で働く人たちの関係性を深め、組織を活性化させることにより、組織の持続的な成長を促す取り組みや支援を指します。

具体的には、組織内の課題を明確にした上で、従業員一人ひとりが当事者意識を持って解決策を考え、実行するプロセスを踏むことです。従業員が自社の課題に対して自主的に取り組むことによって、環境の変化にも対応できる柔軟な組織を作り上げることができます。

組織開発と人材開発の違いは対象とアプローチ

組織開発に似た言葉として、「人材開発」というものがあります。人材開発とは、教育や訓練などによって従業員のスキルや知識を高め、パフォーマンスを向上させることです。

組織開発と人材開発の違いは、対象とアプローチです。すなわち、組織開発は「組織で働く従業員同士の関係」に着目し、「その関係性に働きかけること」によって組織の成長を図ります。一方で、人材開発は「個人」を対象とし、「各個人の成長を促すこと」によって組織の成長を図ります。

組織開発を行う目的

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組織開発を行う目的は、組織を活性化させて組織全体のパフォーマンスを向上させることです。社内コミュニケーションの促進や多様な人材の受け入れ、エンゲージメントの向上などにつながる施策を行うことで、従業員のシナジーを生み出しながら課題解決を図ります。

組織開発が注目される理由

働き方や人材の多様化が大きく進み、組織にも変化が求められていることで組織開発に注目が集まっています。従来の日本では年功序列や終身雇用が一般的で、横並びの考え方や風土が広く醸成されていました。

しかし近年は、年次や階層ではなく従業員個人の能力に応じて評価を決める企業が増えていることから個人主義や成果主義の風潮が強まっており、現職に納得がいかなければより良い職場や仕事を求めて転職することも珍しくありません。また、外国人や高齢者の雇用が進むなど、ダイバーシティ推進の影響で社内の価値観が多様化してきており、従来の体制のままでは組織の方向性を統一することが難しくなってきました。

また、昨今はリモートワークの普及により、従業員間のコミュニケーションや組織への帰属意識が希薄になりつつあります。こういった背景があるなかで、組織内での人との関わりが改めて重視され、組織開発が注目されるようになりました。

組織開発における8つのフレームワーク・手法

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7s
ミッション・ビジョン・バリュー(MVV)
OKR
コーチング
タックマンモデル
ワールドカフェ
フューチャーサーチ
アプリシエイティブ・インクワイアリー(AI)

組織開発を進める際は、フレームワークの活用が効果的です。そこで本章では、組織開発に役立つ代表的なフレームワークを8つご紹介します。

7S

7S(セブンエス)とは、組織運営に欠かせない7つの経営資源について、それらの相互関係を示したフレームワークです。

具体的には、3つのハード面の経営資源(組織の構造に関するもの)と4つのソフト面の経営資源(人に関するもの)に分けて、各要素から自社の現状を分析・把握し、課題を明確化します。

【組織の構造に関するもの】
(1)戦略(Strategy):競争優位性を維持するための事業の方向性
(2)組織(Structure):組織の形態や構造
(3)システム(System):人事評価や報酬、情報の流れ、会計制度など、組織の仕組み
【人に関するもの】
(4)価値観(Shared Value):社員で共通認識を持つ会社の価値観
(5)スキル(Skill):営業力、技術力、マーケティング力など組織に備わっている能力
(6)人材(Staff):社員や経営者など個々の人材の能力
(7)スタイル(Style):社風や、組織の文化

ミッション・ビジョン・バリュー(MVV)

ミッション・ビジョン・バリューとは、「ミッション(使命)」「ビジョン(理想像)」「バリュー(価値観・行動指針)」という企業理念の3つの構成要素について、言語化するためのフレームワークです。

ミッション・ビジョン・バリューはそれぞれ言語化し共有することで、組織全体または従業員一人ひとりの活動方針や意思決定に迷いが生じた際に、判断基準として役立ちます。

OKR

「OKR(Objectives and Key Results)」とは、定性的な目標を定め、それに対する具体的な行動を決めるマネジメント手法のことです。具体的には、組織全体・部署・個人ごとに目標(Objectives)と成果指標(Key Results)を設定し、それぞれをリンクさせることによって、組織全体と従業員の方向性にズレが生じるのを防止します。

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コーチング

コーチングとは、従業員の気付きを重視し、目標達成をサポートする手法です。具体的には、相手とのコミュニケーションを通じて、目標達成に向けた考え方(気付き)を引き出し、自発的な行動を促します。コーチングは最初から答えを教えるのではなく、自発的に答えを導き出してもらうため、従業員の自立性を育てるのに効果的です。

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タックマンモデル

タックマンモデルとは、チームビルディングに関する考えを示したフレームワークです。

タックマンモデルでは、チームの結成から目的達成までに「形成期」「混乱期」「統一期」「機能期」「散会期」の5つのステップをたどると考え、チームが現在どの段階にあるのかを客観的に把握することで、課題の発見やチーム内の信頼関係の構築に役立てることができます。

ワールドカフェ

ワールドカフェとは、その名の通り、カフェのようなリラックスした雰囲気の中、少人数で分かれたテーブルで自由に対話を行う手法です。通常の会議のような堅苦しさは一切ないため、従業員の参加意識を高め、発言を活性化させることにより、自由で創造的な意見が生まれやすくなります。また、従業員間のフラットな関係を築く効果も期待できます。

フューチャーサーチ

フューチャーサーチとは、難易度の高い課題に対して大規模な議論を行い、解決策を見出していく手法です。参加者は従業員だけに限定せず、顧客や取引先、地域住民まで、さまざまな利害関係者を含みます。参加者全員で組織の過去と現在、未来のあり方について議論をすることで、具体的な解決策やアクションプランが生まれやすくなります。

