人材育成

次世代経営リーダーの条件

リーマン・ショック以降の激変する経営環境を反映して経営人材の育成に対する関心が高まっている。一方で、新しいビジネスモデルを構築しようとする企業では、これまでの企業体質を刷新するために経営者を外部から招へいする企業も目立っている。変革の時代にふさわしい次世代経営リーダーの条件と課題は何か、経営人材の採用と育成を支援する人材コンサルティング各社に聞いた。

日本人材ニュース
目次

企業を取り巻く課題、経営人材への期待高まる

リーマン・ショック以降に進行したグローバル化や著しい技術革新によって企業を取り巻く経営環境は大きく変化した。

企業の経営課題は、「既存事業の海外市場(新興国)での拡大」(61.6%)、「既存事業の国内市場での拡大」(59.5%)、「自前での事業展開のスピードアップ」(53.5%)、「企業体質の刷新」(53.1%)、「ビジネスモデルの革新」(51.2%)などで、海外や国内で事業を拡大するために組織やビジネスモデルを変革する必要に迫られている(リクルートマネジメントソリューションズ調べ)。

このような課題を反映して、社内の人材を選抜して経営人材に育成しようと考える企業が増加しており、選抜人材教育への関心度は、リーマン・ショック直後の2009年に従業員3000人の企業で6割程度であったのに対し、2012年には8割強に上昇している(日本生産性本部調べ)。

経団連の調査によれば、企業における経営人材には次のような課題がある。

「経営人材の育成に求められるスピードが速まっている」(94.5%、「あてはまる」と「ややあてはまる」の合計)、「経営人材に求められる能力の質が変化している」(89.5%)、「経営人材育成の方法が確立されていない」(82.3%)と多くの企業がほぼ同様の問題意識を抱え、試行錯誤を繰り返しながら経営人材を育成している実態が浮かび上がる。

さらに、「経営人材候補が不足している」(83.7%)、「経営人材候補の多様性がとぼしい」(82.3%)、「経営人材としてのロールモデルが不足している」(73.0%)、「経営人材の絶対数が不足している」(57.2%)という回答もあり、経営環境の激変とともに経営人材の不足はより深刻さを増している。

経営人材が社内で育成され難い状況について、リクルートマネジメントソリューションズ組織行動研究所の古野庸一所長は、次のように指摘する。

「2000年以降、経営人材を育成するために企業は様々な取り組みをしてきました。しかし“配置”と“昇進”という二つの壁に阻まれて、選抜プログラムが上手く機能していないケースが目立ちます」

「選抜プログラムが終了したならば、それに見合った責任のあるポジションへ配置し、同時に昇進させなければならないはずですが、実際には以前と同じ部門で同じ仕事に戻っていくことが多いのです。選抜によって優秀な人材を引き抜かれてしまうことになる部門の納得が得られないことも一因です」

また、選抜の基準や方法があいまいなために経営人材が育成されないケースもある。例えば、課長や部長への昇進を選抜と見なしている場合だ。

だが、「課長」や「部長」という役職が経営人材にふさわしいのかというと、経営人材としての資質を見極めて任命しているわけではないので適切とはいえない。

そのため、当初の目的とは大きく外れた玉石混交の選抜となってしまう。理由のない人事の“公平性”が社内の混乱を招いているのだ。

●9月に発表された日本企業の主な海外関連M&A

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社外から経営幹部を採用するときの経営人材の条件

経営人材の不足が深刻化する中、グローバル化への対応や多様性を目的として経営幹部を社外から登用する企業も多くなった。

最近の例では、住宅設備機器大手のLIXILが日本GEから社長と人事担当役員を、資生堂では外国人副社長を外部から招へいしている。

また、ここ数年続いた円高で海外における企業買収が増加し、同時にマネジメントの現地化を進めた結果、海外子会社のトップなどに現地に精通した社外の人材を登用する企業が増加した。

