女性労働者が、産前産後休業(以下まとめて「産休」といいます)や育児休業(以下「育休」といいます)から復帰する際に、業務上の都合で、従前とは異なる業務へ配置せざるを得ないということは、生じ得ることですが、使用者はその際に、職務等級を維持し、基本給や手当等も維持しておけば、女性労働者のキャリア形成等を考慮せずに、どのような業務に配置しても、マタハラ等の問題は生じないのでしょうか。
この点に関する近時の裁判例である東京高判令5.4.27‐アメリカン・エキスプレス・インターナショナル事件を見た上で、留意点、対応について、KKM法律事務所の荒川正嗣弁護士に解説してもらいます。(文:荒川正嗣弁護士、編集:日本人材ニュース編集部)
事案の概要
Y社の個人営業部マネージャーであったXが、産休及び育休の取得を理由に、チームリーダー(ジョブバンド35、部長職相当)の役職を解かれ、アカウントマネージャー(ジョブバンド35で変更なし)に任命される等の措置を受けたことが、男女雇用機会均等法(以下「均等法」といいます)9条3項及び育児介護休業法(以下「育介法」といいます)10条の「不利益な取扱い」に当たる等し、人事権の濫用で違法・無効であるとして、アカウントマネージャーとして勤務する義務がないことの確認、不法行為等を理由とする損害賠償請求をしました。
本件で不利益取扱いだと主張されたのは、以下の5つの措置です。
<不利益取扱かが争われた5つの措置>
- Y社は、Xが産前休業に入ると、Xのチームに仮のチームリーダーを選任し、平成28年1月に4つのBSチームを3つに集約するとともに、アカウントセールス(AS)部門を新設した。これによりXのチームは消滅した。
(本件措置❶-1) - Y社は、平成28年1月に復帰したXを、部下を1人も付けずにAS部門のアカウントマネージャー(バンド35)に配置した。
(本件措置❶-2) - Y社は、平成29年1月にASチームにリファーラル・アカウントセールス(RS)チームを新設、Cをそのリーダーとした。
(本件措置❷) - Y社は、平成29年3月の人事評価で、Xのリーダーシップ項目の評価を最低評価の3にした。
(本件措置❸) - Y社は、Ⅹを、育児休業からの復帰直後、個人営業部の共用スペースの席で執務するよう指示し、平成28年9月~同年12月7日まで、他のフロアにある部屋での執務を命じた。
(本件措置❹)
原審及び控訴審の判断
結論
先に結論を見ますと、原審(東京地判令1.11.13)は、いずれの措置も、そもそも不利益性がないとして不利益取扱いに該当せず、違法性を否定し、Ⅹの請求を全て棄却しました。
これに対して、高裁は結論として、本件措置❶-2、❷及び❸は、均等法9条3項及び育介法10条の「不利益な取扱い」に当たるほか、Y社の人事権を濫用するものであって、公序良俗にも反し、無効であるとする一方、本件措置❶-1及び❹は「不利益な取扱い」等に当たらないと判断されています。
そして、Y社は上記不利益取扱いにつき、不法行為に基づく損害賠償義務を負うが、Ⅹの逸失利益は具体的な額が認定できず、慰謝料200万円のみを認容しています。
判断枠組み
高裁のとった判断枠組み等ですが、まず、均等法9条3項及び育介法10条は強行規定であり、これに違反する措置は無効であるとしています。
そして、配置の変更による不利益性の有無を判断する観点として、一般に基本給や手当等の面において直ちに経済的な不利益を伴わない配置の変更であっても、業務の内容面において質が著しく低下し、将来のキャリア形成に影響を及ぼしかねないものについては、労働者に不利な影響をもたらす処遇に当たるというべきである、としています。
この配置の変更による不利益性のとらえ方が原審と異なる部分であり、結論が分かれたポイントの一つと考えられます。
その上で、高裁は、上記のような不利益な配置の変更を行う事業主の措置が、均等法及び育介法が禁止する不利益取扱に当たるかどうかの判断枠組みについて、次のとおりに整理します。
<原則>
- 女性労働者につき、妊娠、出産、産前休業の請求、産前産後の休業等を理由として、上記のような不利益な廃止の変更を行う事業主の措置は、原則として、法の禁止する不利益取扱に当たるものと解される。
