人材採用

「新卒年収710万プログラム」で、次世代リーダー候補になりうるZ世代の斬新な発想を呼び込む【GMOインターネットグループ】

GMOインターネットグループは、2023年度入社の新卒採用から、グループ企業110社において「No.1&STEAM人財採用~新卒年収710万プログラム」をスタートさせ、次世代リーダーを確保する戦略を鮮明に打ち出した。

このプログラムは、高度な専門知識や技術を持つことに加え、既存の枠組みに捉われない自由な発想で新しい事業やサービスを生み出すなど、従来の新卒社員の倍以上のパフォーマンスを発揮できる優秀な人財に対して年収710万円(2年間)を約束するもの。

そこで、人事総務部兼グループ人事部 エグゼクティブリードの谷下田まどか氏に、内容の詳細や経緯、採用での手応えなどについて聞いた。(取材・執筆・編集:日本人材ニュース編集部

※内容は取材当時(2023年3月)のものです。

GMOインターネットグループ
谷下田まどか 人事総務部兼グループ 人事部エグゼクティブリード

「新卒年収710万プログラム」の内容と経緯

まず、「No.1&STEAM人財採用~新卒年収710万プログラム」の内容について教えてください。

当グループはインターネット業界に位置していますが、まだ始まって30年ほどの若い産業であり、まさに走っている真っ最中。誰もゴールに到達していません。
当社は日本でこの産業を牽引していく存在であり続けるために日々奮闘していますが、そのためには果敢にチャレンジし続けることが不可欠です。

そういった背景の中、グループ全体としてZ世代と呼ばれているような若い世代の発想や感覚、アイデアを呼び込まなければなりません。
我々旧世代では想像もつかないような斬新でイノベーティブな発想、アイデアで次のインターネット産業をリードしてもらう必要があると考えています。

そこで、既存の枠組みにとらわれない自由な発想で新しい事業やサービスを生み出すといった、従来の新卒*パートナー(*パートナー:GMOインターネットグループでは、社員をパートナーと呼ぶ。)を超えるパフォーマンスを発揮できる優秀な新卒人財に対して、2年間、710万円の年収を約束する「No.1&STEAM人財採用~新卒年収710万プログラム」(以下 新卒年収710万プログラム)をスタートさせました。
目的は、次世代のリーダーを担える人財を確保することです。

2年間のプログラム終了後、実績を踏まえ再評価を行い、待遇の見直しを実施します。
3年目以降はそれまでより上の給与テーブルで活躍してもらうことを想定していますが、評価の結果によっては実力に見合った給与テーブルに移行してもらう場合もあります。

「新卒年収710万プログラム」を始められた経緯について教えてください。

新型コロナウイルス感染拡大が契機となりました。当社はどこよりも早くワクチンの集団接種やリモートワークを打ち出して話題となりましたが、このリモートワークはきちんと仕組みをつくって行うことで生産性が上がり、加えて将来的な家賃などのコストを削減できることが分かったのです。

そこで、その余剰コストを人財への投資に活用し、待遇を日本一の会社にしようと「未来家賃削減&RPA・AI・ロボット導入の結果としての給与No.1プロジェクト」をスタートさせました。

業界をリードする企業グループとして、常に新しいサービスを打ち出し続けるためには優秀な人財を呼び込み続けなければならず、そのためには待遇を良くする必要もあるからです。
そして、グループ代表の熊谷が「営業利益率が18%を超えた分はパートナー(社員)に還元し、結果として給与No.1を達成させる」と宣言しました。

「新卒年収710万プログラム」もこのプロジェクトの一環であり、日本企業の1年目の年収No.1が700万円だったことから、10万円を加えて日本一の710万円にしました。まずは新卒社員の給与から日本一にしようという取り組みからスタートしました。

求める人財像と成果

「新卒年収710万プログラム」で求めているのはどのような人財ですか。

高度な専門技術や知識、能力を持ち、実務に反映できる“*STEAM”人財(*STEAM:Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Arts(教養)、Mathematics(数学)の頭文字。)です。 例えば、機械学習や深層学習、コンピュータサイエンス、ソフトウエアエンジニアリングの領域で査読付き論文の投稿や研究会での発表経験、ビジネスコンテストでの入賞経験、起業や事業立案経験、弁護士や税理士などの資格取得者といった優れた実績を持つ学生です。

つまり、自分の強みを理解し、やりたいことに対してすでに自らアクションを起こし、一定の成果を上げていることを重視しています。
評価するのは成果レベルそのものよりも、その成果に繋げたプロセスやマインドセットをより重視していると言えます。

「まずはやってみよう」と自ら行動を起こす、「失敗はチャレンジの証」と捉えて失敗を恐れない、型にはまらない自由な発想でアイデアを生み出す、人の生活を豊かにしたいと真剣に考える、といった資質です。
新たなサービスや事業を生み出すには、レールを引く前の、荒野を切り拓く段階から取り組まなければなりません。“0⇒1”に臆すどころか喜んでチャレンジしていくマインドがなければ務まらないと考えるからです。

そして、当グループの企業理念である「スピリットベンチャー宣言」を核とする「GMOイズム」の理解・共感も不可欠であり、選考においては最も重要視していく部分になります。

