社員の「目指すべき姿」を明確に伝える採用メッセージを発信【JKホールディングス】

万人受けする採用メッセージから、社員が「目指すべき姿」を明確に掲げて求める人物像を伝えるメッセージに切り替えて採用効率を大幅に高めることに成功したJKホールディングス。採用の変革をリードしてきた人材開発課長の大塩茂樹氏に取り組み内容などを聞いた。

JKホールディングス

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大塩 茂樹 経営管理本部 人事部 人材開発課 課長

「求める人物像を明確に示すことで、内定者のレベルが格段に上がり、質の向上につながっています」

求めている人物像や人事の方針について教えてください。

JKホールディングスは、住宅建材の専門商社であるジャパン建材を中核会社に、住宅関連事業を展開しています。JKホールディングスの売上高は約3300億円で、住宅建材卸売業界ではトップの実績を誇っています。

当社が求めている人物像は「人から学べる人」です。具体的には「人とよく接し、よく話を聞き、常にそこから何かを学ぼうとする貪欲な意志と謙虚な姿勢」が備わっているということで、入社した時は差がなくても、そうした姿勢の有無で10年後、20年後には大差がつくと考えています。

そして当社では、企業とは単に仕事をして給料を得るところではなく、仕事を通じて己を磨いて自己実現を果たしていく、いわば「人生道場」であるという考え方に基づく“「住」道”という全社員の行動指針を定めています。

社員の「目指すべき姿」「あるべき姿」を明確に掲げ、成果のみならず「仕事をする姿勢・態度」を評価基準にも落とし込んで昇格の要件とするなど、全社員の自己実現や成長を強く意識した人事制度としています。

実はこの“「住」道”を追求していくというメッセージは2015年度入社の新卒採用の広報要件から始まり、その後に行動指針や評価基準にも取り込まれていったのです。

学生に対する採用メッセージを変更した理由を教えてください。

以前の新卒採用では「快適で豊かな住環境の創造」という企業理念がイメージできるように、例えば、緑の自然をビジュアルに用いて万人受けするようなメッセージを発信していました。

その結果、多くの学生が応募してくれてはいたのですが、「東証一部だから」「業界No.1だから」といった安定を望むような学生が目立ちました。また、当時は人事担当者も少ない中、いわば玉石混交の多くの学生に対応していかなければならず、採用業務に大きな負荷がかかりました。

学生に有利な売り手市場に変わっていく中で、こうした採用活動を続けていてはいけないと考え、当社が本当に求める人材を採用していくためにメッセージを思い切って変えることにしました。

メッセージを変えた効果はいかがでしたか。

例年50人程度を採用していますが、メッセージを変えた15年度の採用では学生のエントリー数が前年から60%も減少し、どうなることかと案じましたが、結果的に最終選考に残った人数は前年と変わりませんでした。つまり、効率が倍以上良くなったということです。

あくまでも一つの見方に過ぎませんが、内定を出した学生の大学のレベルも格段に上がり、質の向上にもつながったと思います。 いずれにせよ「大手企業だから安心」的な発想の学生が応募の段階でかなり減り、“「住」道”という価値観に共感する学生が増えた実感があります。採用メッセージを変えることで効率的な採用の実現に大きな効果があったということです。

●JKホールディングス採用ページ

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行動指針の“住「道」”をトップページに掲げている

その他に工夫していることはありますか。

15年度の採用から、インターンシップを取り入れています。インターンシップを行う企業は年々増えていますが、当社も早い時期から取り組んでおく必要があると判断しました。当時は12月が採用広報の解禁でしたが、その直前の11月に1~ 2日の短期インターンシップを数回実施し、そこから4人が採用できました。

そして16年度採用から採用広報の解禁が3月に後ろ倒しとなったことによって、インターンシップを実施できる期間が拡大することになりました。

BtoBのビジネスを手掛けている当社は学生の認知度が高くありませんから、この期間を活用して学生の認知度を高めなければ致命的になります。そこで、インターンシップを夏、秋、冬の3コースに拡充しました。