- ただし、例外的に不利益取扱に当たらない場合がある。
<例外1>
- 当該労働者につき自由な意思に基づいて当該措置を承諾したものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するときは、同各項の不利益取扱いに当たらない。
- ①当該措置により受ける有利な影響及び不利な影響の内容や程度、②当該措置に係る事業主による説明の内容その他の経緯、③当該労働者の意向等に照らして、上記「合理的理由」の有無を判断する。
<例外2>
- 当該措置につき均等法9条3項又は育介法10条の趣旨及び目的に実質的に反しないものと認められる特段の事情が存するときは、同各項の不利益取扱いに当たらない。
- ①事業主において当該労働者につき当該措置を執ることなく産前産後の休業から復帰させることに円滑な事業運営や人員の適正配置の確保などの業務上の必要性から支障があること、②その業務上の必要性の内容や程度及び上記の有利又は不利な影響の内容や程度に照らして、上記「特段の事情」の有無を判断する。
こうした判断枠組みについては、高裁判決では明示的に引用とはされてはいませんが、妊娠中の軽易作業の転換を契機としてされた女性労働者に対する降格措置が均等法9条3項の不利益取扱いに該当するかが争われた最判平26.10.23‐広島中央保健生協(C生協病院)事件で示されたものを踏襲したものと解されます。
以上を前提に、本件各措置に対する判断について見ていきます(公序良俗違反や権利濫用性の有無の判断については割愛します)。
本件措置❶-1について
地裁は、Xのチーム解散以降も、Xのジョブバンド(職務等級に相当するもの)が35のままであり、X復帰の際にはバンド35相当の役職に就くことが想定されていたから、同チームが解散されただけでは不利益な取扱いにそもそも当たらないとします。
高裁も、結論として違法性を否定します。理由として、同措置は、業務上の必要性に基づくもので、Xの妊娠、出産、育児休業等を理由とするものとは認められないから不利益取扱に当たらないとしました。
本件措置❶-2について
地裁は、部下を持たないことによって直ちにコミッションの支給額は減少してはおらず、仮にその支給額が減少する可能性が高まるということができるとしても、給与の相当割合を占める基本給は減少しておらず、Xの不利益は大きくないとします。そして、ジョブバンドの低下を伴わず、いわば役職の変更であり、降格とはいえない旨(不利益はない旨)を述べました。
他方で、高裁はXを、部下を1人もつけずアカウントマネージャーにしたことは、妊娠、出産、育児休業等を理由にしたものだと判断します。
その上で、同措置が不利益取扱いにあたるかについて、高裁は、まず、育児休業前の仕事内容を確認しています。Xが部下を擁するリーダーとしての業務をしていたこと、本社の会議に出席していたこと、妊娠前は部下37人を擁するチームリーダーとして業績を上げ、多額のコミッションやインセンティブが支給されていたことが確認されています。さらに、Xが、バンド30であった際にも部下を擁し、実績を評価され、当時の副社長に女性管理職のロールモデルと言われ、チームリーダーに昇進し自らのキャリアに対する期待を抱いていたことも指摘します。
これに対して、育児休業からの復帰後は、1人の部下もつけられないまま、目標もないまま新規開拓業務に任じられ、700件の電話リストを与えられ電話営業をしていたに過ぎないと認定します。
こうした育児休業前後での業務内容等の比較の上で、復帰後に就いたアカウントマネージャーは妊娠前のチームリーダーと比較すると、その業務の内容面において質が著しく低下し、給与面でも業績連動給が大きく減少するなどの不利益があり、何よりも妊娠前まで実績を積み重ねてきたXのキャリア形成に配慮せず、これを損なうものであったといわざるを得ない旨を述べています。
そして、結論として、本件措置➊‐2は、1人の部下も付けずに新規販路を開拓する業務を行わせ、間もなく専ら電話営業に従事させたという限度において不利益取扱いに当たると判断しました(なお、例外1及び2に当たるとは認められないとされています)。
