ディスコ
武井 房子 キャリタスリサーチ上席研究員
当社は年間を通じて、企業と学生に採用・就職関連の調査を実施しています。その中で感じるのは、まず企業の採用意欲の高さです。ここまで9年連続で増加傾向が続いてきましたが、2021卒についても引き続き堅調で、採用規模は維持される見込みです。業界や企業によりまだら模様ではあるものの、売り手市場はまだ続きそうです。
一方、学生は潮目を敏感に感じ取っているような素振りが見えます。昨年11月に現3年生(修士1年生)へ就職戦線をどう見るかを尋ねたところ、8割超の学生が「先輩たちよりも厳しくなる」と回答しました。前年調査に比べ約30ポイントも増加しました。
東京オリンピック後の景気低迷などを睨んで、採用数が減少に転じるのではと懸念する声が挙がっています。ただもっと多いのは、経団連の指針廃止に絡む声です。日程ルール自体は変わりませんが、指針が出ないことで早期化が進むと見て、就活の乗り遅れを心配する学生が目立ちます。早めに準備に取り掛かる傾向が強く、志望業界や企業を絞り込むタイミングが早まっている様子が見て取れます。
指針廃止の影響がどの程度になるかはまだ分かりませんが、企業の動き出しが早まるのは間違いないでしょう。当社の調査では、特に面接開始時期を早める動きが顕著です。採用広報解禁直後の3月に面接試験を開始する予定だと回答した企業が4割に上り、それより前の2月中に開始する企業が約2割。インターンシップで接点をもった学生に対して、自社への興味が高まっているうちに、ということでしょう。
面接だけでなく内定出しも早まる見込みですが、採用は内定を出して終わりではなく、その後のフォローも重要です。ここ数年の学生を見ていると、スピード選考で企業をまだよく知らないうちに内定が出て、戸惑うケースも少なくありません。
早期化が進むとすると、意思決定のために、内定が出てから本格的に企業研究を行う学生はさらに増えそうです。現場社員との面談や職場見学などを通して企業理解を促す工夫が必要になるでしょう。