結果としてはインターンシップに参加した学生から採用計画数の半数ほどが採用できました。17年度採用ではさらに6コースまで増やし、ほぼ前年度と同じ割合の人数がインターンシップ経由の内定者となっています。

インターンシップの内容を教えてください。

期間は1 ~ 2日の短期としています。全てのコースをつなげて1週間程度にすることもできるのですが、そうすると地方や体育会系の部活がある学生をはじめ、多くの学生にとって参加が難しくなってしまうと思います。

内容としては、「しごと道場」という名称で、業界研究や営業などの具体的な仕事について社員から話を聞いたり、自己分析などの講座をシラバス的に選べるようにしています。全6コース中、当社に関するワークショップが中心となっているのは2コースだけです。インターンシップの時期は、できるだけ学生の可能性を広げてあげることに協力したいと考えているからです。

インターンシップに参加して当社に興味を持った学生に対しては、週1回メールマガジンを送信し、ユーチューブなどを活用して情報提供を継続して会社説明会への参加などにつなげています。

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行動指針の“住「道」”をトップページに掲げている

会社説明会や選考過程で工夫していることはありますか。

2時間の説明会で全てを伝えようとしても、学生は内容を受け止めきれないと思いますので、内定までのプロセスの中で情報を適切に切り分けて伝えるようにしています。

説明会では企業理念や事業内容を説明し、グループディスカッションやグループワークでは仕事内容を題材として理解を深めてもらい、リクルーターとの面談では実際の現場の話を聞いてもらうといったようにです。

その際に心がけているのは、入社後にギャップを感じさせないように現実をしっかり伝えるということです。当社の営業担当は建設現場に赴くことも多々ありますが、学生は就職活動の時は本社ビルしか見ておらず勘違いをしてしまう恐れがありますので、実際の現場の様子をビデオで見てもらったりといったことも行っています。

以前は入社後にギャップを感じて早期退職してしまう社員もいたのですが、現在では入社3年以内の退職率が非常に低くなっています。

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「経営トップの方針で人事制度の改革に取り組んでおり、人事スタッフは最近2年ほどで倍増となっています」

中途採用ではどのような人材を獲得していますか。

専門的なスキルや資格を持つ人材を採用しており、職種や採用人数に応じて求人広告や人材紹介などを組み合わせて利用しています。

当社では新規事業にも力を入れており、既存の事業以外に新しいビジネスを立ち上げていく際には資格保有者等の即戦力の人材を中途採用していく必要があります。

また、新卒、中途を問わず、採用広報には既存の採用メディアに加えて、Webマーケティングの手法を取り入れてネット広告も活用していきたいと考えています。

採用方針の見直しやインターンシップの拡充などを進める上で人事部門の負担も大きかったと思いますが、どのような体制ですか。

人事部門は現在15人で、最近2年ほどの間でほぼ倍増となっています。マイナンバー制度やストレスチェックの義務化などのように期限が決まっている中で進める必要のある業務が増えていることもありますが、経営トップの方針によって採用を含めて人事制度の改革に取り組んでいることが体制強化の理由としては大きいと思います。

現場で頑張って成果を上げた社員がより報われるような納得性の高い仕組みへと見直しており、人事部門は現場感覚を持ちながら社員からも理解が得られるように進めていかなければなりません。“「住」道”というメッセージを軸にして採用活動を変えてきたことも、そうした人事全体の取り組みの一環です。

JKホールディングス株式会社

代表者: 代表取締役社長 青木慶一郎
設立: 1949年 
資本金: 31億95百万円
従業員数: 1607人(子会社への出向者含む)
事業内容: 総合建材卸売、合板製造・木材加工、フランチャイズ、総合建材小売、住宅建設、その他関連事業
本社: 東京都江東区新木場1-7-22
売上高: 3302億80 百万円(2016年3月期、連結)
http://www.jkhd.co.jp

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