タリスマン
安田 雄司 プリンシパル・コンサルタント
パンデミックで多くの業界・産業は傷つき、ロシアによるウクライナ侵攻は経済の様々な分野で影響を与えています。一部の医療機器ではサプライチェーンの不安定さから供給面で影響は受けていますが、ヘルスケア全体では他産業と比較し影響は少ないです。
むしろ、AIに代表される新たなイノベーションによる様々なヘルステック企業の誕生、データ分析の飛躍的向上、他産業からの参入、エコシステムによる非ヘルスケア企業とヘルスケア企業との新たな生態系の形成など、長年なかった大きな変化が起きてきています。
これらは従来のヘルスケアを定義する伝統的枠組みを変えてきています。この変化は、製薬会社の創薬開発におけるAI活用、データ分析の専門家やリアル・ワールド・エビデンスによる活用データの広がり、AI+医療機器によるAI診断など、企業の戦略にも大きな影響を与えています。
採用にも変化が起きています。従来のキャリア採用はほぼ同じ業界からでしたが、他業界からの採用が増加し、人材獲得という面では、他業界との競合状態も生じています。また、求人者側においても、製薬・医療機器業界の候補者のヘルステックへの興味度も高まっており、そちらを志向する求職者も増加傾向にあります。
従来型のポジションの採用に加え、上記のような今までなかったようなポジションの採用が加わり、企業の採用意欲は当分高い水準で続いていくことが予想されますが、職種によっては、完全にマッチする人材獲得に長期戦を要する場合も多いです。
今後、ヘルスケアをめぐる人材獲得は、市場のダイナミクスの変化から難易度があがることも予想されます。
一部の外資系では、募集要件一部のスキルが不足していても、求めるマインドセットやポテンシャルが高い人物であれば、業務成果を上げられるであろうという「スキルセット+マインドセット(あるいはポテンシャル)」型で、人材評価を実施しています。こういった形へと人材評価方法のシフトを加速してもよい時期ではないでしょうか。
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