2024年は33年ぶりの賃上げ水準となったが、人件費上昇に耐えきれず「人手不足」による倒産が過去最多となったことが東京商工リサーチのまとめで分かった。
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東京商工リサーチが、2024年の全国企業倒産(負債1000万円以上)のうち、「求人難」「人件費高騰」「従業員退職」を要因とする倒産を抽出・分析した結果、「人手不足」が一因となった倒産は、2013年以降で最多の289件(前年比81.7%増)だった。
要因の内訳は、 「求人難」が114件(前年比96.5%増)、「人件費高騰」が104件(前年比76.2%増)、「従業員退職」が71件(前年比69.0%増)で、いずれも最多を更新した。
「人手不足」関連倒産 要因別(2024年1月~12月)
要因 | 2024年 | 2023年 | 2022年 |
求人難 | 114件 | 58件 | 27件 |
人件費高騰 | 104件 | 59件 | 7件 |
従業員退職 | 71件 | 42件 | 28件 |
合計 | 289件 | 159件 | 62件 |
産業別では、「サービス業他」が88件(前年比60.0%増)、「建設業」が75件(前年比158.6%増)、「運輸業」が69件(前年比76.9%増)などが多い。
2024年の春闘は賃上げ率が前年比5.10%、額にして1万5281円と33年ぶりの大幅な賃上げ水準となった。労働組合のない企業も含まれる厚労省の調査でも、平均賃金の賃上げ率は4.1%と前年を上回り、現在の調査方法となった1999年以降で最も高かった。また、16都道府県で最低賃金が1000円を超えた。
連合の芳野友子会長は記者会見で「2025年春闘では中小・小規模事業者の底上げに力を入れていきたい」と発言しており、中小企業に対する人件費上昇圧力はこれまで以上に高まっている。また、若い人材を確保するために初任給が上昇する一方で、中高年層の賃金抑制や早期退職者募集などが広がる可能性もある。
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東京商工リサーチは「無理な賃上げで人件費上昇に耐えきれなくなった倒産が増えており、適正な価格転嫁など収益強化への投資・支援が急務」とコメントしている。
2024年の「人手不足」関連倒産の抽出・分析の詳細はこちら
https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1200923_1527.html