徒弟

徒弟とは、技術や技能を身につけるための教育方法のひとつで、見習いとしての弟子が技能者である親方の仕事を観察しながらスキルを高めていきます。ただし、弟子は親方から懇切丁寧に技術指導をしてもらうことはほとんどなく、見よう見まねで失敗を繰り返しながら親方の技術を学びます。徒弟による技術指導は背中を見て学ぶ、技術を見て盗むといった表現がされるように、体系的なものではありませんでした。1980年代に入って、ようやくアメリカの認知学者によって徒弟制度による教育論を理論的に確立した教育方法が誕生します。

徒弟制度は、ビジネスにおける人材教育でも活用されています。従来のような住み込みをして長時間労働を強いるような徒弟制度は労働基準法でも禁止されていますが、技術者のスキルを模範として自ら学ぶという教育方法は、時代にあったスキル習得法ともいえます。

その理由としては、インターネットの普及で情報が溢れ効率化が加速している現代において、時代の流れの早さについていくためには、上からの指示を待っているだけでは業務に必要十分なスキルを身につけることが難しくなっているからです。基礎技術や基礎知識を身につけるには人事担当などがイチから丁寧に教え、一方的に詰め込むような形でも学習効果はありますが、それ以上のスキルを習得するためには、自発的に取りにいかなければなりません。教えすぎることをせず、自主的な学習環境に身を置くことが大切です。

徒弟を取り入れた人材育成のステップとしては、モデリングと呼ばれる模倣から始まります。まずは上司の動きを観察し、徒弟のように見よう、見まねでチャレンジします。それを上司は観察しながらコーチングと呼ばれるフィードバックをおこないます。ただスキルを見せるだけでなくアドバイスを加えることで、学習の軌道修正ができ、より短期間でスキルが身につくようになります。 基礎的な学習が終われば、スキャフォールディングと呼ばれる自立へのサポートをおこないます。仕事を複数任せるようにして、できない仕事だけを上司がこなすようにします。部下が1人で仕事をこなせるようになれば、上司は撤退してフェーディングの段階に到達します。

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