キーンバウム ジャパン
鈴木 悦司 代表取締役社長
【PROFILE】慶応大学卒業後、TDK入社。国内勤務後、ドイツ・デュッセルドルフに赴任し、1989年まで市販マーケティングを担当。TDK Sweden代表、TDK Electronics Europe社代表等を歴任した後、2001年、Kienbaum Executive Consultantsに転じ、日系企業グループの設立に携わる。03年から14年まで同社パートナー。06年にKienbaum Japanを設立し、社長就任。海外日系企業でのマネジメント経験を活かし、グローバル人材の採用、人事マネジメントのコンサルタント業務に携わる。人事専門誌への寄稿・講演多数。
技術イノベーションが産業構造を変えつつある分野ではその変化と同時進行して人材の移動、採用が活発となっています。現時点での特徴的な分野としてE-mobility、Industry 4.0の進展があげられるでしょう。
E-mobilityでは日本メーカーが比較的優位な素材、部品、設備メーカーが海外へ進出、それらの素材、部品を応用したアプリケーションをJOEMsに売り込む海外メーカーの動きがあります。この動きに伴い、外資系企業では経営幹部、エンジニアの採用が活発になっています。一方、日系企業では「英語で仕事ができる」人材が特に中小企業で求められています。
このような人の動きはIndustry 4.0周辺でも起こっており、今後は自動運転技術周辺で同様の動きが起こると思われます。比較的優位な日本のセンサー、モーションコントロールに関わる企業の海外進出、アルゴリズム、ソフトで優位な欧米企業の日本進出が活発化すると思われ、これらの動きに関連して経営幹部、エンジニアの採用が活発になることが予想されます。
当社は外資系企業との関係が深いというバイアスがあるとはいえ、外国人エンジニア、海外駐在を経験したシニアマネジメントからの相談を多く受けます。外国人エンジニアではやはり日本語の習熟度がボトルネックになりセールスエンジニア、アプリケーションエンジニアなど日本の顧客との接点が多い職務では不利となります。
日本人経営幹部の採用では英語が操れるだけではなく、いかに英語を媒体としてコンテンツを伝達できるかが採用の成否の鍵となります。なぜなら、多くの場合、マネジメントは本社、日本支社、顧客との結節点の役割が最も重要な職務の一つだからです。
今や、外国人技術者抜きには技術は語れません。また、(多くの産業で)国内市場でこれまでのような成長を期待できない現状では、海外への展開は不可避となります。グローバリゼーションの中、それに対応できる企業文化の変革、人事制度の整備が優秀な人材の採用の鍵ではないでしょうか。