日本人材ニュースは、企業の人事採用担当者を対象に、政府が要請している新卒採用活動についてアンケート調査を行い、結果を取りまとめた。それによると、約4割の企業が入社3年以内の経験者についても新卒採用へのエントリーを受け付ける方針であることが明らかになった。調査は、日系・外資系企業200社の人事採用担当者を対象に実施し、72社(有効回答率36%)から回答を得た。
就業経験なしの既卒者は、6割超の企業がエントリー受付
2011年3月に大学を卒業した学生の就職率(2011年4月1日時点、厚生労働省調べ)は、前年同期比0.7ポイント減の91.1%。過去最悪だった2000年の水準と並ぶ厳しい結果となった。
厳しい就職活動の状況を受けて、政府は、「大学卒業後3年以内の既卒者に対する新卒枠での応募受付」などを企業の努力義務とし、経団連や業界団体等にも採用拡大を要請しているが、それぞれの企業はどのような採用方針で臨むのだろうか。
企業の採用担当者に、「大卒後3年以内の既卒者(就業経験なし)」の新卒採用へのエントリーを受け付けるかを聞いたところ、63%の企業が「受け付ける」と回答した。「受け付けない」企業は12%、「未定」の企業は25%だった。
「以前から既卒者のエントリーは受け付けており、入社実績もある」(素材メーカー)のように、すでに対応している企業もあり、業界団体や同業他社の動向も踏まえて、「未定」の企業の中からも門戸を開く企業は増えそうだ。
一方で、企業の採用支援を行う人材会社の担当者からは、「採用枠が広がるわけではないので就職活動の厳しさは変わらないだろう。学生が『3年間は猶予がある』と勘違いしなければよいのだが」と、政府の対策が就職環境の改善につながる可能性については否定的な意見も多い。
「受け付けない」と回答した企業の採用担当者は、「現在でもエントリーが殺到して困っている。さらに採用業務が煩雑になり、負担が増すことは避けたい」(情報通信業)と、採用活動の効率が低下することを危惧する声などが挙がった。
入社3年以内の経験者にも新卒の門戸を開く
政府が要請している「大卒後3年以内」を基準として若手人材の採用を考える場合、中途採用市場において“第二新卒”に該当する「入社3年以内の経験者」にも新卒採用へのエントリーを認めることも考えられる。
そこで、「入社3年以内の経験者」の新卒採用へのエントリーを受け付けるかを採用担当者に聞いたところ、「受け付ける」と回答した企業が4割近く(38%)に上った。「受け付けない」企業は33%、「未定」の企業は29%となっている。
就業経験がない既卒者を「受け付ける」企業のうち、入社3年以内の経験者も「受け付ける」企業は約半数(53%)となっている。
大手サービス業の採用担当者は、「“働く覚悟”に欠ける学生が増え、精神面の弱さも気になる。忙しい現場からは、若手であっても、専門性が高く、より即戦力に近い人材が求められている。優秀な若手人材を継続的に確保していくためには、従来の新卒一括採用だけでなく、他社を経験した第二新卒、専門性を身に付けた人材などもターゲットになるので、これまで以上に柔軟に対応していくことが必要になるのではないか」と話している。
第二新卒を新卒として受け付けることに限らず、通年採用やグローバル採用の進展などによって、研修や人事管理の対応で人事担当者の負担が増すことが予想されるが、柔軟な採用のあり方と若手人材の戦力化の有効性については検討してみる必要がありそうだ。
第二新卒市場の低調続く
「大学生のレベルが低下している」という意見があることに対して、「新卒採用枠を減らして、第二新卒の採用枠を拡大することを検討しているか」を採用担当者に聞いたところ、「検討している」と回答した企業は、4.3%にとどまった。
「優秀な人材がいれば第二新卒で採用するが、『新卒採用枠を減らして』という考えはない」「採用基準は下げておらず、入社する人材のレベルは維持している」という意見が多かった。
若手人材の中途採用の動向として、2011年度の第二新卒の採用予定を聞いたところ、「採用予定がある」企業は54%。そのうち、約7割の企業の採用予定数は「横ばい」となっている。また、「減少」も2割強に上り、昨年までの第二新卒市場の状況を最悪期とすると、依然として低調に推移する見込みだ。
採用人数が多い大手企業では全体的に採用意欲が低い傾向が出ており、人材不足に悩む中堅・中小企業にとっては、優秀な若手人材を獲得するチャンスと考えてもよさそうだ。