
カイラボ
井上 洋市朗 代表取締役
【PROFILE】「働くすべての人が生きがい、働きがいのある社会」を目指し、2012年に株式会社カイラボを設立。新卒入社3年以内に辞めた人への100人インタビューを行い「早期離職白書2013」を発行。自身も新卒入社の会社を2年弱で退職した経験を持つ。 現在は早期離職母防止コンサルティングや企業研修、講演、高校生向けキャリア教育などを行っている。
企業にとって「人が辞めない組織づくり」の重要性はますます高まっています。初任給のアップ、配属先の確約、若手の抜擢、各種手当の充実、残業時間の削減など、最近目にする企業の人事施策のほとんどが、狙いの一つに「社員の定着率アップ」を挙げています。
しかし、それらの人事施策は必ずしも的を射ているとは言えません。なかには見当違いの対策さえもあります。
社員定着のための適切な対策をすることで、企業も個人も幸せになってほしいという思いで、私が2011年から行っている早期離職者(新卒入社後3年以内に企業を辞めた人)インタビューの内容と、コンサルティング現場で聞く経営者、人事、管理職などの本音を踏まえて書いたのが本書です。
私の10年以上のインタビューから早期離職には、①存在承認の不足②貢献実感の不足③成長予感の不足―の三つの要因があります。
中でも管理職を悩ませるのは成長予感の不足です。若手にとっての「成長」と、上司の思う「成長」は、その性質も、スピード感も異なります。どういう意味なのかは、本書に掲載している大量のインタビューを読めば納得いただけると思います。
そして、社員の定着が経営課題の一つなっている昨今では、社員の離職対策は人事部だけではなく、経営陣から現場の社員まで全社員を巻き込む必要があります。全社員を巻き込むのに必要なのは問題意識の共有と、現状認識の共有です。
本書で紹介している、企業のタイプを9分類したナインボックスや、辞めて欲しくない社員の価値観や行動を可視化するエンプロイージャーニーは問題意識・現状認識の共有に最適です。
人が辞めない組織づくりには、今いる社員一人ひとりの意識と行動のアップデートも重要です。「わからないところがあれば聞いてね」で伝わらない、先回りの重要性や信頼関係づくりの声掛け方法についても紹介しています。
統計データとしての「若手が辞める理由」ではなく、リアルで生々しい「若手の本音」を知りたい方にこそ手に取っていただきたい一冊です。

井上洋市朗 著
秀和システム
1,600円+税