世界最大のエグゼクティブ・サーチ会社の日本法人で経営者のヘッドハンティングで有名な日本コーン・フェリー・インターナショナルの妹尾輝男社長は次のように話す。

「これまで日系の大手企業では、社内に優秀な人材が豊富なこともあり基本的にボードメンバーや子会社トップを外部から登用することはありませんでした。しかし、ここ数年の海外進出の加速と事業強化で組織全体の見直しが進み、グローバルな経験や知見を持った外部人材をアジア地域などの経済ブロック全体を統括するポジションや海外子会社トップとして採用するケースが増えています。また、現地化を進める企業の方針は日本に進出する外資系企業でも同様で、日本法人の子会社社長を日本人へと代える傾向にあります」

このようなポジションで経営幹部を社外から登用する場合、どのような能力が基準になってくるのだろうか。活躍できる人材の要件として妹尾氏は、「チェンジエージェント(戦略を見直すことができ、変革の意欲が高く、新しい変化を起こせる)」、「自主性・独立性(現状の言い訳ではなく本社に戦略を提案できる)」、「ラーニングアジリティ(経営環境の変化に素早く対応し、社内外の違った環境に適応できる)」、「ハイパフォーマー、ハイポテンシャル」、「イノベーションマネジメント(創造性)」の5つを条件として挙げた。

リーマン・ショック後、選抜人材への関心は大きく高まった

●選抜人材教育への関心度(従業員数3000人以上企業)

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(出所)日本生産性本部「将来の経営幹部育成に向けた『選抜人材教育』に関する調査」(2012)

中堅・中小企業における次世代経営リーダーの条件

人材が豊富な大手企業と違って、中堅・中小企業では次世代経営リーダーの不足はより深刻だ。特にリーマン・ショック以降は、元請けの大手企業の海外事業強化とともに、一緒に海外へ進出するのか、競争が激しくなる国内市場でさらに事業を拡大するのか、厳しい選択を迫られるようになっている。

そのためには企業体質の刷新や新しいビジネスモデルの構築が必要で、社内の次世代経営リーダーと目される人材の経験や知識では経営のかじ取りが難しい局面になっている。

日本で最も歴史のあるエグゼクティブ・サーチ会社の一つである東京エグゼクティブ・サーチの福留拓人社長は、経営者候補の外部からの登用の難しさについて「グローバル化や競争の激化で、これまで通りの事業のやり方が通用しなくなっています。新たな取り組みを始めるためには、やはり社外から次世代経営者候補を招へいする必要があるのですが、これまで育成してきた社内の経営幹部を前になかなか踏み切れない経営者もいます」と打ち明ける。

中堅・中小企業では社外から経営者候補を採用した場合、多くはまず新規事業の責任者や事業全体を見わたせる経営企画の責任者に任命し、早ければ数年後に社長に登用することもある。

経営者候補の採用だけに慎重な人選が必要になる。中堅・中小企業における次世代経営者の要件について、福留氏は次のように話す。

「社外から登用された経営者候補が活躍するには、経営幹部やプロパー社員の協力をいかに得られるかが重要です。入社したものの社内の協力を得ることができずに、実力を発揮できないまま辞めてしまう人もいます。周りを巻き込んで事業を推進することができる人間力は経営人材として最も重要になります」

あなたの会社が必要とするリーダーは?

●リーダーシップの変遷(人事コンサルタント小杉俊哉氏による区分)

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(出所)小杉俊哉「リーダーシップ3.0-カリスマから支援者へ」を基に本誌作成

次世代経営リーダーとして成長するには何が必要か

グローバル経営を支えるはずの社内の経営人材の育成が需要に追いついていないと分析するのは、ホワイトカラーの人材紹介でジャスダックに上場するジェイ エイ シー リクルートメントの松園健社長だ。

「2000年頃までは海外大学のMBAへの企業派遣などグローバル人材の育成が盛んに行われていました。しかし、帰国後に学んだことを活かせるような配置や登用が行われなかったために、派遣した人材の多くが転職してしまい企業派遣はほとんど行われなくなりました」

