バイリンガル人材の採用に頭を悩ませる採用責任者が増えている。外資系企業の増加、日系企業の海外進出の加速で採用が過熱し、バイリンガル人材の不足は深刻だ。(文:日本人材ニュース編集部)
- 円安背景に外資系企業数が急増、2007年の約2倍の水準に
- 海外に目を向け始めた日系企業の課題は、海外ビジネスを担う人材
- 新卒でもバイリンガルの採用ニーズが拡大
- 海外トップ大の高度外国人や外国人留学生の採用に踏み切る企業も
- 人材不足で社内におけるバイリンガル育成が急務に
- 対日直接投資倍増でバイリンガル不足は明白、採用と育成で人材確保へ
- 専門家に聞く「バイリンガル人材確保の課題」
- エンプラス 雲下 加奈 取締役(現、代表取締役社長)
- リクルートキャリア(現リクルート) 川口 かおり 中途事業本部マネジャー
- ディスコ 大掛 勲 採用広報カンパニー グループマネージャー
- ボイデン ジャパン 三宅 雄二郎 代表取締役会長兼社長・CEO
- ダイジョブ・グローバルリクルーティング 篠原 裕二 代表取締役社長
- EFイングリッシュタウン 朴 景珍 アジア地域統括ディレクター
- オーストラリア大使館 レオニー・モルドゥーン 公使(商務)
- エム・アール・アイ・ジャパン 兒玉 彰 代表取締役社長
- ロバートハーフジャパン アダム・ジョンストン マネージングディレクター
- i6コンサルティンググループ 佐藤 竜司 代表取締役
- グローバル・リサーチ 尾㟢 将範 代表取締役・COO
- リンク アンド モチベーション 染谷 剛史 執行役
円安背景に外資系企業数が急増、2007年の約2倍の水準に
円安を背景にM&Aで日本に進出した欧米系メーカー。体制強化のために昨年からCFOをはじめ品質管理責任者など社員の中途採用を積極的に進めている。しかし、人材採用は思うようにいっていない。
日本法人の責任者は、希望するスペックの人材が半年経っても確保できないと嘆く。同社の人材採用は、新卒を含めすべてのポジションに語学力を求める。さらに経営幹部層に要求するスペックは高い。
「CFOであれば、日本の会計に精通していることはもちろんのこと、国際会計にも通じていなければならない。さらに、日本法人の財務を本社で報告し、必要に応じて資金調達などを求めることもある。当然、そうした説明と交渉する力が求められるため語学力は必須だ」と話す。
スタッフの採用についても、「本社の技術者との技術情報の交換など、スタッフでも英語力が求められている」と語学力の必要性を強調する。さらに英語ができない社員を対象に語学研修を施し、海外出張や本社への派遣もTOEICスコアの向上を要件にしているという。
ヘッドハンティング会社ボイデンジャパンの三宅雄二郎CEOも同様に外資系エグゼクティブの条件を次のように説明する。
「本社との連携が頻繁なため英語が話せるバイリンガルであることは必須だ。さらに交渉の過程ではひざ詰めで意思疎通を図る必要もある。日本人の謙虚さとは違うマインドセットが求められる」
日本における外資系企業の数は2000年代前半は1700社前後で推移していたが、2007年の1583社を底に2008年に2058社、2009年に2795社と急増し、2012年の3209社まで5年連続で増加した。2013年は前年比0.6%減と6年ぶりの減少となったが3189社と高水準だ(帝国データバンク調査)。
特に08年はリーマン・ショックの影響を受けたにもかかわらず、外資系企業の総数が30%以上増加した。前年までの円安傾向で海外企業による日本への投資環境が改善し、また中国企業による日本市場への参入が大きく伸びたことが要因だ。
その結果、2013年時点の国内外資系企業数は2007年の約2倍となり、バイリンガル人材の採用は一層困難になっている。
海外に目を向け始めた日系企業の課題は、海外ビジネスを担う人材
さらに海外に目を向け始めた日系企業もバイリンガルの採用に本格的に動き始めている。
日本の製造業の海外売上高比率は2002年度に27.9%だったものが、2013年度(実績見込み)には37.3%と約10ポイント上昇。海外生産比率も2002年度の26.0%から、2013年度には34.6%にまで高まる見込みだ(国際協力銀行調べ)。 そのため、海外との取り引きにかかわる人材の確保に各社とも真剣に取り組んでおり、争奪戦ともいえる状況が続いている。
