ワークライフバランス施策で採用や女性活躍推進に好循環、ワークライフバランスの最新企業事例を紹介

従業員のワークライフバランス充実につながる施策は、自社に合う優秀な人材の獲得や活躍を促すうえでも重要性を増している。では、ワークライフバランスにつながる施策には、どのようなものがあるのだろうか。 各企業が実践するワークライフバランス施策の具体例を紹介したうえで、働く人の仕事と生活の充実における相関関係や、ワークライフバランス施策が企業の採用活動・女性活躍推進にもたらす影響などを日本人材ニュース編集部が解説する。(文:日本人材ニュース編集部

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各企業におけるワークライフバランス施策例

ワークライフバランス向上につながる施策に、絶対的な定義やルールはない。そのため、近年の日本企業では、従業員のニーズや業種に合うさまざまな施策が実施されている。

企業名ワークライフバランス施策
トヨタ自動車・社員の希望に応じて週休3日にできる「勤務制度」を導入
・休んだ日の労働時間は別な勤務日に振り分け、賃金水準は維持
・係長級、一般職、医務職などの約3万8000人が対象
サイバーエージェント・「妊活休暇制度」を導入
・不妊治療を目的に月1回まで休みを取得可能
・決済する管理職や同僚などに休暇理由を知られない仕組み
・専門家のカウンセリングに加えて卵子凍結補助を盛り込んだ制度「マカロンパッケージ」で女性活躍を推進
山陰合同銀行・配偶者の海外赴任への同行時と、大学修学などでスキルや資格習得中の休職を可能とする「キャリア休職制度」を導入
・勤続2年以上の行員などが対象
・休職期間の明確な上限は定めず、本人の希望などを踏まえて決定
伊藤忠商事・残業が当たり前の風土を変革するために「朝型勤務制度」を導入
・多様な働き方へのさらなる支援の必要性を認識し、「朝型フレックスタイム制度」や「在宅勤務制度」も導入
日本郵政グループ・自社の取り組みを共有するために「ワーク・ライフ・バランスガイドブック」を全社員に配布
・グループ社員同士で情報交換できる「ワーク・ライフ・バランス情報サイト」も開設
・育児・介護・病気療養と仕事の両立支援に向けて「育児休業3日有給化」や「介護部分休業」などの制度を整備
・育児休業中の社員などを対象にパートナーやお子さんと一緒に参加できる「仕事と育児の両立セミナー」を開催

ワークライフバランスは女性活躍推進にも影響

近年のビジネス環境では、労働人口の不足や、多様化・複雑化する顧客ニーズに対応ため、女性活躍推進の重要性も増している。こうしたなかでワークライフバランスの向上は、各社における女性活躍推進の鍵になることも多い取り組みだ。

ワークライフバランス施策をきっかけに女性活躍推進の強化を実現した企業に、コクヨがある。

かつての同社内には、多くの従業員のなかに「女性の仕事は、出産・育児のタイミングでペースダウンするもの」という固定概念が存在していた。この固定概念によって生じていたのが、「遅い時間まで子どもを預けていたらかわいそうではないか」「子どもが小さいうちは出張を控えた方がいい」などの上司の思い込みによる一方的な業務調整だった。

本人の意向確認なしで行われた業務調整は、女性活躍を阻む「壁」になっていた。

同社の役員は、こうした課題を共有するなかで、自社の女性活躍を推進するうえではこの「壁」を取り払うことが不可欠だと再認識することになる。そして、制度とともに勝手な思い込みが生じるよう社内の意識も変えていこうという方針のもとで、以下のような改革が進められることになった。

【①リモートワーク勤務時間の柔軟化】
子どものお迎えや夕食の用意をするために、夕方~夜にかけてリモートワークから中抜け可能に

【②看護休暇】
子どもの看護休暇の対象年齢を、幼稚園生(保育園生)~小学6年生修了までに拡大

【③ベビーシッター割引券の配布】
外部の育児サービス利用時に使える割引券の配布

【④オフィス内学童保育スペースの開設】
小学校の長期休み時期に、本社と品川オフィスでオフィス内学童保育スペースの開設。品川オフィスでは「街に開く」のコンセプトに基づき、近隣企業の社員のお子さんも受け入れる。

なお、社員のワークライフバランスを高める過程では、当然のことながらクライアントの要望とのバランスを整えていく必要もある。同社では、上記の改正内容を第一弾と位置づけており、今後もクライアントの理解をいただきながら、社員の働きやすさやワークライフバランス向上を追求していく方向だ。

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「ワーク」と「ライフ」の充実には相関がある

「ワーク(仕事)」の充実と、「ライフ(生活)」の充実には相関がある。

このことを示したのが、マイナビ(東京・千代田、土屋芳明社長)が行った「正社員のワークライフ・インテグレーション調査2024年版(2023年実績) 」だ。この調査では、7割の人が“私生活の充実”と“仕事の充実”に「関係性がある」と回答している。内訳は以下のとおりだ。

【仕事と私生活の充実の関係性】
・「私生活の充実」が「仕事の充実」につながっている 20.4%
・「仕事の充実」が「私生活の充実」につながっている 12.4%
・相互に影響しあっている     37.2%

上記の回答から見ても、仕事と生活の充実には相関があり、どちらか一方でもおろそかになれば毎日の充実感は得られにくくなるといえるだろう。

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ワークライフバランスの採用への影響

近年の採用市場では、いわゆる採用難が加速している。

こうしたなかで自社に合う優秀な人材を獲得するためには、ワークライフバランスの施策や制度を整備したうえでその内容を求人・会社説明会・面接などで紹介し、自社の魅了付けに繋げることも大切だ。

特にデジタル人材では、ここ数年の売り手市場が続いているうえに、ワークライフバランスへのニーズが非常に高まっている。たとえば、リモートワークをはじめとした働き方の自由度や、ソフト/ハード両面の職場環境の充実を求める声が強くなりつつある。

逆にいえば、フルリモート/リモートと出社を組み合わせたハイブリッド型など、自由な働き方への理解がある企業には、デジタル人材などからの人気が集中しやすい傾向がある。

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まとめ

ワークライフバランスは、働く人の毎日を充実させるうえで重要な意味を持つ概念だ。また、企業が整備したワークライフバランス施策は、採用活動の魅了付けや女性活躍推進などに多くの効果をもたらすことが多くなっている。

採用難が続く時代に、優秀なデジタル人材や女性人材の獲得・定着を求めるなら、従業員のワークライフバランス向上につながる施策をぜひとも取り入れてみてほしい。

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