2023年度の春闘で、賃上げを実施予定の企業は80.6%あることが、東京商工リサーチの2023年度「賃上げに関するアンケート」調査(第2回)でわかった。実施予定の企業は2年連続で8割台となり、賃上げを実施する企業の割合はコロナ前の水準に戻っている。
来年度(2023年度)、賃上げを実施予定かどうかを聞き、4131社から回答を得た。「実施する」は80.6%(3333社)だった。2022年度に賃上げを「実施した」企業の82.5%を1.9ポイント下回るが、コロナ禍前と同水準の8割台を維持した。
【賃上げ動向】
2023年度(予定) 実施する80.6%、実施しない19.3%
2022年度 実施する82.5%、実施しない17.4%
2021年度 実施する70.4%、実施しない29.6%
2020年度 実施する57.5%、実施しない42.4%
2019年度 実施する80.9%、実施しない19.1%
規模別にみると、「実施する」は大企業の85.5%(478社中、409社)に対し、中小企業は80.0%(3653社中、2924社)で、5.5ポイントの差がついた。2022年度は「実施した」大企業は88.1%、中小企業は81.5%で6.6ポイントの差があった。
産業別にみると、「実施する」の割合が最も高かったのは、製造業の85.9%(1319社中、1134社)。次いで、卸売業81.8%(931社中、762社)、建設業81.2%(511社中、415社)、情報通信業80.4%(235社中、189社)の順となった。上位4産業は「実施する」の割合が8割を超えた。
【産業別 2023年度の賃上げ実施予定】
農・林・漁・鉱業 76.1%
建設業 81.2%
製造業 85.9%
卸売業 81.8%
小売業 73.0%
金融・保険業 70.9%
不動産業 61.6%
運輸業 80.4%
情報通信業 80.4%
サービス業 74.0%
規模別にみると、「賃上げ実施率」は10産業すべてで大企業が中小企業を上回った。
賃上げを「実施する」と回答した人を対象に、賃上げ率(2022年度比)を聞き、2104社から回答を得た。1%区切りでは、最多は「3%以上4%未満」の29.9%(630社)だった。次いで、「2%以上3%未満」が23.4%(493社)、「5%以上6%未満」が20.2%(427社)と続く。
賃上げ率「5%未満」が70.7%(1489社)で、連合が掲げる「5%以上」の賃上げを実施予定の企業は29.2%にとどまり、3割を下回った。
ただ、東京商工リサーチでは、「2022年10月実施のアンケートで、2023年度に“5%以上”の賃上げを予定している企業は4.2%だった。だが、急速な物価高の進行で、2023年度の賃上げ率を引き上げる企業の割合は短期間で25.0ポイント増と大幅に上昇した」と指摘する。
賃上げを「実施する」と回答した企業に賃上げ内容について聞き、3278社から回答を得た。最多は、「定期昇給」の77.7%(2548社)だった。次いで、「ベースアップ」の50.0%(1640社)、「賞与(一時金)の増額」の35.2%(1156社)と続く。
「ベースアップ」実施企業は、2022年10月(39.0%)から11.0ポイント上昇したが、全体では実施企業は半数にとどまった。
賃上げを「実施しない」と回答した企業に理由を聞き、747社から回答を得た。最多は、「コスト増加分を十分に価格転嫁できていない」が58.0%(434社)で、賃上げの予定がない企業の約6割が「価格転嫁」を理由に挙げた。
次いで、「原材料価格が高騰しているため」53.9%(403社)、「電気代が高騰しているため」46.4%(347社)、「受注の先行きに不安があるため」45.9%(343社)と続く。
「増員を優先するため」は13.3%(100社)、「設備投資を優先するため」は6.0%(45社)にとどまった。
調査は、2023年2月1日~8日、インターネットによるアンケート調査を実施し、4465社の有効回答を集計、分析した。
※賃上げの実態を把握するため、「定期昇給」、「ベースアップ」、「賞与(一時金)」、「新卒者の初任給の増額」、「再雇用者の賃金の増額」を賃上げと定義した。
資本金1億円以上を「大企業」、1億円未満(個人企業等を含む)を「中小企業」と定義した。
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