本件措置❷について
地裁は、新設のチームのリーダーとしたことは、Xの育児休業等を理由としたものとは認められないとしました。
高裁も、そのこと自体は、人事権の範囲内のことであって違法ではない、としています。しかし、引き続きXに部下を付けることなく、電話営業等を行わせた限度で、本件措置❶-2と同様に、不利益な取扱いに当たるとします。
本件措置➌について
地裁はXの育児休業等を理由としたものではないとしました。
対して、高裁は、Xにもともとリーダーシップに難点があったとはできないとしたうえ、人事評価でXのリーダーシップが最低評価を受けることになったのは、不利益取扱いに当たる本件措置➊‐2及び➋がされた結果であるとし、本件措置➌も不利益取扱いに該当するとします。
本件措置❹について
地裁及び高裁ともに、Xの就業環境が害されたというべき具体的事情はうかがわれず、不利益取扱いではないとします。
損害賠償請求について
高裁は、以上のとおり、本件措置➊‐2、➋及び❸が不利益取扱に該当し、違法と判断し、Y社は、妊娠、出産、育児休業等を理由とする不利益取扱いをしてはならない義務に違反したことを理由に、不法行為及び雇用契約の債務不履行に基づき、損害賠償責任を負うとしました。
そして、損害について、Xは少なからぬ精神的苦痛を受け、Y社内でのキャリア形成に対する期待感を害されたことを理由に慰謝料200万円が認められています。
なお、Xは、本件措置➊‐2がなければ、元々、自身が所属していたチームリーダーかそれに相当するポジションに就いて、これらと同等のコミッション及びインセンティブを得ることができたはずだとして逸失利益分の損害が生じているとも主張しましたが、高裁は、どの程度それらを得られたかは不明であることを理由に、係る損害は認めませんでした。
本判決のポイントと留意点
本件措置➊‐2の不利益性
本件で特徴的なのは、本件措置➊‐2の不利益性の評価であり、高裁は、復帰後は、業務の内容面において質が著しく低下したこと、キャリア形成を損なうものであること、業績連動給が大きく減少したことという3点から不利益性を認定した上、均等及び育介法が禁じる不利益取扱いに当たるとしています。
業務の内容面における質の著しい低下との点について
業務の内容面については、上記3・(4)で述べた妊娠前と育休からの復帰後での変化をとらえて、質が著しく低下したと評価されています。
Y社も業務上の必要性から、セールス部門の組織を再編成した上で、Xに当該業務を与えたのですから、一概に「質が低下した」などと、裁判所が評価できるのかは疑問ですが、裁判所にはあまりに「落差」があると見えたのでしょう。
次のキャリア形成への影響という面にも関わりますが、産休・育休前と復帰後とで業務内容が大きく変わるという場合は、当該業務に従事させることの業務上の必要性があり、内容としても、復帰してくる労働者の能力、経験、社内での地位等に照らして相応なものといえるとして、外形的な比較で、「質が著しく低下した」と評価されないように、留意すべきと考えます。
ただし、本件で問題視されたのはあくまで「質の著しい低下」ですから、余程の「落差」がなければそのような評価は妥当はしないとも考えられます(そもそも業務の質の高い、低いをどう判定するのか、という問題もあると思われます)。
キャリア形成を損なうとの点について
そもそも、キャリア形成自体や、それに対する期待が、配置変更の場面で、法的保護に値するかですが、日本型雇用においては、基本的には職種限定をしていない限りは、使用者が業務内容を決定でき、労働者はそれに従うことが当然の前提となっています。
ですから、職種限定合意もなしに、単に労働者の主観的なキャリア形成への期待があったとしても、それは当然には保護されず、使用者による配転命令権限が制約されることはありません。
ただし、客観的な事情から、キャリア形成に対する期待が合理的なものであるといえるならば、配置変更の場面で配慮が求められる場合もあるとはいえます。