「そのため、海外のネットワークやグローバルなマネジメント能力を持った次世代経営リーダーとなるべき人材が不足し、現在のグローバル人材の需要に対応できなくなっているのではないでしょうか」

しかし、ここ数年で再びグローバル人材は育ってきているという。「最近は、自ら積極的に海外へ出て行って新規事業を立ち上げたり、起業する人も多数います。これらの人材が今後、グローバルな経営人材として確実に育ってくるでしょう」 そして、次世代経営リーダーとして人材が成長するための要件を次のように話す。

「リーダーシップは、後天的にも開発できると思っています。体力や気力が充実しているうちに、自分でトライ・アンド・エラーを繰り返し、修羅場経験を乗り越え、逆風が吹いてもあきらめずに様々な経験をするうちに運やタイミングが自ずと巡ってくるのです」

次世代経営リーダーは選抜されるだけではなく、個人の日頃からの心構えや行動によって成長に大きな差が出てくる。次世代経営リーダーの育成には、やる気のある人材の自主性や主体性を認め、促していくことも人事の役割になってくるだろう。

グローバルなコミュニケーション能力を習得する

楽天やファースト・リテイリングを始めとしてグローバル化を推進しようとする企業では、社員の英会話力の向上に取り組んでいる。昇進・昇格の要件にTOEICスコアを必要とする会社もある。

これまで国内で事業展開していたヤマト運輸や吉野家などのサービス産業も海外へ進出するようになり、現地社員とコミュニケーションを図るための外国語の会話力の必要性はさらに高まりつつある。

ところが最近は、会議の出席者全員がTOEICスコア900点以上の社員であるにもかかわらず英語の会議では一切発言がない、という笑うに笑えない話も聞こえてくるようになった。企業の外国語教育を支援するロゼッタストーン・ジャパンの田尻新吾社長は、海外ビジネスでの外国語会話能力の必要性について次のように話す。

「海外でビジネスをうまく立ち上げるには、クライアントとの交渉は現地社員に任せたとしても、現地メンバーとは現地語でコミュニケーションを図り、ビジョンを示すことでビジネスに巻き込んでいく必要があります」

さらに、グローバルな次世代経営リーダーに必要なコミュニケーション能力について次のように説明する。

「日本のミーティングは、あうんの呼吸ですべてを話さなくても分かるものでしたが、異文化の海外では通用しません。また、英語などはあくまでもツールであり、TOIECのスコアがいかに高くても相手とコミュニケーションが図ることができなければ役立ちません」

「外国語で話すということは、伝えたいことが明確になっていなければならず、客観的なデータに基づく戦略や判断を論理的に考えるという思考を身につける訓練にもなります。コミュニケーション力の向上は、企業のビジョンを伝えていくという経営人材の資質としても重要なことなのです」

周囲を巻き込みビジネスを構築する能力

日本のマーケットが縮小する中、グローバル事業の展開、新しいビジネスモデルの構築、事業スピードのアップ、企業体質の刷新など、ここ数年で様々な変革が求められるようになった。

そして、経営の中核人材に求められる能力も、企業の置かれた状況により「新たな課題にチャレンジできる」(61.3%)、「部下や後継者を育成できる」(39.8%)、「海外拠点において適切にマネジメントできる」(32.0%)、「事業を大局的に策定できる」(28.3%)、「革新性・先進性・独自性の高い製品・サービスを作り出す」(26.8%)、「心身ともに強く職場環境等の変化への適応力が高い」(25.2%)など多様だ(経団連調べ)。

だが、リーマン・ショック後の変革の時代にふさわしい次世代経営リーダーの条件として共通することは、「周りを巻き込んでビジネスを構築していく能力」と「あらゆる変化に対応することができる能力」といえる。このような次世代経営リーダーは、短期間で養成することは難しい。

経営人材の育成には経営トップが深く関与して社内の利害関係を調整し、早期の選抜で経営経験を積ませるなど計画的に養成しなければならないことを認識する必要があるだろう。

