【インテリジェンス】顧客満足・従業員満足を高め、支持顧客の創造を目指す

総合人材サービス大手のインテリジェンスは、いま、「支持顧客の創造」をテーマに顧客満足度・従業員満足度の向上に取り組んでいる。その背景には世界金融危機で気づかされた、それまでの企業体質への反省があった。その活動の指揮を取る常務執行役員の峯尾太郎氏に話を聞いた。

インテリジェンス

インテリジェンス(現パーソルキャリア
峯尾 太郎 常務執行役員キャリアディビジョン管掌

1994年インテリジェンスに入社。関連会社の責任者を歴任し、2010年4月に同社常務執行役員に就任。その他に3つの関連会社にて代表取締役、取締役などを兼任する。

現在の事業体制とサービスの特徴を教えてください。

当社のキャリア領域事業は、「DODA」ブランドを前面に立てた求人メディア、人材紹介のほかに、再就職支援、エグゼクティブサーチなどの人材にかかわるあらゆる領域で幅広くサービスを展開しています。お客様である企業も全産業にわたり、数人の小規模企業から数万人のグローバル企業まで全方位でサービスを提供しています。

そうしたポジションにある人材会社として、企業の人事・組織ニーズを踏まえて強化する領域を定めながらサービスの強化を続けています。 経営幹部層の採用を支援するグループ会社のインテリジェンスエグゼクティブサーチは、2010年に社名を以前の株式会社サイト・フライトから改めるとともにインテリジェンスとの連携をより強化する体制変更を行いました。

昨年スタートしたインテリジェンスグローバルサーチは、外国人コンサルタントを中心に英語をはじめとする多言語を扱うグローバルに展開する企業の採用支援サービスで、今後、ニーズの拡大が見込まれる分野です。

顧客満足(CS)と従業員満足(ES)を重視した経営革新を進めているそうですね。

1989年の創業以来、事業変革を繰り返しながらお客様が求めるサービスの追求と提供に取り組んできました。その結果、サービスのラインナップとともに独自の登録人材データベースを拡充させ、人材の提供力を強力に高めてきたのです。

02年あたりから07年にかけては毎年30%前後と高い伸び率で事業の拡大が続いたのですが、その時期は人材の需要が強いがために、時にはお客様についてあまり深く理解していなくても成果を出せてしまうこともありました。そういう状況に対してコンサルタントの力量や組織力は弱まる一方ではないかという問題意識を強く感じていたのですが、お客様の採用ニーズも引き続き強かったので構造変革にメスを入れることもできませんでした。そんな時に世界金融危機が起きたというわけです。

世界金融危機で企業の採用がストップすると人材サービス業界は軒並み仕事が“蒸発”し、多くの小規模事業者が淘汰され、上位の企業も業績が短期間で半減しました。まさに冷水を浴びせられた格好です。「私たちは間違った拡大の仕方をしていたのではないか」と目が覚める思いでした。

そのような状況になって、極めて当たり前ですが、お客様に必要とされる採用とは採用数を満たすだけではなくなったのだと気づかされました。単に採用数を満たすだけでは、景気がダウンすれば真っ先に取り引きをストップされてしまうのです。もっと本質的に価値あるサービスを提供できる力を高めなければ、私たちの存在価値はなくなるという強烈な危機意識を持ちました。

コンサルタントの仕事のあり方を根本的に見直す契機になったわけですね。

世界金融危機までは半ば自動的にマッチングを成立させてしまえる仕組みや環境ができ上がっていたために、コンサルタントはシステムを操作するだけのオペレーターに甘んじていたのではないかということです。

コンサルタント自身も、そのような仕事が面白いはずもなく、成長の実感もあまりありません。お客様のことを深く理解し、採用に影響を与える要素を特定するとともにお客様固有の解決策を提案する、そういうレベルの仕事をしなければならないと猛省しました。

