【ウィズコロナ時代の人事大転換】「非対面」への移行をHRテックで実現

新型コロナウイルス感染拡大の第2波、第3波が懸念される「ウィズコロナ時代」の人事は、これまでの業務の進め方を大きく転換する必要に迫られている。「非対面」による業務へのスピーディーな移行に貢献しているのが、人事業務をITで支援するHRテックサービスだ。企業の導入事情や新たなニーズなどを取材した。

日本人材ニュース

Web面接の活用が一気に進む

 採用活動では対面による面接が困難となる中、Web面接の活用が一気に進んでいる。就職情報サービスのリクルートキャリアが6月中旬に実施した学生調査によると、内定取得先企業の最終面接がWebだった企業の割合は41.5%で、企業規模が大きいほど割合が高く、従業員5000人以上の企業では56.6%となっている。

 中途採用でもWeb面接の活用が進んでいる。人材紹介会社のジェイエイ シー リクルートメントの調査によると、42%の企業が「1次面接から最終面接まで全てオンライン面接で行い、採用するか否かを決定できる」と回答している。

 採用面接に特化したHRテックサービスを提供するタレンタのデジタル面接「HireVue」の21年卒採用選考の利用学生数は32万人となり、昨年から10万人以上増えている。大手企業の内定出しが集中した6月第1週の利用学生数は2万人を超え、総合商社や金融機関、大手メーカーによる多くのWeb選考に対応した。

 タレンタの中村究CFOは「大手企業が導入している応募者管理システムと連携することで、短期間でWeb面接の準備・実施・評価プロセスの運用体制を構築し、リモートワーク中の人事採用担当者の工数削減に寄与できたこともWeb面接実施数が大幅に上昇した要因です」と説明する。

「非対面」の採用活動を補足する新たなニーズ

 オンラインによる会社説明会やWeb面接の活用が進んだことで、これまで社員が学生や求職者と直接面談して見極めたり、自社の魅力を伝えるという採用活動を補足するためのサービスに新たなニーズが出てきている。

 「HireVue」には、録画面接をAIで分析して社会人基礎力を診断したり、スマートフォンのゲームで認知能力を判定できる機能が備わっているが、これもWeb面接と合わせて利用する企業が増えている。

 人事コンサルティング会社のマネジメントベースでは、企業の不祥事につながるリスク要因やメンタル面をチェックできる適性検査の引き合いが増えているという。Web面接だけでは「何かおかしい」と違和感を感じ取ることが難しいと考えている人事担当者から、見逃しを防ぐ対策として求められているためだ。

 また、同社の本田宏文代表は「学生と対面で会うことが難しくなると、知名度が高い企業への応募が一層集中し、中堅中小企業の母集団形成が難しくなると見込まれています。そのため、会社の魅力を伝え学生から共感を得て応募につなげられる動画制作のニーズが出ています」と話している。

4割の企業が新卒採用の最終面接をWebで実施

●従業員規模別に見る内定取得先企業の最終面接の形式

日本人材ニュース
(出所)リクルートキャリア「就職プロセス調査(2021年卒)」(調査期間:6月12日~19日)

新入社員研修からリーダーの発掘・育成まで、オンライン活用が広がる

 社員教育でも企業が研修計画の見直しを余儀なくされ、オンライン研修やeラーニングの活用に転換している。

 複合機などの販売サービスを行うリコージャパンは、新入社員研修をオンラインに切り替え、今まで活用していた既存のコンテンツに加え、ビジネス知識の基礎をスマートフォンで学べる「グロービス学び放題フレッシャーズ」を導入した。こうしたオンライン学習ニーズの拡大によって、「グロービス学び放題フレッシャーズ」の導入企業は500社を超え、来春入社予定の内定者向けの活用の相談も多くなっている。

 厳しい経営環境が続く中で事業をけん引する次世代リーダーの発掘と育成は喫緊の取り組みテーマとなっているが、その取り組みにも「ウィズコロナ時代」の新たな動きが出始めている。

 マネジメントベースの本田代表は「テレワークの定着などによって、必要とされるリーダー像が変わってくる可能性があります。それに備え、360度評価などで能力や成果を可視化し、これまでの人事評価項目が適切なのかを科学的に分析する必要があります」と助言する。

 企業のリーダー育成を支援しているウィズン・コンサルティングの岡部泉社長は「企業を存続させていくために新たな事業を創出したり、会社・組織の壁を超えてビジネスマッチングができる人材をどう確保していくのかが大きな課題」と指摘し、「経営幹部候補のオンラインアセスメントを新たに導入するなど、リーダー育成施策を拡充する動きが見られます」と説明する。

教育管理システムを導入する企業が増加

 オンライン活用などで提供方法の多様化が進むことで、これまでの教育内容の見直しが必要になっており、社員の受講状況や学習履歴などを一括管理できるシステムを導入するなど、研修業務の効率化を図る企業も増加している。

 研修会社のインソースが提供する教育管理システム「Leaf」の利用者数は4月に100万人を突破し、5〜6月も新規導入企業が増え続けている。「Leaf」はWeb会議システム「Zoom」と連携したオンライン研修、紙やExcelの人事評価シートをWeb化してペーパーレスを実現できる機能などを備え、研修業務のオンライン化や、人事評価と教育の連動による教育投資効果の向上を支援している。

導入決定から2日でオンライン入社手続きの準備を完了

 労務関連の手続きでは、従業員とのやり取りを紙で行っている企業が少なくない。在宅勤務の増加などによって、こうした紙による人事業務をいかに減らすかも人事担当者の新たな悩みとなった。