その一つは、職種限定合意はしていないものの、一定の職業キャリア(特定業務の能力、経験)を有することを理由に雇用された者についてです。マタハラの事件ではありませんが、東京地判平22.2.8‐エルメスジャポン事件は、システムエンジニアの経験を有し、人材紹介会社を経て、IT技術者として中途採用されたという採用の経緯等から、情報システム専門職としてのキャリア形成をしていくという当該労働者の期待が合理的で保護に値するもので、相応の配慮を要するとします。
そして、店舗ストックへの配転命令は、業務上の必要性が高くないにもかかわらず、当該労働者の上記期待に配慮せず、その技術や経験をおよそ活かすことができない業務へ漫然と配転したものだとして、権利濫用で無効と判断しています。
この事件は、特殊な事例ではありますが、特殊技能を有していたり、専門職と呼ばれる業務に就いている者については、入社前でのキャリアの内容、形成過程、採用の経緯や、入社後の就労状況等、客観的事情に照らして、現在勤務する会社での業務を通じたキャリア形成への期待が客観的に合理的だといえる場合は、配転をする場合に、一定の配慮が求められることはあり得るでしょう。
もう一つは、本件Xのように、社内で特定の部門、業務で、数年にわたって実績を重ね、役職者に登用され、キャリアを重ねてきた経歴を持つ者についてです。
Xについて見ると、同人は、平成20年8月に契約社員として入社して、B2Cセールス部門に配属され、平成22年1月には正社員となります。Ⅹは、同部門でバンド20として雇用されましたが、以来、同部門において、正社員になった平成22年1月にはバンド25に、平成24年3月にはバンド30に、平成26年1月には東京のべニューセールスチームのチームリーダーとしてバンド35(部長相当)となり、37人の部下を擁するようになりました。
このようにⅩは、比較的短期のうちに順調に出世を重ねており、特に、バンド30であった際には、当時の副社長から女性管理職のロールモデルと言われていた程です。
こうしたY社で就労しながらのキャリア形成の過程を踏まえて、高裁判決は、XのY社でのキャリア形成に対する期待は客観的に合理的で、保護されるべきものだと評価したと解されます。
なお、Ⅹは、第1子を出産した際、平成22年8月から同年12月まで育児休業を取得し、職場復帰をしていたことも認定されています。一度、妊娠、出産等により、業務から離れた後に、業績を上げ、管理職に昇格したという経験があったことも、Ⅹが今後も Y社でキャリア形成をしていく期待を抱く大きな根拠となっていたでしょう。
あくまで、本件は、事例判断であり、Y社自体が、積極的に昇進や管理職への登用を重ねたこと等の客観的な経緯に照らし、ⅩがY社でのキャリア形成に対する期待を持つのも当然だといえるような特殊事案であったといえますが、キャリア形成に対する期待を保護、配慮して配置を考えないといけない場合もあるということです。
休業前とは異なる配置をせざるを得ない場合
では、産休や育児休業等から復帰してくる労働者について、キャリア形成への配慮が必要といえる場合で、休業前とは異なる配置をせざるを得ない場合、どうすべきでしょうか。
まず、妊娠、出産、育児休業等を契機としたものではない、それらを理由としたものではないと説明できれば、均等法や育介法上の不利益取扱いの問題にはなりません。
ただし、当該配置が人事権行使によるものである以上は、権利濫用に当たらないか(最判昭61.7.14‐東亜ペイント事件参照)も問題になるため、業務上の必要性と労働者の不利益との比較を中心に、検討が必要です(なお、当該配置の実施について十分説明しておくことは、権利濫用であることを否定する事情になります)。
また、休業前とは異なる配置をすることが、妊娠、出産、育児休業等を契機とし、したがってそれらを「理由とする」場合は、不利益取扱いに当たらないことになる例外の2つ目(均等法9条3項又は育介法10条の趣旨及び目的に実質的に反しないものと認められる特段の事情があること)に該当するかどうかの検討が必要です(考慮要素は「3」・「(2)」を参照)。
それと同時に、例外の1つ目(労働者から当該措置への承諾を得ること、かつ、当該承諾が労働者の自由な意思に基づいてされたたものと認めるに足りる合理的理由が客観的に存在すること)に該当するように、取り組むことも必要です。