輸出や海外進出を展開する企業の課題は、「海外ビジネスを担う人材」が大手企業では52.6%と最も高く、中小企業でも38.4%と人材の確保が最大の関心事となっている。特に現地化を進める大企業では「幹部候補人材の採用難」(47.0%)が約半数を占めている(JETRO調査)。
日系企業におけるバイリンガル人材の採用の難しさについて、リクルートキャリア(現リクルート)の川口かおりマネジャーは次のように話す。
「リーマン・ショック後、日系企業では、海外進出を加速するための語学力を重視した採用が増えた。しかし、海外事業を推進するセクションは新事業でもあり担当役員と入社した社員の二人という体制も多く、担当役員が忙しい場合、新人教育を行なう余裕もなかったためにうまく機能しなかった」。
こうした反省を踏まえ、その後の採用では語学力以上に進出地域の情勢や商材に詳しい即戦力人材を求めるようになってきているという。
新卒でもバイリンガルの採用ニーズが拡大
こうした中途採用におけるバイリンガルの人材採用の苦戦は、新卒採用にも影響を及ぼしている。
人材サービス会社のディスコが日本人留学生のために米国で毎年開催しているボストンキャリアフォーラムは、昨年、209社の出展企業を集め過去最高の出展数となった。
参加企業の業種や規模も、これまで中心だった大手企業やメーカー、外資系企業からサービス・販売会社、ベンチャー企業へと拡大している。 バイリンガルに対する企業側のニーズが拡大する一方で、バイリンガルの数は増えていない。同フォーラムに参加する日本人留学生数はここ数年1万人前後で変化はない。
文部科学省の日本人海外留学状況調査によれば、日本から海外への留学者数は2004年の8万2945人をピークに7期連続で減少し、2011年には5万7501人にまで落ち込んでいる。
海外トップ大の高度外国人や外国人留学生の採用に踏み切る企業も
日本人バイリンガルの採用が困難になる中、海外トップ大の高度外国人や外国人留学生の採用に踏み切る企業も増えている。
採用の理由は、「優秀な人材を確保するため」「海外の取引先に関する業務を行なうため」「自社(またはグループ)の海外法人に対する業務を行なうため」「外国人としての感性・国際感覚等の強みを発揮してもらうため」「日本社員への影響力も含めた社内活性化のため」などだ。
一企業あたりの平均採用数は2.76人、企業規模が大きくなるに従って採用数も増加しているのだが、1000人以上規模の大手企業でも平均採用数は3.91人と5人未満にとどまっている(ディスコ調査)。
採用企業では、日系企業で外国人が活躍することができるのか、外国人が活躍できる組織風土をつくることができるのか、様子見の状態が続いている。
外国人を採用する企業の増加に伴い採用と同時に定着のための入社後フォローや異文化対応研修の相談も増えている。外国人の新卒採用支援を手掛けるリンクアンドモチベーションの染谷剛史執行役は、外国人採用の課題を次のように指摘する。
「採用した人材の活躍が見られず、海外での新卒採用から撤退する企業もある。外国人の本社採用は役割期待を明確にした職種での採用や配置、活躍までのキャリア形成を考えた仕組みを構築する必要がある」
また、外国人の受け入れを支援するエンプラスの雲下加奈取締役は、「高いコストをかけて海外で採用した社員が生活面で不満を持ち、入社後数カ月で辞めてしまうケースも少なくない。職場の受け入れ態勢だけでなく、住宅の手配など生活面でのサポートも欠かせない」と訴える。
人材不足で社内におけるバイリンガル育成が急務に
業種や企業規模を問わず企業活動のグローバル化が進む中、海外赴任や出張のみならず、国内でも英語によるミーティングやプレゼンテーションの機会はますます増えてくる。
楽天のように英語公用語化にまで踏み込む企業はまだ少ないものの、従業員の英語力向上が多くの企業で課題となっていることは間違いない。そのため社内におけるバイリンガル育成も急務だ。
英語力を測るTOEICテストの2013年の受験者数は236万人と過去最高を記録した。テストを運営する国際ビジネスコミュニケーション協会の林江美子マネジャーは、「大学や企業の団体受験が年々増加している。特に学生の就職活動を意識して、英語力向上を後押しする大学が多くなった」と話す。