専門家に聞く「次世代経営リーダーの条件と採用・育成の課題」

ポストコンサルが採用のターゲットに

コンコードエグゼクティブグループ

コンコードエグゼクティブグループ
渡辺 秀和 代表取締役社長 CEO

多くの成長企業がコンサルティングファーム出身者(ポストコンサル)を即戦力の次世代経営リーダーとして積極的に採用している。ポストコンサルは定量的・論理的な視点から課題解決する経験を積んでいる。経営リーダーに必要なのはゼネラリストの経験ではなく経営者としての質の高い経験だ。

しかし、若い社員に経営経験を積ませるのはポジションを用意できず困難な会社も多いだろう。そのような中、豊富な経営経験を積んでいるポストコンサルは貴重な「次世代経営リーダーの共有源」となっており、今後、ますますポストコンサル採用は過熱化が見込まれる。

彼らは給与面だけを重視して転職するわけではなく、担当する仕事を重視している人が多い。採用時には能力を活かせる仕事やポジションを用意することがとても大切だ。

専門性と海外経験を持つ人材にチャンスを

アズール&カンパニー

アズール&カンパニー
井口 亜紀子 代表取締役社長

当社が専門とする消費財・アパレル分野では、販売チャネルの主役が従来の百貨店からショッピングセンター・ファッションビル、ネット通販などに変化している中で、最適なビジネスモデルを構築し急成長している日本企業が出てきている。

こうした企業ではデザイン、ブランド作り、生産管理、販路拡大などの各分野において次のビジネスをリードできる人材の獲得に積極的な投資を行っているが、採用でターゲットとなるのは非常に高度な専門性を持つ人材だ。

最近は日本企業のリーズナブルかつ高品質な商品に対する評価が世界的にも高まっており、海外で経験を積んだ人材が日本発・東京発でビジネスを拡大させたいという意欲を持っているため、企業がふさわしいポジションやチャンスを用意できれば採用につながるだろう。

リーダーの学習を支援する仕掛けを用意する

レビックグローバル

レビックグローバル
花木 喜英 執行役員

企業の人材投資意欲は今年に入ってから顕著に高まり、国内だけでなく海外の現地従業員への幹部教育ニーズも拡大している。

次世代の経営リーダー像は業種や市場環境で異なるが、当社が支援する場合は、現在の枠組みで考えるのか(効率化・精緻化への支援)、グローバル化対応のように既存ビジネスの拡大が狙いなのか(環境対応への支援)、全く新しいリーダー像を求めているのか(再構築への支援)と3つのタイプに整理している。

いずれにしても企業にはリーダーの学習を支援する仕掛けを用意することが必要になる。自律的な学習を導くプロセスの設計が欠かせず、学習の習慣化のためにゲーム的要素を取り入れたり、必要なときにすぐに学べる大量のコンテンツ、映像を活用した教材の活用が一層進むだろう。

世界で活躍できる次世代リーダーが求められている

ジェイ エイ シー リクルートメント

ジェイ エイ シー リクルートメント
松園 健 代表取締役社長・COO

国内から海外へとビジネスのフィールドが急速に広がり、さらに、これまで日本企業で活躍してきた海外子会社トップのシニア層の世代交代で社内人材が不足し外部から人材を登用するようになっている。

また、海外事業の強化でこれまで現場任せだった海外子会社についても本社が統括するようになり、現地幹部の交代も進んでいる。グローバルな経営人材として商社、メーカー等の海外子会社の役員経験者などが評価され、採用されている。

ローカルビジネスを熟知し、経済ブロックの中でビジネスができ、世界で活躍できる次世代リーダーが求められている。次世代経営リーダーになるには世の中の様々なニーズに関心を持ち、誰もやってこなかったことにチャレンジしていくことが必要だろう。

