キャリア採用についてその意味や採用側から見るメリット・デメリット、面接の質問例など包括的に解説します。人手不足や転職が活発化する中、どのような採用方式を取り入れると正解なのか迷っている人事担当者の方や経営者の方はぜひご参考ください。
目次
キャリア採用とは
キャリア採用とは、自社と同じ業界や職種での就業経験があり、即戦力として活躍してくれる人材を採用することです。経験者採用と言い替えることもできます。
キャリア採用の募集要項には、「〇〇業界での実務経験○年以上」「マネジャー経験者」「〇〇資格保有者」などといった具体的な応募条件が記載されています。
キャリア採用と他の採用手法との違い
キャリア採用と混同しやすいものに中途採用やジョブ型採用があります。これらの用語との違いを以下で解説します。
中途採用との違い
基本的に中途採用の方がキャリア採用よりも意味が広いです。中途採用は就業経験さえあれば対象となり、前職の業界や業種は問いません。キャリア採用のほかに未経験者採用や第二新卒採用なども中途採用に含みます。一方、キャリア採用は、自社と同じ業界や職種での就業経験が必要です。
ジョブ型採用との違い
ジョブ型採用は、仕事の内容に求められるスキルや経験、特性があるかどうかを見て、採用を決めます。欧米では、メジャーな採用方法です。採用に当たっては、会社側が応募者が入社後に関わることになる職務内容を記した「職務記述書(ジョブディスクリプション)」を作成。この「職務記述書」に適用する人材を採用します。一方でキャリア採用では、仕事の内容まで指定することはなく、これまでの経験に基づく採用となっています。
キャリア採用が増えている3つの理由
キャリア採用を行う企業は年々増えています。本章では、その主な3つの理由について解説します。
VUCA時代到来による転職市場の活発化
VUCA(ブーカ)とは、めまぐるしく変化する社会にあって、将来の不確実性が増し、予測しにくい状況になることを意味する造語です。現在はまさにVUCA時代にあり、企業も人材も適切な対応が求められています。企業としてもVUCAに臨機応変に対応できる人材を集めたいことから、キャリア採用を重視するようになってきました。応募者側もスキルを伸ばせる企業に転職して、自分の市場価値を高めようとしています。
即戦力となる人材の確保
変化が激しい時代に対応するため、企業は特定のスキルや経験を持った即戦力のある人材を求めており、キャリア採用が増えています。特にIT関連分野では、人材が不足し、育成環境も十分整っていないことから、即戦力となる人材の採用が急務になっています。
企業内の人材バランスの調整
企業によっては、人材構成のバランスを整えるためにキャリア採用を導入しているところもあります。例えば、若い世代や就職氷河期世代の人員が少なく、バブル世代の人員が多いなど人材構成のバランスが崩れている企業では、いかにバランスを取るかが大きな課題となっています。そこでキャリア採用を用いて不足している世代を充足につなげています。
キャリア採用が多い職種
・営業 ・営業企画 ・人事 ・財務、法務 ・SE、プログラマー ・データアナリスト ・研究開発職 ・Webディレクター、Webデザイナー など |
どの職種でもキャリア採用は存在しますが、専門的なスキル・知識・経験を求められる職種でのキャリア採用が多くなっています。例えば、人事、経理、営業企画、法務、システムエンジニア、Webディレクター、デザイナー、データアナリストなどの職種です。このような職種では、新たな人材の育成が簡単ではなく、時間もかかります。そのため、労力とコスト削減のためにキャリア採用がよく行われます。
採用側からみるキャリア採用の3つのメリット
・育成コストが削減できる ・スピード感のある事業成長につながる ・新しいやり方で業務の見直しができる |
キャリア採用を導入することで採用側が得られるメリットの中から代表的なものを3つピックアップして解説します。
育成コストが削減できる
未経験者の採用では、職種や業種における知識やスキルを教えるのに多大な手間やコストがかかります。一方で、キャリア採用では、基本的に社会人としてのマナーはもちろん、職種・業種における知識やスキルも身に付けている人を採用するため、育成コストを削減できます。
スピード感のある事業成長につながる
キャリア採用で採用した人材は経験があるため、採用してからすぐに戦力として業務に携われます。そのため社内のリソースを新卒採用や未経験者採用のように育成の時間に当てる必要がなく、企業の目標達成に向けた活動に割くことができるため、スピード感のある事業成長につなげられます。
新しいやり方で業務の見直しができる
キャリア採用された人材は、前職で培ったノウハウを持っており、それを新しい職場に活かせる場合があります。例えば、これまでの方法の効率が悪い場合に、よりよい方法を共有することで業務の見直しに貢献できることが挙げられます。また、組織がマンネリ化している場合にもキャリア採用人材が新規のアイデアをもたらして活躍することでメリットをもたらすことができます。