同協会が実施した上場企業調査によると、新入社員の採用試験で何らかの英語テストを実施している企業は28.5%に上っている。
大手企業を中心にオンライン語学研修サービスを提供するEFイングリッシュタウンの朴景珍アジア地域統括ディレクターも、「国内市場の縮小に伴い海外に出て行かざるを得ない日本の中小企業からの相談も多く、短期間で語学力を高めたいというニーズが強まっている」と企業の動向を解説する。
対日直接投資倍増でバイリンガル不足は明白、採用と育成で人材確保へ
アベノミクスでは、戦略特区の優遇措置などの政策で2020年までに現在の18兆円から35兆円へ対日直接投資倍増を打ち出しており、外資系企業を積極的に呼び込む考えだ。
また、EPA・FTAやTPPなどによる規制緩和で国内企業の輸出や海外からの輸入も増加するとみられ、あらゆる産業で国際化が進行すればバイリンガル人材がさらに不足することは明白だ。
しかし、語学力だけを重視した採用では事業に貢献できる即戦力人材を確保することはできない。i6コンサルティンググループの佐藤竜司社長は次のように指摘する。
「語学力重視の無理な採用は定着率を低下させ、採用活動の循環が悪化することでさらに採用が難しくなる。マネジャークラスとスタッフでは必要な語学力は違う。採用する職種やポジションで何を重視するのかを見極め、必要に応じて社内の人材や採用したスタッフをバイリンガルに育成していくことが人材確保の早道だ」
バイリンガルが今以上に不足する時代が訪れようとしている。人事担当者は社内の人材リソースを見直して、市場や商材を熟知している社内スタッフを中長期で語学力のある人材に育成していくことを人材採用と両にらみで考える必要がある。
専門家に聞く「バイリンガル人材確保の課題」
外国人社員の受け入れは生活面のサポートが欠かせない
エンプラス 雲下 加奈 取締役(現、代表取締役社長)
外国人社員の受け入れは、採用に加え、期間限定のプロジェクトや研修などでの来日もあり、受け入れ期間や社員の国籍に応じて、人事担当者だけで十分な対応をするには限界があるだろう。
外国人が自力で住宅を借りたり、公的な手続きを行うのは非常に難しく、企業のサポートが行き届かないために、高いコストを掛けて海外で採用した社員が生活面で不満を持ち、入社後数カ月で辞めてしまったというケースも少なくない。
一方、海外事業の拡大を目指す企業では赴任や出張が増え、行き先が多様化している。現地法人立ち上げで幹部が一人で赴任する場合もあり、専門家の支援が求められている。育成目的で若手を赴任させたいと考える企業もあるが、国によってはビザの取得にノウハウが必要だ。
候補者には進出地域のマーケットや商材への理解が求められる
リクルートキャリア(現リクルート) 川口 かおり 中途事業本部マネジャー
昨年から、特に日系企業におけるバイリンガルニーズが高まっている。食品メーカー、アパレル、広告代理店、販売・流通なども積極的な海外展開を進めているためだ。進出先も中国、東南アジアから、インド、アフリカと開拓する市場を拡大している。
海外展開で大切なことは、新しいビジネスにチャレンジすることができ、ゼロからビジネスをつくり上げることができる行動力がある人材の採用だ。そのため、語学力だけではなく進出地域のマーケットや商材への理解が求められている。
数年前までは語学力だけを重視して人材を採用する時期があったが、海外進出セクションは少数で忙しく、語学力だけの新人を採用しても十分な教育ができないため機能しなかった。その時の反省があり、即戦力人材が求められるようになっている。
語学力だけでは通用しない、「自分で考え行動する能力」が必要
ディスコ 大掛 勲 採用広報カンパニー グループマネージャー
国内マーケットの縮小を契機に企業は海外マーケットへの進出を拡大させている。そしてダイバーシティを強化する中でグローバル人材の採用が増加したためにバイリンガル人材に注目が集まった。
多くは日本から海外へ留学した人材や海外から日本に来ている留学生が対象だったが、IT、エンジニア、研究開発職などのニッチな領域では、海外トップ大学の高度外国人を採用する企業も現れた。