周りを巻込む事業の遂行能力

東京エグゼクティブ・サーチ

東京エグゼクティブ・サーチ
福留 拓人 取締役社長

中堅・中小企業では、大手企業以上に経営人材が不足している。次世代経営リーダーに問われる能力は業界や業種・企業規模などによって様々だが、①グローバルなマネジメント能力、②ITリテラシーを駆使した情報収集能力、③事業を根本的に変革する能力、④周りを巻き込む人間力、⑤基礎的な財務指標に強いことなどが挙げられる。

また、企業体質の刷新のために業界経験がない経営人材をあえて外部から登用することがあることも最近の特徴だ。例えば、ビジネスがBtoBであるか、BtoCであるかという共通点さえあれば、他の業界から良い部分を取り込み、組織を変革して事業を成長させようと考えるためだ。

それだけに次世代経営リーダーには、豊富な現場経験と周りを巻き込んで事業を遂行する能力が必要になる。

成功・失敗を問わず壁にぶつかった経験

ディスコ

ディスコグローバルサーチ
久永 祐喜 代表取締役

業種や規模によって求められる条件は異なってくるが、もっとも重要なのは人間力であり、経営者として魅力のある人物だ。経営人材は自分の意見を持って周囲を巻き込みながらビジネスを推進するけん引役でなければならない。

また、事業を粘り強く進めるためには、成功・失敗を問わず大きな壁にぶつかった経験が必要だ。壁にぶつかったことが無いリーダーは、初めて壁にぶつかったときにどうしても弱くなる。絶えず社内で優遇されてきた人材も忍耐力に欠けることから、経営人材には向かないだろう。

経営人材は数年後にはボードメンバーになる確率が高い。それだけに部下のいる部門でのマネジメント経験やリーダーシップは必須だ。また、経営人材に年齢は関係ないが、体力・気力は人一倍充実していなければならない。

早期に特性や能力を見極め、意図的・計画的な配置や訓練を

Indigo Blue

Indigo Blue
柴田 励司 代表取締役社長

リーダーシップとは指示・命令で組織を動かすのではなく、自らやるべき方向性を示し、周囲に良い影響を与えながら皆が賛同して能動的に行動するように導くことだ。その資質とは人に関心を持ち、周りを気持ちよくさせる環境作りのうまいこと、世話好きなこと。

リーダーを育成するには早期に特性や能力を見極め、意図的かつ計画的に配置や訓練を行うことが必要だ。新卒でのスクリーニングがあっても構わないが、入社3年程度になると本人の特性が見えてくるので最初の選抜のタイミングになる。

日本企業は未だに大卒全員にリーダーになることを求めているが実際にはありえないし、そもそもリーダーになりたい人がたくさんいるわけではない。なりたい人の中から選抜して磨いていくほうが効率的だ。

グローバル化とM&Aで経営人材の外部登用が進む

コーン・フェリー

日本コーン・フェリー・インターナショナル
妹尾 輝男 代表取締役社長

日本の大手企業では社内に優秀な人材が多いため、これまで経営人材の外部登用はほとんどなかった。しかし、ここ数年続いた円高とグローバル化によって海外企業のM&Aが進んだ結果として、経営幹部や海外子会社のローカライズによるトップや現地に精通したマーケティング責任者を現地人材から登用するようになってきている。

経営人材に求められる条件は、①「チェンジエージェント(戦略を見直すことができ、変革の意欲が高く、新しい変化を起こせる)」、②「自主性・独立性(現状の言い訳ではなく本社に戦略を提案できる)」、③「ラーニングアジリティ(経営環境の変化に素早く対応し、社内外の違った環境に適応できる)」、④「ハイパフォーマー、ハイポテンシャル」、⑤「イノベーションマネジメント(創造性)」が挙げられる。

経営人材の育成を阻む「配置」「昇進」二つの壁

リクルート

リクルートマネジメントソリューションズ
古野 庸一 組織行動研究所 所長

2000年以降、人事には経営人材を育てなければならないという課題は絶えずあったが、その結果は満足のいくものではなかった。

欧米のGE、P&G、ネスレなどは子会社経営者など経営全体を見ることができるポジションに登用して実際にマネジメントを経験させているが、日本企業では「配置」「昇進」という二つの壁があるため、それができている会社は少ない。