採用側から見るキャリア採用の3つのデメリット
・給与を高く設定する必要がある ・採用にコストがかかる ・社風になじめず、転職してしまう場合がある |
キャリア採用を導入することで採用側が感じるデメリットの中から代表的なものを3つピックアップして解説します。
給与を高く設定する必要がある
キャリア採用では、経験やスキルを持っている人を採用することになるので、給与水準を高く設定しなければいけません。少なくとも新卒や未経験者を上回る水準にしなければ、納得してもらえないでしょう。給与水準を低く設定した場合には、良質な応募者が集まらない可能性もあります。
採用にコストがかかる
キャリア採用では、採用までに時間とコストがかかりやすいです。応募者の転職希望時期と企業の採用時期が合わないこともあり、タイミングを計るのも難しく、余計なコストが生じる可能性もあります。
社風に馴染めず、転職してしまう場合がある
キャリア採用で雇った人材が新たな企業の社風やカルチャーにうまく馴染めない可能性があります。具体的には、前職での経験ややり方にこだわってしまったり、既存社員と相性が悪くて馴染めない場合が考えられます。結果的に早期退職につながるとコストや労力が無駄となってしまいます。
キャリア採用をする際の3つの注意点
・即戦力人材に求めるものを明確にする ・待遇や職場環境を整える ・自社のアピールポイントを検討する |
キャリア採用で失敗しないために注意したらよいことを3つに絞って解説します。
即戦力人材に求めるものを明確にする
せっかく即戦力になる人材を採用しても、ミスマッチであればお互いにとって損失になります。また、事業や部署目標を叶えるためにどのような人材が必要なのか明確にすることは目標達成のために重要です。ミスマッチにつながらないために、求められる人間性やスペックを言語化しておくとよいでしょう。
待遇や職場環境を整える
キャリア採用で即戦力人材を採用しようと思っても、競合するほかの求人と比べて給与設定が低い場合には応募してくれなかったり、他社に取られてしまう恐れがあります。求人サイトで競合他社が提示している給与水準や待遇の相場を把握して、それをあまり下回らないような条件を設定することが大事です。
自社のアピールポイントを検討する
即戦力を求めて、キャリア採用を取り入れている企業は多いので、競争は激しいです。その中で、優秀な人材を採用するためには、自社の優れている点や魅力をいかにアピールするかがポイントになってきます。アピールポイントとしては、待遇や福利厚生だけではなく、入社後のキャリアや仕事のやりがい、社風なども取り上げてみましょう。
キャリア採用で重視される選考基準
マイナビキャリアリサーチLab「中途採用状況調査2023年版」によると、経験者採用(キャリア採用)で企業の選考基準がどうなっているかが明らかになっています。選考基準の第1位は「職務経験」でした。経験は貴重な宝だからでしょう。第2位は「コミュニケーション力」。傾聴力や自己発信能力が問われています。キャリア採用の面接では、人材のコミュニケーション力を見極めることが非常に大切になってきます。第3位は、応募者の「仕事に対する考え方」でした。考え方が多様化する中で、自社にあった仕事への考え方とは何なのか、しっかりつかんでおく必要があるでしょう。
キャリア採用の面接で聞くべき質問例
・どのような軸で転職先を探していますか? ・入社後、どのくらいの期間で弊社になじめると思いますか? ・今までの仕事で、困難なことをチームで乗り越えるために実践したことがあれば教えてください。 ・現職でどのように部下やチームのマネジメントをしてきましたか? ・今後さらに身に着けたい仕事ややってみたい仕事はありますか? など |
キャリア採用の面接では、まずキャリアビジョンに関する質問をしましょう。定番の質問ですが、応募者の志望度、将来への展望、目標設定、実行力などを見る大事なポイントです。次は、マネジメント能力に関する質問をします。マネジメント能力に関する質問から、応募者の人間性や能力について推し量ることができるでしょう。自社とのマッチ度も確認しておきたい事項です。応募者が企業ビジョンや社風に合うかしっかり見極めないと、後悔することになりかねません。
キャリア採用で優秀な人材を採用しよう
今回の記事では、キャリア採用について詳しい説明をしました。キャリア採用は業種・職種で経験やスキルが豊かな人材を採用する手法です。上手に活用して、優秀な人材を集めて、企業の業績向上に役立ててください。
また「人材コンサルティング会社&サービスガイド100選」では、厳しい基準をクリアした人材コンサルティング会社を探すことができます。優秀なコンサルタントにアドバイスをもらいながら採用活動を進めることで、自社で活躍してくれる人材を効率よく見けられます。よりよい採用手段を模索している人事担当者の方は、ぜひ下記のサイトより自社にあったコンサルティング会社を探してみてください。