しかし、入社後多くの企業で職場でのコミュニケーションや日本企業の文化の違いといった壁に突き当たることになり、採用・育成が再び課題となっている。
バイリンガルの採用は、外国人であっても日本人であっても海外との橋渡しをする語学能力だけでは通用しない。「自分で考え行動する能力」が求められている。
外国人と粘り強く議論する精神力、体力が必要
ボイデン ジャパン 三宅 雄二郎 代表取締役会長兼社長・CEO
外資系のエグゼクティブ採用では、本社との連携が頻繁なため英語が話せるバイリンガルであることが必須だ。ただし、ネイティブというよりは文化の違いを理解して外国人と粘り強く議論する精神力や体力などストレス耐性があることが重要だ。
さらに交渉の過程ではひざ詰めで意思疎通を図る必要もある。英語が苦手でもハートで自分の持っている考え方を主張しなければならない。日本人の謙虚さとは違うマインドセットが求められる。
また、日本の市場や販路、人脈といったドメスティックな事情にも通じていないと日本法人の幹部は務まらない。日系企業の海外赴任か海外関連セクションで5~10年の実績があり、その後外資系企業で活躍して英語で相手を説得できるような経験を積んだ人材が外資系の経営幹部には理想的だ。
現地のビジネス事情や経験を優先した採用へと見直し進む
ダイジョブ・グローバルリクルーティング 篠原 裕二 代表取締役社長
アベノミクスが始まり、昨年8月頃からグローバルな人材ニーズが増加している。特に日系企業は二桁以上の伸びになっている。海外へ本格的に進出する企業が増加していることが要因だ。
企業に求められている人材は、日本人で高いレベルのビジネススキルと語学力のある人材だが、そのようなスペックの人材は限られた極少数であるため各社とも採用には苦労している状況だ。そうした中で採用で優先すべきスペックを見直す動きが進んでいる。
特に海外への進出を加速している企業では、現地のビジネス事情が分かる経験やスキルを優先しており、語学力はビジネスで必要なレベル、場合によっては日常会話レベルでもよいと考える企業も出てきている。また、外資系はインターンシップの活用に積極的だ。
短期間で語学力を高めたいというニーズが強まっている
EFイングリッシュタウン 朴 景珍 アジア地域統括ディレクター
従業員の語学力に対して日本企業の人事担当者が抱える共通の課題は、ビジネス現場における英語でのコミュニケーション力の弱さにあるようだ。ペーパーテストの点数が高いにもかかわらず、ほとんど会話ができない従業員がいるという話もよく聞く。
当社は実践的なコミュニケーション力の向上を支援するため、国籍の異なる受講者同士のオンライングループレッスンや習熟レベルに応じた16段階の学習プログラムを用意している。オンラインの語学研修には世界中の拠点において、いつでも従業員のペースで学ぶことができるというメリットがある。
また最近は、国内市場の縮小に伴い海外に出て行かざるを得ない日本の中小企業からの相談も多く、短期間で語学力を高めたいというニーズが強まっている。
現地生活を通した異文化体験研修の受け入れが増えている
オーストラリア大使館 レオニー・モルドゥーン 公使(商務)
オーストラリア政府は日本企業の研修の受け入れに力を入れている。企業からは語学研修の内容に加え、現地生活を通して異文化を体験する機会としても評価されている。治安の良さや日本との時差が少ない点もオーストラリアの特長だ。
研修の対象者は企業によって様々で、例えば西日本シティ銀行はリーダー候補者を派遣し、将来必要となる語学力のレベルを理解させることを狙いとしている。海外で事業を展開していたり、国際人材の育成に注力している取引先と一緒に研修を行っている点もユニークだ。
また、英語での会議やプレゼンテーションの機会が増えている中堅エンジニアを派遣している大手IT企業もある。語学力の高い新卒が多くなっている企業からは、現地企業でインターンを行えないかという相談を受けている。
現地法人のマネジメントができる外国人を探す企業が増加
エム・アール・アイ・ジャパン 兒玉 彰 代表取締役社長