アプリシエイティブ・インクワイアリー(AI)

アプリシエイティブ・インクワイアリーとは、肯定的な質問を通じて組織や個人の価値・強みを見出し、今後の活動につなげていく手法です。アプリシエイティブ・インクワイアリーでは、決して相手の意見を否定せず、違いを認め合いながら、解決策を模索していく点が大きな特徴です。そのため、建設的な議論が生まれやすく、従業員の内発的な動機付けに役立ちます。

効果的に組織開発を行うための6つの手順

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1.組織の目標を明確化する
2.現状の課題を把握・分析する
3.組織開発の実施ロードマップ作成
4.試験的アプローチを行う
5.施策の検証とフィードバックを行う
6.成功した施策を組織全体で導入する

組織開発を効果的に行うためには、正しい手順に沿って進めていくことが必要です。

そこで本章では、効果的に組織開発を行うための6つの手順について解説します。

組織の目標を明確化する

組織開発を行うにあたって、まずは組織の目標を明確化する必要があります。組織開発は組織内の人と人との関係性に着目するため、目的が曖昧になりがちです。組織開発を効果的に実施するためには、組織開発を通じてどのような状態を目指すのか、ゴールを具体的に設定することが重要といえます。

現状の課題を把握・分析する

次に自社が抱えている課題を把握し、どのような解決策が必要なのか分析を行います。

人と人との関係性は数値や指標で判断しづらく、「職場の風通しが良くない」などの漠然とした評価になりやすいため、課題の洗い出しにはなるべく事実に基づいた情報が必要です。従業員へのヒアリングやアンケート調査を実施するなどして、正確な情報を集めていきましょう。

組織開発の実施ロードマップ作成

課題を把握したら、続いて組織開発の実施ロードマップを作成しましょう。ロードマップを作成することにより、組織開発の全体像が明確になり、ゴールまでのプランも立てやすくなります。また、組織開発は基本的に長期的な取り組みとなるため、マイルストーン(中間目標)を設定しておくことで、進捗状況が把握しやすくなるでしょう。

試験的アプローチを行う

一通りの準備が完了したら、まずは一部の部署のみで実行するなど、試験的アプローチを行いましょう。組織開発は長期的な取り組みとなることを踏まえると、まずは小さな部分で成果を出してから、全社的に展開するプロセスが有効です。小規模スタートであれば、大掛かりな準備が必要なく、短期間での効果測定が可能となります。

施策の検証とフィードバックを行う

続いて、試験的アプローチにより成果が得られたかどうかを検証し、その結果をもとにフィードバックを行います。試験的アプローチを行う中では、成功した案もあれば効果が得られなかった案も出てくるでしょう。検証とフィードバックを繰り返すことにより、必要なデータが蓄積されていき、全社的な展開への足がかりとなります。

成功した施策を組織全体で導入する

試験的アプローチでの検証結果をもとに、成功した施策を全社的に展開していきます。

試験的アプローチの段階では問題がなかったとしても、その後に新たな問題が見つかることもあるため、注意が必要です。また、全社に展開した後も定期的に見直しを行い、より良い組織に向けて適宜改善することも重要です。

組織開発を成功させる4つのポイント

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経営層を含む役職者に理解してもらう
ハード施策・ソフト施策のバランスを考慮する
組織の状況によって施策を変える
新たな人材を獲得する

組織開発を成功させるためには、いくつかのポイントを押さえておく必要があります。

そこで本章では、組織開発を成功させるポイントを4つご紹介します。

経営層を含む役職者に理解してもらう

組織開発は、組織内の従業員全体を巻き込む大掛かりな取り組みです。そのため、円滑に進めるために経営層を含む役職者の理解と合意が欠かせません。組織開発の目的や重要性ついて上層部に理解してもらうことにより、トップ主導の組織開発が可能となり、従業員の協力も得やすくなるでしょう。逆に、上層部の理解を得られないまま組織開発を進めてしまうと、弊害が生じる可能性も高くなるため、注意が必要です。

ハード施策・ソフト施策のバランスを考慮する

組織開発には、規則や制度の変更といった組織の構造に関する側面(ハード面)と、スキルの習得や従業員同士の関係性といった人に関する側面(ソフト面)の2つの側面があります。組織を活性化させるためには、ハード面とソフト面の相互作用が必要であり、片方だけへのアプローチでは十分な効果は得られません。よって、組織開発を成功させるためには、ハード施策とソフト施策のバランスを考慮することが重要です。

組織の状況によって施策を変える

社会情勢や経営状況の変化といったさまざまな要因により、組織は常に変化していき、それに伴い新たな課題も生じてきます。そのため、組織開発を成功させるためには、組織の状況によって臨機応変に施策を変えることも重要です。組織開発は組織の変化に対応するため、継続する必要があり、継続することで結果を生み出すと言っても過言ではないでしょう。

新たな人材を獲得する

組織開発を成功させるためには、新たな人材を獲得することも検討してみましょう。

新たな人材を獲得することにより新たな視点や知識を取り入れられ、組織の柔軟性や創造性の向上、従業員間の競争力を高めることに期待できます。結果として、組織のイノベーションや成長にもつながっていくでしょう。

組織開発を進めて組織の活性化を図ろう

組織開発を通して組織の活性化を図ることは、企業の発展において必要不可欠です。

昨今は価値観や働き方が急速に多様化していることから、組織開発の重要性は今後さらに高まっていくでしょう。特に今現在、変化への対応が後手に回っている企業であれば、早めに組織開発に着手することをおすすめします。

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