賃金管理研究所
大槻 幸雄 取締役副所長
現在の労働市場は、まさに売り手市場。中小企業経営者の多くが、社員の採用や定着に頭を悩ませています。社員が辞めたとき、退職理由が「この会社は自分とは合わない」「やりたいことができない」など社員の側にあるならいざ知らず、「給与についての説明もなく、昇給や昇格の基準がわからない」「自分自身の将来設計が描けない」など会社側に原因がある場合、早急にこれを解決しない限り社員の定着は望めず、明るい未来像は描けません。
「人事制度や賃金制度は複雑で非常に難しいもの」との思いから、社員の処遇決定ルールの見直しになかなか踏み出せない経営者も多いようです。しかし、人手不足の問題がますます深刻になるのは必至。厳しさを増す雇用環境だからこそ、自社にふさわしい人材の採用・定着を進め、社員がそれぞれに目的意識を持って仕事に集中できる環境づくりを急ぐ必要があります。
社員の賃金処遇を決める合理的なルールの確立は経営者にとって重要な課題であり、その中核に位置づけられるのが、シンプルで合理的な社員の成長にもつながる給与制度づくりです。
雇用の流動性が増したとはいえ、自社に入社した社員が納得して仕事に励み自らの成長を実感しつつ、定年まで働き続けることができれば、社員にとっても会社にとってもそれ以上に幸福なことはありません。それこそが「社員を大切にする」ということの基本だと考えています。
本書は、シンプルで合理的な給与制度を確立することの大切さを、分かりやすく伝えることを目的としています。自社の課題の発見からスタートし、人事処遇の基本となる等級制度の考え方、基本給の設計、昇給ルールの確立、評価制度の基本的な仕組み、賞与配分など、この1冊で給与制度と人事評価の全体像を概観し、その要点を掴むことができます。
本当に押さえるべき給与制度の急所はどこかを会得され、会社の繁栄と社員の幸せにつなげていただくことを心より願ってやみません。
大槻幸雄 著
あさ出版、1,600円+税