多能工化とは、一人が複数の業務をおこなえるよう、従業員を育成することを指します。もとはトヨタ自動車が工場現場での気づきから誕生させた、一人が複数の工程をこなせるよう教育、訓練をおこなって無駄を省く方法で、製造業界などで取り入れられてきました。現在では別の業種や職種においても活用されています。
多能工化が必要とされるようになった背景には、労働人口の減少と働き方改革の推進といった理由が挙げられます。さまざまな影響から労働人口が減少しており、どの企業も働き手の確保が難しい状況にあるため、既存の従業員の能力やスキルを最大限に活用できるような取り組みが必要です。
さらに働き方改革の推進によって、従業員のライフワークバランスが重要視されるようになり、休暇を取得しやすくすることや残業を解消できるような取り組みも必要となっています。従業員一人一人がスキルアップして複数の業務をこなすことで、業務の平準化や生産性の向上が見込めることから、多能工化が重要視されるようになりました。
多能工化は、授業員のスキル向上や、柔軟性や応用力のある組織作りができます。たとえば、企業の中でも多忙な部署と、余裕のある部署といった偏りがあるとします。多忙だからと人員を採用するのではなく、余裕のある部署の人員でフォローできれば、改めて人を増やす必要がありません。具体例では、営業事務のスタッフが営業社員のフォローとして、見積書の作成や顧客への提案までを代わりにおこなうことも多能工化のひとつといえるでしょう。このことから新たな人件費のカット、業務の生産性の向上、業務の平準化が期待できます。
多能工化への手順は、各業務の洗い出しをおこない、他の部署に任せられる業務を抽出しマニュアル化していきます。そのため準備に時間がかかり、すぐに効果を期待できるものではありません。しかし多能工化を成功させるためには事前準備は必須であり、維持継続させることができれば、メリットのほうが大きくなるでしょう。
多能工化で気をつけるべきポイントは、従業員に業務を押しつけ過ぎないことです。短期間で一気に進めようとすると、無理が生じて従業員の負担となってしまいます。従業員の適正を判断しながら、声にも耳を傾けつつ進めていく必要があります。