上場企業の賃上げ率は2.75%の見通し、ベアを「実施する予定」は過去10年で最高

労務行政研究所が上場企業等を対象に実施した「賃上げ等に関するアンケート」によると、2023年の賃上げ見通しは定昇込みで2.75%となり、25年ぶりの高水準となることが分かった。

2023年の賃上げ見通しは、全回答者の平均で8590円・2.75%となった。

厚生労働省調査における主要企業の22年賃上げ実績(6898円・2.20%)から1692円・0.55ポイントのプラスとなり、98年(2.66%、厚生労働省調査)以来25年ぶりの高水準となる予測である。

賃上げ率の分布を見ると、労使とも「3.0~3.1%」が最も多く(労働側22.7%、経営側23.8%)、「2.0~2.1%」が続いている(労働側17.2%、経営側22.8%)。

労使別の額・率の平均は、労働側が8532円・2.74%、経営側が8601円・2.75%となっている。

定昇については、労働側で89.5%が「実施すべき」、経営側で93.1%が「実施する予定」と回答した。

ベアについては、労働側では「実施すべき」が87.4%で大半を占めた。経営側では「実施する予定」が41.6%と4割を超え、「実施しない予定」(21.8%)の2倍程度となっている。

経営側では、ベアを「実施する予定」の割合が15年に35.7%と増加。16~19年は“20~30%台”で推移していたが、20年に16.9%と2割を下回り、21年は4.8%とさらに低下。22年は17.0%と若干上昇し、23年は41.6%と過去10年で最も高くなっている。

22年のベアの実績は、「実施した」が54.5%と、「実施しなかった」の41.6%を12.9ポイント上回った。

急激な物価上昇への対応方法を聞くと、「ベアで対応」が労働側(83.0%)と専門家(74.3%)で最も多く、両者では「賞与・一時金で対応」、「手当(インフレ手当等)で対応」が3~4割程度で続く。「特に対応する必要/予定はない」は労働側で0.7%(2 人)にとどまる。

一方、経営側では「特に対応する必要/予定はない」が33.1%で最多となり、「ベアで対応」(31.5%)をわずかに上回った。

調査は、労働側は東証プライムおよびスタンダード上場企業の労組委員長等を対象に、経営側は全国証券市場の上場企業と上場企業に匹敵する非上場企業の人事・労務担当部長を対象に、専門家は主要報道機関の論説委員・解説委員、大学教授、労働経済関係の専門家、コンサルタントなどを対象に実施し、2022年12月2日~2023年1月16日までに労働側238人、経営側101人、専門家100人から回答を得た。

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