独自の営業支援システム製品を開発・提供しているソフトブレーンは、2017年、管理部から機能分化して新たに人財開発室を立ち上げた。これにより採用と教育を担い、人材力の強化を図る体制を整えた。そこで、人材育成の方向や採用戦略、今後の課題について、人財開発室課長の吉田圭氏に話を聞いた。
ソフトブレーン
吉田 圭 人財開発室 課長
製品開発や営業を担う人材に求められる職能要件を教えてください。
当社では、「eセールスマネージャー」という営業支援システム(CRM/SFA)のパッケージソフトウエアの開発および販売を手がけていますが、単なるシステムベンダーではなく、日本の働き方を革新する“営業イノベーション事業”を展開しています。
当社の事業目的は、お客様の営業部門における「業績が上がらない」「生産性が上がらない」といった問題に対して、売れる仕組みの構築や生産性を向上させるソリューションを提供することです。
「eセールスマネージャー」はそのためのツールに過ぎず、お客様の生産向上のために「eセールスマネージャー」を含めて何が提案できるかがポイントとなります。そのため、営業やコンサルタントに求められる職能は、お客様の課題を導き出し、その解決策を提案する力が主となります。
一方、エンジニア(開発)に求められる職能は、お客様ができるだけ使いやすい機能やインターフェースを構築して、ツールを使いこなしてもらえるようにする技術力が大切となります。
当社が掲げている「7つの行動指針」の第1項目は、「顧客基点で全てを始める」です。お客様の立場に立って考えることを最も重要な行動原則としており、営業にもコンサルタントにもエンジニアにも等しく求める要件であるといえます。
そのような職能をどのようにして育成・強化しているのでしょうか。
営業やコンサルタントには、各業界の基礎知識やお客様の課題を解決していくノウハウなどをまとめた資料を共有しています。エンジニアは、システムを自社にも導入しているため、サービスのファーストユーザーが自社の営業を始めとした全社員となるので、率直な意見をダイレクトかつ恒常的に聞ける点が職能を強化する上で役立っています。
さらに工夫していることは、単なるシステムベンダーではないという価値観を社内の共通認識とするため、一つ一つの仕事に必ず動機づけを行い、単純作業ではなくモチベーション高く仕事を行ってもらうような意識づけをしている点です。
製品をただ売るのと、お客様の営業組織にイノベーションを起こそうと提案するのとでは、大きな違いがあるということです。
能力を発揮しやすい環境づくりに工夫はありますか。
採用においても、またリテンションにおいても重要なのは、働きがいのある環境を構築し、その内容を発信することだと思っています。つまり、「こんな会社で働いてみたい、働き続けたい」と思ってもらえる環境づくりです。そのための施策の一環として、2017年9月から「eコミュ」をスタートさせました。
これは、社員同士が対話できる機会を増やして信頼関係を強化し合い、エンゲージメントを醸成するためのコミュニケーション活動推進プロジェクトをまとめたものです。納会や、春の花見、夏の社員旅行、秋の屋形船、冬のボウリング大会といった季節ごとのイベント、さらに当社式プレミアムフライデーの「ちょっとよっていかん会」(第三金曜日に実施)があります。
“よって”は、“寄って”と“酔って”を掛けており、気軽に寄ってケータリングの食べ物をつまみ、おしゃべりして職場に戻るもよし、帰宅前に用意したお酒をちょっとだけ飲んでほろ酔い気分で帰るもよし、といった場です。
月に1度、アトランダムに集まったメンバーとちょっといいお弁当をランチで食べる「コミュ×ラン♪」もあります。また、ゴルフやテニス、アウトドアといったサークル活動を会社が補助しています。サークルを会社として承認する際は、他部署のメンバーと共に活動することを条件とし、部署間でのコミュニケーション活性化を図っています。
働きがいのある環境の構築で、自社の魅力を高める
「eコミュ」を始めた経緯を教えてください。
以前の当社にはやや縦割り的な雰囲気があり、この雰囲気を無くすため、当社代表の発案からプロジェクトの検討がスタートしました。