 医療・介護分野の人材サービスを展開するTSグループは、新入社員203人の入社式・集合研修を5月へ延期し、オンラインで入社手続きを行うために人事労務管理クラウド「SmartHR」を導入した。「SmartHR」は、従業員がオンラインで必要な情報を入力すれば必要な書類を自動作成し、紙での情報収集を不要にするサービスで、導入を検討する企業からの問い合わせ数は新型コロナウイルス感染拡大以前の約2倍となっている。

 TSグループでは、導入の意思決定から2日でシステム準備が完了し、新入社員は自宅にいながら入社手続きを行うことができた。

書類の配布や回収、Excelへの転記など、煩雑な作業から解放される

●「 SmartHR」を活用した入社手続きの流れ

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労働生産性を高める人事業務のデジタル化

 SmartHRの倉橋隆文COOは「導入企業の人事担当者の方からは『感染拡大が落ち着いた後も、今後の人材確保を見据えてリモートでも働ける環境整備を進めていく必要がある』という声が聞かれます。労働力人口が減少する中で、従業員の生産性を高めるためには人事業務のデジタル化が欠かせません」と強調する。

 HRテックサービスの多くはクラウドで提供され、導入・運用コストが大きく下がっている。既存システムとの連携もスムーズにできるものが増え、使い勝手が良くなっている。

 感染拡大の第2波、第3波が懸念される中、対面や紙による人事業務が続くと、感染の恐れがあるのはもちろんのこと、人事担当者、従業員ともに手間が減らず、労働生産性は高まらない。さらに、テレワークが労働生産性を低下させることもなく、むしろ効率的な働き方を促すことができることも分かってきた。「ウィズコロナ時代」となって、HRテックサービスの有効活用はますます欠かせないものとなっている。

労働生産性向上へHRテックの活用は欠かせない

●主なHRテックサービスの内容

日本人材ニュース

専門家に聞く「ウィズコロナ時代の人事を考えるためのポイント」

採用面接の「非対面化/非接触化」で安全、安心、快適を提供

タレンタ

タレンタ 中村 究 専務取締役兼CFO

 デジタル面接システム「HireVue」の21年卒採用選考の利用学生数は32万人となっています。今年はWeb面接の導入が急速に進みましたが、「HireVue」は特に大手企業の導入が多くなっています。
 大手企業が導入している応募者管理システムと連携することで、短期間でWeb面接の準備・実施・評価のプロセスを運用する体制を構築し、リモートワーク中の人事採用担当者の工数削減に寄与したこともWeb面接実施数が大幅に上昇した要因です。
 新卒だけでなく、中途、アルバイトなどの採用面接においても「非対面化/非接触化」を実現して「新しい日常」にいち早く対応することは、求職者に対して安全、安心、快適な面接を提供でき、スマートな企業姿勢を示すことにつながります。

リーダー像の変化に備え、人事評価項目の科学的な分析が必要

マネジメントベース

マネジメントベース 本田 宏文 代表取締役

 会社説明会や選考面接のオンライン化が進んで学生と対面で会うことが難しくなると、知名度が高い企業への応募が一層集中し、中堅中小企業の母集団形成が難しくなると見込まれています。そのため、学生から共感を得て応募につなげられる動画制作のニーズが出ています。
 また、Web面接だけでは「『何かおかしいな』と違和感を感じ取ることが難しい」という人事担当者からは、企業の不祥事につながるリスク要因やメンタル面をチェックできる適性検査の引き合いが増えています。
 テレワークの定着などによって、必要とされるリーダー像が変わってくる可能性があります。それに備え、360度評価などで能力や成果を可視化し、これまでの人事評価項目が適切なのかを科学的に分析する必要があります。

人が介在することによって生産性を下げている業務を洗い出す

ウィズン・コンサルティング

ウィズン・コンサルティング 岡部 泉 代表取締役社長

 人事責任者からは、システム化によって人に依存しない業務の進め方を検討したいとの相談が寄せられています。大切なのはシステム化ありきで着手するのではなく、まずは客観的な業務分析によって、人が介在することによって生産性を下げている業務を洗い出すことです。
 そして、省力化が進めば余剰な人員が生じますので、どのような配置転換が可能なのかといった点まで検討しておくことが欠かせません。
 また、激変する環境変化の中、企業を存続させていくために新たな事業を創出したり、会社・組織の壁を超えてビジネスマッチングができる人材をどう確保していくのかが大きな課題です。当社顧客の中には経営幹部候補のオンラインアセスメントを導入するなど、リーダー育成施策を拡充する動きが見られます。

デジタル化で従業員の活躍を引き出す「攻めの人事」を促進

SmartHR

SmartHR 倉橋 隆文 取締役・COO

 新型コロナウイルス感染拡大防止のために入社手続きなどをリモートで行うことが必要になり、当社が提供する人事労務管理クラウド「SmartHR」への問い合わせ数は以前の約2倍に達しています。
 導入企業の人事担当者の方からは「感染拡大が落ち着いた後も、今後の人材確保を見据えてリモートでも働ける環境整備を進めていく必要がある」という声が聞かれます。労働力人口が減少する中で、従業員の生産性を高めるためには人事業務のデジタル化が欠かせません。
 そして、デジタル化で従業員情報を一元管理することは、適切な配置や能力開発によって従業員の活躍を引き出す「攻めの人事」を促進します。人事のデジタルトランスフォーメーションが待ったなしの状況だと感じています。

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