具体的には、当該措置の理由、それによって生じる有利な影響、不利な影響の有無や程度といった、労働者が承諾するかどうかを判断する上での判断材料を丁寧に説明することが必要です。 さらに、可能であれば、当該措置がいつまで継続する見込みであるか、その後の配置として想定されていることや、今後、会社でどう働いていけるのか、どういうキャリアパスを描いていけるのか、将来に対するビジョンを提供することが有益でしょう。
これも当該措置を承諾するかどうかを検討する上での材料になるでしょうし、そうした点で不安、不満があるから紛争や訴訟になり得るのですから、それを解消し、紛争を予防することにもなります。
特に、従前のキャリアとは全然違うことをやるとなると、本人の意思を確認した上でやっていくべきであって、早めに説明して理解を求めることが重要です。説明、話し合いの中で、本人の意向を聴取し、可能な範囲で会社の業務上の都合との調整を図っていくことも必要でしょう。
業績連動給の減少について
高裁判決は、配置の変更による不利益性の有無を判断する観点として、一般に基本給や手当等の面において直ちに経済的な不利益を伴わない配置の変更であっても、業務内容面における著しい質の低下や、将来のキャリア形成に影響を及ぼしかねないものは、不利益性があるとの一般論を述べつつも、Xの業績連動給(コミッション、インセンティブ)の減少も、本件措置➊‐2の不利益性を論じる上で拾い上げています。
経済的不利益は、不利益の有無、程度を見る上では分かりやすいものであり、この点が同措置は不利益だとの評価にそれなりに影響したのかもしれません。
もっとも、Xが、本件措置➊‐2がなければ、チームリーダーであれば得られたはずだと主張する金額(コミッションにつき約198万円及びインセンティブにつき510万円。いずれも実際にXが産休前に得ていた平均額を基礎に計算)と、復帰後に実際に得た金額(コミッションにつき約44万円及びインセンティブにつき40万円)との差額が損害だとして、不法行為に基づき損害賠償を求めた点については、高裁は、違法な措置がなければどれだけの業績連動給を得られたかは不明であることを理由に、請求を棄却しています。
業績連動給の金額は、個人の実績等次第であって、特定のポジションにいれば必ず一定額や、一定水準の額が支給されるとは断言できませんから、損害賠償請求を否定した点は妥当だとは解されますが、そのような結論になるにしても、配置の変更によって、毎月支給される基本給や手当の額に変動がなくとも、現実に得られる業績連動給が大きく減ると、均等法9条3項及び育介法10条にいう「不利益性」は肯定されることを、高裁判決は示唆しています。
このような不利益性の有無の判断と、不法行為による損害賠償の対象となる損害の有無の判断とのねじれが妥当なのか、後者が認められないならば、前者も認められないのではないかとの疑問が生じるところではあり、高裁判決における判断の当否は、今後の同種事案の集積も待ちながら、慎重に検討がされる必要があると考えます。
ただし、現状においても、基本給等は減少しないものの、業績連動給が大きく減少することが容易に想定できるという場合は、不利益性が肯定され得ることは意識しておくべきで、不利益取扱いに該当しないために、本人から配置の変更について承諾を得るにあたり、同減少の点についても説明を尽くし、理解を求めることが肝要でしょう。また承諾を得やすくするために、特に大きく減少するという場合には、差額の一部を一定期間に限って補填するといった措置を講じるという工夫も考えられます。
荒川正嗣(弁護士)
KKM法律事務所 弁護士/第一東京弁護士会 労働法制委員会 時間法部会副部会長 経営法曹会議会員/経営者側労働法を得意とし、民事訴訟、労働審判等の各種手続での係争案件、組合問題への対応のほか、労働基準監督署等による行政指導、人事・労務管理全般について助言指導を多数行なっている。
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