日本人、外国人を問わずグローバル人材のニーズは相変わらず高いが、幹部クラスは結果として外国人を採用する企業が多くなっている。海外でM&Aを行った日本企業が、日本人幹部を現地に送り込んだもののシナジーが生まれず、マネジメントができる外国人を探し直すケースも目立つ。
アジアでは中国以外の地域への進出に伴う採用が本格化している。さらに米国での採用が出てきている。米国事業を縮小していた企業の再進出、企業規模を問わず優れた製品・サービスを持つ企業が新規に進出しているが、外国人へのビザ発給の条件が厳しいため米国人幹部を探している。
外国人幹部が成果を上げている例を見ると、日本に対する理解が深いという点もあり、日本企業での勤務経験を持つ人材であることが多い。
スペシャリストは国際的なビジネスチャンスが多い職場を選ぶ
ロバートハーフジャパン アダム・ジョンストン マネージングディレクター
バイリンガルのスペシャリストに対する企業の採用意欲は高く、昨年は保険、メディカル、IT、金融業界などへの紹介が増え、当社の売り上げは前年比45%増となった。幅広い業種で必要とされている経理・財務職は、将来のプランニングや分析ができるスキルが求められている。
海外に進出したい日本企業からの依頼もあるが、クライアントの8割は外資系企業だ。アベノミクス効果で日本に新たに進出したり、採用人数を増やす企業が多くなっている。
日本企業にも紹介したいが、候補者は外資系企業への転職を選ぶことが多い。給料の高さも理由の一つだが、国際的な環境でビジネスチャンスが多い職場が転職先に選ばれている。採用を強化したい企業は若くて意欲の高い人材に活躍の機会を与えることが必要だ。
語学力だけを重視した無理な採用は採用活動の循環を悪化させる
i6コンサルティンググループ 佐藤 竜司 代表取締役
これまでは現地にあわせビジネスをカスタマイズし、語学力で海外と日本の間に立つだけでバリューが出ていたが、いまはビジネスが変わりマーケットや商材への深い理解がないとロジカルに外国人を説得してバリューを出せなくなっている。
ただし、そのよう人材は限られている上、少数だ。語学力を重視するだけの無理な採用は定着率を低下させ、辞めた人材から悪評が立つことで採用活動が一層難しくなるなど採用の循環を悪化させる。
例えば、マネジャー以上かスタッフかで入社後に必要となる語学力の水準は異なるため、全員が流暢なバイリンガルである必要はない。採用する職種やポジションで何を重視するのか見極め、必要に応じて社内の人材や採用したスタッフを育成していくことが人材確保の早道だ。
現地組織を運営するため、あらゆる職種が採用の対象に
グローバル・リサーチ 尾㟢 将範 代表取締役・COO
自動車や電機メーカーなど製造業の海外進出は顕著で現地調達できないサプライヤーも大手企業と一緒に海外へ進出する傾向にあり、従業員数十人程度の中小企業が進出するケースもある。
また、進出先を販売拠点としても見始めるようになっており、工場長、生産管理、品質管理という職種のほか、現地組織を運営する人事・経理や現地市場を開拓できる営業・マーケティングなどあらゆる職種が採用の対象となってきている。
外資系の場合は高い語学力を求められるが、東南アジアを中心に事業の拡大を計画する日系企業では進出地域の情勢やマーケットを熟知していたり、マーケティングや工場運営のスペシャリストであることがより重要だ。とはいえ、今後、国内外を問わず語学力が求められることに間違いはない。
外国人学生の採用は役割期待、キャリア形成を明確にすべき
リンク アンド モチベーション 染谷 剛史 執行役
外国人新卒採用の問題は、経営者が海外事業を数年で2~3倍に拡大する計画を立てているのに、外国人の配置やローテーションが国内事業の日本人従業員を前提とした仕組みで動いていることだ。
事業戦略と人材戦略が乖離している企業も目立つが、一部の企業は海外採用専任者を置いて事業計画を実現するための採用の仕組み作りを始めている。また、外国人の定着のための入社後フォローや異文化対応研修の相談が多くなっている。
一方、採用した人材の活躍が見られず、海外での新卒採用から撤退する企業もあり、サービス業や銀行などが採用を増やしつつあるが全体の採用数は横ばいと見ている。外国人学生の本社採用は、役割期待を明確にした職種での採用や配置、活躍までのキャリア形成を考えた仕組みを構築する必要がある。