次世代経営人材の条件も企業の業界・業種や成熟度合などにより異なってくるし、また、経営者により様々である。コマツ元会長の坂根正弘相談役は、経営者の条件を「本質を見る力」「学習する力」「信頼関係を構築する力」と答え、LIXILの藤森義明社長は、「ビジョンを創り」「ビジョンを伝え」「ビジョンを実践し、人を動かす」と答えている。

人間的魅力に裏打ちされたリーダーシップで人を納得させ動かす

マンパワーグループ

マンパワーグループ
池田 匡弥 取締役代表執行役副社長

現在の経営環境において、企業が次世代経営リーダーに要求する資質やスキルは、過去のそれと比較して多岐に渡っている。その中でも特に重要とされる本質的な資質は、やはりリーダーシップであろう。

ここで言うリーダーシップとは、人間的魅力に裏打ちされたリーダーシップであり、人を納得させ動かせる力である。経営環境が目まぐるしく変化する現在では、長期的視野に立った人材育成が充分に行えない場合もある。

企業は、リーダーシップを備える次世代経営リーダー候補者を自社で選抜育成する手法に加え、外部人材活用にて補う手法も常に準備しておく必要がある。いずれの場合においても、自社にとっての次世代経営リーダーに求める資質やスキルを常に明確にし、共有しておくことが重要である。

自社の価値観への共感と枠にとらわれない発想

IWNC

IWNC
石川 隆久 取締役

次世代経営リーダーには、高い業績と組織を率いるという明確な意思だけでなく、自社の価値観に共感した上で、枠にとらわれない発想ができることが欠かせない条件だ。

そのため、特に30代の次世代リーダー候補を対象とする研修では、リーダーとして自立するための意識づけ(マインドセット)を最も重要な狙いとしている企業が多い。

ビジネスのグローバル化対応や新しい領域の事業への取り組みが必要になっている企業が増えているため、他社で活躍している経営リーダーから直接話を聞く機会を研修に取り入れるなど、社内で完結するのではなく、枠を広げる経験を促すプログラムも増えている。また、学んだことを職場で発揮し、その実績を広めていくなど、組織的な継続支援の仕組みも必要だ。

多様なメンバーのマネジメントと環境対応の経験

アイアンドシー・クルーズ

アイアンドシー・クルーズ
上村 一行 代表取締役社長

当社では「CXO SEARCH」等の運営を通じ、企業の経営幹部層をメインとした紹介事業を行っている。市場環境が目まぐるしく変化する昨今においては、企業の事業領域も柔軟に定義していくことが求められていると感じる。

そうした状況の下、次世代経営リーダーとしてのニーズは幅広くなっているが、共通して言えることは、多様なメンバーのマネジメント経験があり、環境変化に対して柔軟に対応しながら成果を残してきた人、と言える。

また海外事業領域におけるニーズも変わらず高く、海外現地での経営経験のある人材へのニーズも増えている。ただし、求める幹部人材がタイミング良く採用できるケースは多くはなく、自社の若手候補者を海外に派遣し、幹部候補として育成する企業も増えている。

次世代リーダーの資質としてのコミュニケーション能力

ロゼッタ

ロゼッタストーン・ジャパン
田尻 新吾 代表取締役社長

英語や外国語はツールに過ぎない。次世代経営リーダーに重要なことは、このツールをコミュニケーションツールとして活用することだろう。TOIECスコアを伸ばすだけでは、このコミュニケーション能力を高めることはできない。

日本の会議では、あうんの呼吸ですべてを話さなくても通じていたが、異文化の海外では通用しない。日本語はあいまいな言語だが、外国語はいいたいことが明確になっていないと発言することができない。

外国語によるコミュニケーション力を高めるということは、ものごとを客観的にとらえ、データに基づいて戦略を描き、判断することで体系的かつ論理的な思考を鍛えることになる。同時に、ビジョンを伝えていくという経営者としての基本である資質を高める。

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