定年制とは、会社が定めた年齢に達したら雇用契約を終了する制度のことです。多くの企業では定年制を導入しており、定年年齢は企業が自由に定められます。
定年制に関する法律は、高年齢者等の雇用の安定等に関する法律、通称「高年齢者雇用安定法」によって定められています。高年齢者雇用安定法では、定年年齢は60歳以上でなければならず、60歳を定年としている企業であっても、65歳まで雇用を継続できる制度を設けることも義務づけられています。2021年4月には、70歳まで働ける制度を設けることも努力義務化されています。
高年齢者雇用安定法による定年制の年齢は、日本の平均寿命が伸びたために、過去に何度も見直されてきました。1986年に改正が行われ、それまで55歳であった定年年齢を60歳とする、企業による努力義務化が定められました。さらに1994年には60歳未満の定年制が禁止され、この法改正は現在にも至ります。少子高齢化社会となった2000年には、65歳を定年とすることが企業の努力義務となりました。
2013年には、希望する者には65歳までの雇用継続が義務化されています。この法改正は2025年3月までの経過措置期間がとられていますが、定年制を廃止するか、定年年齢を65歳に引き上げるか、65歳まで継続雇用を行うか、いずれかの制度を設けなければなりません。多くの企業は、65歳まで継続雇用を導入しており、60歳で一旦雇用を打ち切るものの、65歳まで再雇用として契約を年間更新する方法が多いようです。
企業で定年制に関して定められた内容は、就業規則に記載することが義務づけられています。定年制を設けている場合、就業規則に定年年齢と定年退職日を明記する必要があります。たとえば定年年齢に達した日や、定年年齢に達した日を含む月末日など、具体的に記載します。注意点として、定年年齢に達した日は誕生日とよく間違われますが、実際には誕生日の前日に当たります。これは年齢計算に関する法律が関わっています。
日本は、平均寿命だけではなく健康寿命も伸びている傾向にあり、時代の変化とともに、定年年齢も変化しています。年金受給開始まで働きたいと考える高齢者は一定数いることから、少子高齢化にともない人材不足に悩まされる企業にとっては、定年制の年齢をうまく活用することによって企業の成長が望めるかもしれません。