経営幹部や幹部候補に女性を積極採用する企業が増える中で、コンサルティング会社の出身者であるポストコンサルの女性が候補者として注目されているという。ポストコンサル採用に深い知見をもつ人材紹介会社コンコードエグゼクティブグループの渡辺秀和社長に、企業の女性採用動向やポストコンサルが採用される理由などを解説してもらった。
コンコードエグゼクティブグループ
渡辺 秀和 代表取締役社長 CEO
一橋大学商学部卒。三和総合研究所 戦略コンサルティング部門を経て、2008年にコンコードエグゼクティブグループを設立し、代表取締役社長CEOに就任。戦略コンサルタント、投資銀行・ファンド、外資系エグゼクティブ、起業家などへ1000人を超えるビジネスリーダーの転身を支援。第1回「日本ヘッドハンター大賞」コンサルティング部門で初代MVPを受賞。東京大学×コンコード「未来をつくるキャリアの授業」コースディレクター。著書『ビジネスエリートへのキャリア戦略』(ダイヤモンド社)、『未来をつくるキャリアの授業』(日経新聞出版社)。
経営幹部に女性を採用する企業が急増する傾向
近年、経営幹部や幹部候補のポジションに女性を積極採用する企業が増えてきています。特に、ダイバーシティを推進するグローバルカンパニーの日本法人では、その傾向が目立ちます。
経営幹部に女性が少ない場合や女性社員の比率が低い場合、海外の本社から女性採用に力を入れるよう強く求められるのです。そのため、外資系の事業会社、金融機関、コンサルティング会社では優秀な女性の確保が課題となっており、若手からベテランまで様々なポジションで女性の採用を行っています。
また、女性を対象とした商品やサービスを提供する企業においても、経営幹部や幹部候補に女性を採用する動きが広がっています。商品開発や販売促進などを推進する上で、女性の感性を活かすということが主たるな理由です。即戦力の女性は特に重宝されます。プロフェッショナルとしての経験とスキルを持つ女性であれば、育児や介護などで就業形態に制約があっても、積極的に採用される傾向があります。
優秀な女性を採用したい企業が注目する女性のポストコンサル
事業会社が女性採用に力を入れる中で注目を集めているのが、女性のポストコンサルです。コンサルティング会社の出身者であるポストコンサルは、若い時期から企業の経営課題を解決するプロジェクト経験を重ねており、自らの頭で考えて問題を解決する力が鍛えられています。
ハードワークにも耐えるメンタル面のタフさも備え、語学に優れた人材や海外事業の経験がある人材が多いことも特徴的です。したがって、女性のポストコンサルは、優秀な女性を採用したい企業のニーズに強く合致しています。
実際に女性のポストコンサルを経営幹部や幹部候補に採用している企業は、仕事をスピーディーに進める能力やストレス耐性などを高く評価しています。また、仕事ぶりを間近に見ている女性社員たちを活性化させ、社内のロールモデルとして活躍しているという声も多数挙がっています。
女性のポストコンサルは、業績達成へのこだわりや仕事を通じたキャリア形成をしっかりと考えており、結婚や出産後も働き続けて組織に貢献したいという強い意欲を持っています。そのため、社内で次の女性ロールモデルを育てるという観点からも、多くの企業が女性のポストコンサル採用に注目しています。
ロールモデルの存在が女性採用の成功を左右
女性ロールモデルの存在は、企業にとって女性採用の成功を左右する大きな要素となっています。実際、女性が企業を選択する際に、ロールモデルとのコミュニケーションの有無が決定的な意思決定の材料となることも少なくありません。
特に、ワークライフバランスの支援制度について、社内の女性がどのように活用しているか具体的な事例を知りたいという強いニーズがあります。女性にとって重要な支援制度を実際に活用できるか否かを確かめるため、ロールモデルとなる女性からのリアルな体験談を重視しているのです。
優秀な女性の採用に成功している企業は、ロールモデルとして活躍する女性からの対外コミュニケーションを上手に活用しています。女性向けのキャリアセミナーを定期的に開催して女性の経営幹部に体験談を語ってもらったり、選考プロセスで女性社員との面談機会を設定したりと、ロールモデルを対外的に発信していく工夫をしています。
これによって、人材市場でのブランディングに成功し、優秀な女性人材が集まってくるという好循環が生まれます。そのサイクルを牽引するロールモデルとして、女性ポストコンサルの姿が目立つようになりました。
女性ポストコンサルの活躍事例
優秀な女性を採用するには魅力のある人事施策が必要
女性のポストコンサルをはじめ、優秀な女性を採用するにはどうすればよいかという相談も増えています。人材獲得の競争が激しい中で、優秀な女性を引き付けて定着させるためには魅力のある人事施策が重要になると言えるでしょう。
ある大手外資系企業では、業務時間を7割に減らして勤務できるという制度を用意しています。制度を利用する期間は減俸となりますが、成果主義が徹底されているため昇進には影響がありません。成長意欲の高い優秀な女性にとっては非常に魅力的な制度であり、優秀な人材を多く引き付けています。
さらに、時短勤務を前提とした入社条件を用意し、勤務時間に制約のある女性の即戦力人材を狙った採用を行う企業もあります。グローバルカンパニーと同様に、日本の企業でもダイバーシティの加速が予想されますので、女性の経営幹部の確保や女性社員の比率を高めることが人材マネジメントの課題となります。
育児や介護に配慮した制度が導入されていますが、利用すると昇進に影響すると考えている女性社員が多いのが実態です。業績評価や昇進が業務時間ではなく成果で決まるという意識改革を含め、優秀な女性を引き付ける魅力的な人事制度の構築と運用が望まれます。