人材採用

変わらない人事部では採用できない!DX人材の獲得に成功する採用現場とは【DX人材の採用実態 連載第1回】

デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進できる即戦力人材を外部から招く企業が増えているという。2012年の創業以来、デジタル分野の採用支援で実績を上げてきた人材紹介会社ウィンスリーの黒瀬雄一郎代表に、人材市場の動向や採用成功のポイントなどについて解説してもらった。

ウィンスリー 黒瀬 雄一郎 代表取締役 ヘッドハンター

ウィンスリー
黒瀬 雄一郎 代表取締役 ヘッドハンター

【PROFILE】2000年慶応義塾大学経済学部卒業。2003年に電通グループのデジタル広告代理店の立ち上げをおこない、セールス&マーケ部門の統括を行う。同部門の採用責任者として100人程度のメンバーを採用する。2012年デジタル分野専門人材会社ウィンスリーを創業し現在に至る。

成果報酬100%の破格の採用投資に踏み切る企業も。苛烈な人材獲得競争

実質的に日本全体のDX化を推し進めることになったのはある意味でパンデミックだったと言わざるを得ません。つまり、2020年までの間にどれだけデジタル化への意識を社内で高め、かつ採用を進めていたかが今日までのビジネス推進力に大きく影響しました。

概ねそれらは大手企業を中心に、テック系スタートアップなどで進められ、以降は現在に至るまで地方企業や業界を問わずデジタル人材の需要がかつてないほどに高まり、もともと需要に対して既に不足していた人材供給が社会的な課題とも言える事態となっています。企業では採用だけでは限界があるため、既存社員をデジタル人材にすべく独自に教育の機会を提供し育成するなど試行錯誤が続いています。

私たちウィンスリーでも、創業以来デジタルマーケティングおよびDX人材に特化した専門エージェントとして10年になりますが、2022年が過去最高数のオーダーをいただいている状況です。問い合わせ数も前年度と比較して2.8倍に増え、特筆すべき点として採用コストに大きな投資をかける企業が大手を中心に非常に増えていることです。

求める人材に出会えるのであれば報酬も惜しまないという傾向となっており、たとえば従来人材エージェントが設定する採用における成果報酬は35%ほどでしたが、特に需要の高いデジタル職種、約200ポジションにおいては50~100%を設定する企業も存在します。大手広告代理店のデータマーケティング責任者、大手コンサルティングファームのDX推進ディレクター、大手事業会社のCDOなどがその一例です。

目標採用枠の達成は困難、正社員に限定しない多様なオファーで事業停滞を乗り切る傾向

需要度の高い職種はデータ系エンジニアやEC事業責任者、DXプロデューサー等であり、採用競争も苛烈を極め、それに伴い「高度デジタル人材へ年収2000万」というニュースもあるように投資額も上昇の一途です。コロナ禍によってリテールビジネスが低調なため、D2Cビジネスへの投資が加速し、EC事業責任者やそれらを支援する広告代理店、Sler、EC系パッケージベンダーからの要請は特に急増している状況です。

一方で、過去例を見ない高待遇の給与やフレキシブルなエージェントフィーへの実行に踏み切れない企業では、他のアプローチとして正社員ではなく契約社員でオファーするなど、プロパー社員とは異なる待遇を設定する等の対策を試みています。このように各社各様で人材獲得に勤しんでいるものの、目標採用枠を達成できている企業は実感として皆無という厳しい現実があります。

採用がうまくできている企業は何が違うのか

当社の実感値として、採用目標達成を実現できる採用力を5段階に分類してみました。数字が高くなるにつれ、採用がうまくできている企業として見てください(図1参照)。

図1:採用目標達成の実現レベル(ウィンスリーの実感値)

ウィンスリー

《レベル1》

いわゆる人事が総務と兼務する部署を持つケースで、デジタルに強みを持たない従来からのエージェントや公的機関からのエントリーを受け身で待っている。

《レベル2》

採用担当はいるもののデジタルに明るくなく、現場からの募集要項をほぼ丸投げで転用している。エージェントを日々開拓しておりKPIは追っているが、改善の感度は不振。

《レベル3》

デジタルにも明るく現場への理解も持つデジタル専門の採用担当がいる。候補者のリードは既存大手媒体掲載が中心で、エージェントとの関係構築や開拓も進めている。しかし採用人事もコストセンターの位置づけであり、採用コストをアグレッシブに掛けることはできない。

《レベル4》

レベル3に加え、ハイクラス人材用データベースなどを用いたダイレクトリクルーティングを活発に行い、採用イベントやPR活動はもちろんリファラルやアルムナイ採用の仕組みを導入するなどあらゆる手段を用いて候補者獲得に動いている。RPOの活用も積極的に行っており、採用担当も現場からアサインしたり、中途募集も頻繁に行うなど人材確保のための投資も推進している。

《レベル5》

HRBPを導入し、組織構築、採用、育成、人事戦略を綿密に実行している。人材が競争優位の源泉と位置づけ、積極投資に踏み切っている。

採用の成否を分かつ、今すぐできるアクションとは

当社が支援している企業ではレベル4、5が多く、離職率の少ない優秀な人材の入社を多数実現できています。このことは「上位企業に優秀な人材が集まり辞めにくい」という状況を表わしています。二極化が進むなか、主要ポジションではプロ人材による業務委託活用も増えていますし、細分化した業務に特化した関わり方を提供できれば遠隔地の優秀な人材など範囲が拡がります。

そうした状況も手伝い、個人事業主として独立しプロ人材を目指すケースは当社でも候補者のうち35%ほどが希望するなど、DXにより働き方の多様化も進んでいます(図2参照)。

図2:会社を辞めて個人事業主への興味はありますか

ウィンスリー

採用計画に対し思い切った投資を実行することは理想ですが、なかなか難しい場合もあります。少しでもできるアクションとしては、RPOを活用しつつ採用体制を強化することや、スピーディーに必要とする主要ポジションは業務委託を検討すること、汎用的なエージェント一択から当社のような領域特化のブティック型エージェントを活用することなども今後採用の成否を分けていくはずです。



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