転職支援サービス「リクルートエージェント」が発表した「2024年10-12月期 転職時の賃金変動状況」によると、転職時に前職と比べて賃金が1割以上増加した転職決定者の割合は35.8%となり、前年同期から0.8ポイント上昇したことが明らかになった。(文:日本人材ニュース編集部)
リクルートの集計によると、新型コロナウイルスの感染拡大が始まった2020年1-3月期に一時的な落ち込みを見せた賃金上昇率は、2021年1-3月期には感染拡大前の水準に回復。その後は上昇基調を継続している。
2024年10-12月期は、過去最高値となった前四半期からは若干の下落が見られたものの、依然として高い水準を維持している。
職種別に見ると、IT系エンジニアは38.6%と全職種平均を上回る高水準を維持。2019年頃から見られた減速感を脱し、2021年以降は上昇基調を続けている。
IT系エンジニアの激しい採用競争は継続しているものの、アイムファクトリーの久利可奈恵代表は「社員採用だけでなくフリーランスや副業案件で人材を獲得するなど、型にとらわれない採用方法で即戦力人材を求める企業が獲得に成功しています」と説明する。
機械・電気・化学エンジニアも34.0%と好調で、2020年10-12月期を底に反発後、上昇基調を継続。2024年10-12月期には統計開始以来の最高値を更新した。
製造分野の中途採用に詳しいキャリアビリティの雨宮佑揮代表は「長年の経験を持つシニア層を即戦力として期待されるだけでなく、組織の効率向上や次世代技術者の育成にも貢献できる重要な人材と見ている」と話し、高い技術を持つ人材は年齢を問わず求められている。
営業職は35.5%と、前年同期から1.6ポイントの上昇を示している。事務系専門職は32.5%と、相対的には低めながらも着実な上昇を続けている。
接客・販売・店長・コールセンター職の39.3%という高い数値となった。2020年の落ち込みから力強い回復を見せ、2023年1-3月期に過去最高値を更新。以降も高水準を維持している。
対面サービスの職種で高い割合となっているのは、人材確保の困難さを反映している可能性があり、給与面での競争力に加え、働き方改革や職場環境の整備など、総合的な待遇改善の検討が求められる。
全体的な賃金上昇トレンドは人材確保における報酬の重要性が増していることを示し、競争力のある報酬体系の設計は不可欠となっている。
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