なお、当グループではインターネットサービスをつくるエンジニアやクリエイターだけでなく、事業会社として営業やマーケティング、カスタマーサポート、バックオフィスといった様々な職種を必要としています。
したがって、本採用においては大きなくくりでの職種カテゴリは打ち出しておりますが、特定の職種を求める形にはしておらず、学生がやりたいことを前提として自分の一番の強みをプレゼンテーションしてもらい、当社と一緒にできることを話しましょうといったスタンスで臨んでいます。

それほどの優秀な人財を迎えるからには、そのような人財がワクワクできるような仕事の環境を用意しなければなりません。
大きな宿題ではありますが、当グループの110社ではインターネットに関わるあらゆるサービスや最先端のテクノロジーを扱っており、それぞれの人財がやりたいことに必ずタッチできる環境を用意しています。

実際に選考を終えて、どういった学生が何人採用できたのでしょうか? また、どんな手応えがありましたか?

約4000人の学生からエントリーがあり、最終的にグループとして26人を採用できました。非常に良い結果であったと思います。
初めての試みとしてどんな学生に来てもらえるか不安がありましたが、想定以上のユニークかつ優れた能力の持ち主に集まってもらえました。

採用した26人の中には、ブロックチェーンに関する論文を発表し海外で表彰された学生や、NFT(非代替性トークン)に習熟し、サービス化の提案をぶつけてくれた学生などがいます。
従来の新卒採用においては、エントリーシートや履歴書といった書類をこちらから指定して提出してもらいましたが、「新卒年収710万プログラム」では応募者が自作のプロダクトや企画書といったいろいろな成果物を自ら持ってきていました。それだけ自信があるからだと思いますが、非常に新鮮で面白かったですね。こちらも思わず身を乗り出すほどでした。

その中で難しいと感じているのは、“710万円”が一人歩きしてこの採用の本質が伝わり切らないことです。
面接には非常に時間をかけましたが、いざ内定を出してもプレッシャーが大きすぎると辞退されることもありました。したがって、いかに本質を伝えるブレないメッセージを出すかが重要であると感じています。

「新卒年収710万プログラム」のインパクトと課題

新卒入社者の年収が710万円になるということに対して、社内外にも相当なインパクトがあったのではないかと思います。

一つ上の先輩の倍ほどの額ですから社内では大きな反響がありましたが、新しいチャレンジをするのですから、一定の反応があることは想定内でした。
「新卒年収710万プログラム」を打ち出す前に給料No.1を掲げて、自分たちで成果を上げて実現させていこうという気運をつくり始めていたからです。

また、既存パートナー(社員)の年収も710万円以上に引き上げる編入プログラムも打ち出しており、社歴等は関係なく誰でも手を挙げるチャンスがあります。
選考はこれからですが、自分も負けていられないと、チャレンジに立候補するパートナー(社員)もおり、社内をいい意味で揺さぶる効果もあると感じています。

社外にもインパクトはあったようで、この年収がランキングに取り上げられたこともあります。同業他社の人事担当者からいろいろ聞かれることも増えました。

今、世の中はコロナや物価高騰、貧困、分断化などいろいろ問題があって閉塞感もあるように思います。
創業して30年を超えましたが、こういう時こそGMOインターネットグループがまだまだベンチャーとして既成概念にとらわれず、やんちゃなことをして世の中を面白く、元気にしていきたいと思っています。

貴社が採用を行う上で大切にしていることは何ですか。

採用において、最も大切にしていることは、私たちは「選ぶ側ではなく、選ばれる側である」ということです。
当グループの最も重要な採用ポリシーのひとつと言っても過言ではありません。
数ある企業の中から当社を選んでもらえるよう、お互いが納得をして選考に進み、私たちも常に見定められているという緊張感のもと会わせてもらっています。

当グループが新卒採用で大事にしてきたことは、人数ではなく質にこだわるということです。
採用内定は、面接した面接官全員が〇でなければならず、一人でも×がいれば採用できません。なぜなら、全員で荒野を進んでいかなければならないからです。
ですから、仮に採用の結果が0人であったとしても、仕方ないことだと割り切っています。

面接の練習をして上手に受け答えする学生も少なくありませんが、そういうところは見ていません。
例えば、部屋に入る前にコートを脱いで、挨拶して「おかけください」と言われるまで座ってはいけない、などのいわゆる一般的な面接ではマナーがなっていない、と言われるところも問題視しません。マナーは入社後、いくらでも学ぶ機会があるからです 。
そんなことより、自身がどんなことに感動し、ワクワクし、インターネットの未来を語ってくれるか、を聞いています。
入社がゴールではないので、同じ船に乗って長く一緒に戦っていける仲間であるか、お互い見極めるために行うのが面接であり、このような心構えでこちらからも採用に臨むことが、学生にとっても我々にとってもミスマッチが起こりにくく長い目で見て採用を成功させる秘訣だと考えます。

GMOインターネットグループ

代表者:代表取締役グループ代表 熊谷正寿
設立:1991年5月24日
資本金:50億円
従業員数:7317人
事業内容:インターネットインフラ事業、インターネット広告・メディア事業、インターネット金融事業、暗号資産事業
本社:東京都渋谷区桜丘町26番1号 セルリアンタワー4~14階・総合受付11階
売上高:2456億円(2022年12月期実績)

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