また、世の中で“飲みニケーション”の効用が見直され始めているという風潮もあったため、以前から行われている季節ごとのイベントをまとめ直すなどしてプログラムを考え、この半年でいくつかのイベントを実行してきました。半年で社内の雰囲気がぐっと変わってきたと肌で実感しています。
働き方改革を実践するために、何か取り組みを行っていますか。
残業削減対策として、20時以降の会議は禁止とし、当該時間は予約システムに入力できないように制限を加えました。
代わりに、会社がランチ代を支給する形でランチミーティングを推奨しています。この取り組みにより、全社的に早く帰る習慣が身に付き始めていると感じています。
新卒および中途採用の状況について教えてください。
新卒は、毎年全体で10人前後を採用しています。営業/コンサルタント職とエンジニア職に分け、それぞれに適した方法を用いています。
まず営業/コンサルタント職は、大手の就職サイトや新卒紹介会社などいろいろなチャネルを使ったり、夏の1day型インターンシップを通じて母集団を形成しています。そして集まった学生には、個別対応を重ねていきます。
例えば、選社軸が固まっていない学生に対しては、会社選びのカウンセリングを行い軸づくりを手伝ったり、意欲が高い学生はいきなり役員面談をセットするといったことです。また、大手にばかり目が向いているであろう学生に、ベンチャーの魅力を伝えるセミナーも開催しています。営業/コンサルタント職はだいたい600人ほどに接触し、5人前後を採用しています。
エンジニア職は、選抜した社内エンジニア自らが、エンジニア志向の学生だけを集めた企業からスカウトを行う逆求人形式のイベントに出向き、目ぼしい学生にコンタクトするというものです。
さらに来社した学生に、若手エンジニアとカジュアルな面談をしてもらい、それ以降は志望度合いや選社軸などに応じて個別対応をしながら次のフローを考えています。最終的には代表が面接をして合否を決めています。
その後、内々定者を集めた説明会も行っています。この説明会では、改めて会社説明を行います。会社説明は選考フローの初めに1度行うきりで、その後学生はいろいろな会社を受け内定も得ているので、改めて開発部門の責任者から当社の製品や業務の特徴、ビジョンなどを伝え、意志固めを促す場にしています。選考段階で150人ほどに接触し、その中から5人前後を厳選採用しています。
中途は、概ね毎年30人前後を採用しています。すぐに必要という場合は人材紹介会社を活用し、中長期的なレンジでの採用は自社採用ホームページによるダイレクトリクルーティングを行っています。
工夫している点は、まずは選社軸や転職動機についてアンケートを取り、面接で掘り下げる切り口にすること。それと、当社の説明資料を標準化し、誰でも同様の説明ができるようにしていることです。
「『働きたい、働き続けたい』と思える会社になれるよう、先進的な取り組みを続けていきます」
採用全体における課題は何でしょうか。
採用はコスト高になっていることもあり、社員にリファラル採用の協力を求めています。従来から制度はありましたが、広く社内での認知を取るためにポスターを作製し社内に掲示するなど、周知を図っています。
採用における一番の課題は、当社の魅力を高め発信するブランディングの強化に尽きると思っています。そのため、人財開発室は広報担当ともよく連携しています。また、ブランディングを行うにしても発信する内容が重要なので、先ほど述べたとおり「eコミュ」を広報活動に有効活用しています。
こうして自社の魅力をさらに高め、社内外問わず「こんな会社で働いてみたい、働き続けたい」と思える会社になれるよう、今後も先進的な取り組みを続けていきたいと考えています。
ソフトブレーン株式会社
代表者:代表取締役社長 豊田浩文
設立:1992年
資本金:8億2606.4万円
従業員数:単体220人、連結1004人(2017年12月末時点)
事業内容:営業イノベーション事業
住所:東京都中央区日本橋1-4-1 日本橋一丁目三井ビルディング19F
売上高: 80億9100万円(2017年12月期)