リクルートが運営する転職支援サービス「リクルートエージェント」のデータを分析したところ、50歳以上のITエンジニアの転職が5年で4.3倍になっていることが分かった。（文：日本人材ニュース編集部）
50歳以上のITエンジニア職（SE、インターネット専門職、組込・制御ソフトウエア開発エンジニア）の転職者数は2019年を1とすると2024年は4.3倍に増えている。
リクルートは、転職が増加している背景の一つとして、2018年に経済産業省が提示した「2025年の崖」と呼ばれる問題を挙げている。
稼働開始から21年以上経過する基幹系システムが2025年には6割に上るが、システムを刷新するまではCOBOLなどの従来のプログラミング言語に関するスキルを持つ人材が必要になる。そのため、50歳以上のITエンジニアはニーズにマッチする可能性が高いと分析している。
実際に、リクルートの求職活動支援サービスで2024年にITエンジニア職のレジュメにスキルとして登録されているプログラミング言語を年代ごとの割合で順位付けしたところ、COBOLが上位10言語にランクインしたのは50歳以上のみだった。
また、50歳以上のITエンジニアで、転職時に賃金が1割以上アップした転職者の割合は2019年には12.9％だったのに対し、2024年には20.8％まで増加している。
ITエンジニアの転職を支援しているアイムファクトリーが転職意向のあるITエンジニアに、転職先企業を選ぶ際に重視する内容を聞いたところ、「年収や報酬」（53％）が他の内容を引き離してトップだった。専門スキルを持つ人材は争奪戦となっており、50歳以上のITエンジニアも転職によって賃金アップを実現する人が増えている。
50代は役職定年などで年収が下がったり、変化するビジネス環境に対応できないとリストラの対象にもなりがちだ。
しかし、リクルートの丹野俊彦コンサルタントは、「これまでは年齢が上がると転職には不利になると思われてきましたが、企業が求めるスキルを持っていれば年齢に関係なく転職が決まるケースが生まれており、企業と個人のスキルマッチングがより重要性を増していると言えます」と解説している。
ITエンジニアに限らず、例えば、製造分野専門の人材紹介会社キャリアビリティの雨宮佑揮代表は「企業はミドルからシニア層のスペシャリストやプロフェッショナルの採用を強化しています。長年の経験を持つシニア層は、即戦力として期待されるだけでなく、組織の効率向上や次世代技術者の育成にも貢献できる重要な人材です」と解説する。
また、M&A支援事業・人材紹介事業を行うNEWOLD CAPITALの塚田壮一朗COOは、事業承継などで中堅・中小企業が外部から経営幹部を採用する新たな潮流がシニアの活躍の場を広げると指摘する。
人材不足が慢性化する中で、豊富な経験やスキルを持つミドル・シニアを必要とする企業は少なくない。
「50歳以上のITエンジニアの転職動向について」の詳細はこちら
https://www.recruit.co.jp/newsroom/pressrelease/2025/0228_15520.html