私たちは業界のリーダー企業としてこの事業の市場創造をし続けたいと考えています。そのためには、お客様に選ばれる存在であり続ける必要があります。そして、お客様に選ばれるためには、一人ひとりの社員がお客様に満足してもらえる良い仕事をしていかなければなりません。

私たちは製造業のように顧客に製品で価値提供できるわけではなく、メディアや人材紹介という人を介して顧客に価値提供する“ザ・ピープルビジネス”です。そのサービスのレベルを上げるには何が必要なのか。それは、コンサルタントがこの仕事にプライドを持てることです。待遇や働く環境も重要ですが、それ以上に良い仕事をしているという誇りを実感し、成果を上げてお客様に評価していただく。それがまた誇りの実感につながる。こうしたサイクルが循環することが極めて重要ではないかということです。

インテリジェンス

CSとESを高めるために、どのような施策を講じたのですか。

CSとESは一つのサイクルでつながっているので、どこからでもボタンを押してスタートすればいいのですが、まず「お客様から支持される」ということを掲げました。そこでコンサルタントや管理職の人事考課に「顧客満足指標」を加えたのです。それまではパフォーマンスは賞与に、ビジネスパーソンとしての力量は基本給に反映させる仕組みでしたが、パフォーマンスにおいて顧客満足の度合いを重くしたのです。

つまり、いくら業績を上げても顧客満足度が低ければ評価は下がります。逆に、業績は低くても顧客満足度が高ければ評価は上がるのです。顧客満足度の測定はアンケート調査で行っていますが、厳密に行うために従来のようにコンサルタントが調査票の配布や回収を行うことはせず、担当部門が配布と回収を行うことで完全に切り離しています。

次に、社員の定着率向上を図りました。コンサルタントの退職が顧客不満足と業績低下に直結していたからです。退職率が高い主な要因は長時間労働でした。そこで、夜22時には社内ネットワークの遮断や照明を自動的に落とし、また再度照明を戻せないようにしたのです。

これまでは労働時間と業績の連動性神話があってメスが入りづらかったのですが、施策に一貫性を持たせるために一気に実施しました。その他複数の施策も同時進行させた結果、従業員満足度が高まり、以前は18%程度だった退職率が6%程度にまで大幅に改善しました。

未経験者が一人前のコンサルタントに育つには通常1年以上かかりますから、従業員の退職を防ぐことが直接的に業績の向上につながりました。また、退職率の改善によってコンサルタントが長期にわたって同じお客様を担当することができるようになり、クレームも減りましたし、効率的にお客様の採用を支援できる体制になりました。

コンサルタントの育成では、顧客をよく知るというスキルの向上はトレーニングあるのみだと思っています。毎年70人程度のコンサルタントを採用していますが業界未経験者がほとんどです。それなりの素地を持った人材ばかりなので、どうすれば良いサービスができるかを理解すれば早いのですが、気づきを得るまでが大変ですので研修やOJTで懸命に努力しているところです。

CSとESを高めた結果、業績はどのように変わりましたか。また、今後の方針を教えて下さい。

業績偏重になりがちだった経営からCS重視の経営に変わったことで、売上も順調に回復して昨年度決算はキャリア領域事業では前年比120%程度となりそうです。また、不況になっても人員削減を行わなくてもすむように高い収益性を重視しており、40%程度の利益率を確保していきたいと考えています。

人員削減は社員の会社への信頼感を破壊しますので人材にかかわるサービス会社としては、そうならないような経営体質にしたいと思っています。来期も新たなチャレンジが必要ですが、さらに支持顧客を創造することで今期以上の業容拡大を目指したいと考えています。

お客様は激しい競争環境の中で迅速な変化への対応スピードを求められており、高い緊張感の中で経営を進めています。人と組織を通じた経営支援をするからには、お客様以上に当社がグレードアップし、より一層お客様の満足を向上させるコンサルタント、組織へと高めていく必要があると考えています。

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