Z世代は相手との距離を縮めるのが苦手? Z世代との関係を深めるには【Z世代を知る!コロナ禍を生きる若者との付き合い方】

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「Z世代の部下とはそれほど親しいつもりはなかったのに、身の上話をしてくれた。そんなに信頼してくれているのか!と思い、食事に誘ってみたものの、あまり乗り気ではなさそうで少し驚いた―」

Z世代は、人当たりはいいが、何を考えているのか理解できず、いまいち距離感を掴めないでいる40~50代の方が多くいるようです。しかし、当事者であるZ世代からすれば、職場で親しくすることと、食事に行くことはまったくの別物として線引きされているのかもしれません。

今回は、そんなZ世代との関係の作り方について、就職・採用アナリストの斎藤幸江氏に解説してもらいます。(文:斎藤幸江、編集:日本人材ニュース編集部

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“いい人”ぞろいのZ世代

職場や大学の関係者から、「いい子が多い」、「好印象の若者」など、Z世代に対して、人当たりの良さを評価する声を、よく聞きます。実際に接してみても、彼らとのコミュニケーションは、率直で気持ちよいものです。

「実は、コミュ障なんですよね」「なんか、初対面の人って、緊張しちゃって」、そう言いながらも、目を合わせて率直に話す人がほとんどで、え?本当に話すのが苦手なの?と驚くこともよくあります。こちらからの質問や問いかけに、真摯に対応するのも、彼らの特徴です。

本稿の編集担当者は、実は25歳でまさにZ世代。編集者氏に「中からみた本連載への意見」を聞いたり、「Z世代について、原稿を書いているんだけど……」と国内外の若者数名に声をかけたりしてみましたが、みな一様に、「お役に立てるのなら、なんでも聞いてくださいね!」と笑顔で応じてくれました。

好意に甘えて、あれやこれやと質問を投げかけてみましたが、「これは、ちょっと個人的に立ち入りすぎかも?」と思われるものにも、丁寧かつ正直に答えてくれるし、こちらから聞かなくても、「そこまで話してくれるの?」と驚く回答が出てくることもあります。

相談の現場でも、こういうことはよく起こります。学生に「とても感じの良いコミュニケーションをとるよね? 何かきっかけがあるのかな?」と聞いた時のことです。会ってまだ十数分しか経っていないにもかかわらず、「私、実は中学時代に軽くいじめを受けて不登校になったんです。その時に経験した不愉快な対応を、自分は他人に絶対やらないと決めまして〜」と“告白”されたことがありました。

そんなにすぐに自己開示をしちゃうの? とびっくりしたのですが、みなさんも、同じような経験はないでしょうか?それほど、親しくしているつもりはなかったのに、赤裸々に過去のネガティブな経験を話してくれて、意外に感じた、そんなに信頼してくれるのかと嬉しくなった……。 40〜50代の方から、時折、そんなエピソードを耳にします。

ネット以前は、「情報量」と「親しさ」が、相関

ここで留意したいのが、「自分のことを忌憚なく話すことと親しさは、別物」とZ世代が捉えている点です。なんでも話す=距離が近いとは、彼らは考えていないのです。 では、ネット以前と彼らの、何が違うのか。その点をみていきましょう。

インターネット、特にSNS以前に人間関係を構築してきた世代は、「その人のことを知れば知るほど、相手との距離は縮まる」と考えています。また、「相手に自分のことを躊躇なく語れるのは、距離を縮めてから」とも思っています。

ネット以前は、何も知らない状態から相手について、時間や労力をかけて徐々に情報を集めていくことが、人間関係の構築に不可欠でした。そうした努力が人々の距離を近づけていたわけです。

たとえば、90年代くらいまでは、こんなことがよく起きました。

契約をとるために競合他社とのコンペになった。取引先担当者は、配属されたばかりで情報がなく、落とし所がわからない。社内のさまざまな部署にリサーチをかけたら、隣の部署の課長が、大学の同期だとわかった。アドバイスを求めたら、「手堅く攻めるより、新規性を打ち出したほうがいい」とのこと。それを踏まえてプレゼンしたら、まさにツボ! 成約したのを機に種明かしをすると、「それは嬉しい。同期も交えて今度食事でも」という展開になった。その後は、お互いのニーズのすり合わせが速やかになり、大口取引への道筋も見えてきた!

インターネットがない時代は、相応の努力なくして人物情報は得られませんでした。仕事だけでなく、プライベートでも、周囲から情報を集めたり、あるいは会話の中で興味を持って深掘りをししたりと、相手を積極的に知ろうとする態度が、一般的には、肯定的に評価されていたわけです。

「情報流出」の怖さを経験しているZ世代

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デジタルネイティブのZ世代は、相手の情報を収集するのに、「努力」はさほど必要ではありません。むしろ、集めるつもりがない情報が入ってきたり、知られたくないことが簡単に流布してしまったりなど情報化社会でのネガティブな経験の持ち主が、数多くいます。

本稿の編集者氏も、「高校生の時にSNSが爆発的に普及して、Twitterでもバイトテロが話題になった世代です。変なことをする=炎上の可能性もあるという危機感めいたものは、共通で持っていると思います」と話していました。こうした経験を持つ彼らは、情報の使い分けに非常に長けています。

編集者氏も、「Twitterは、なんとなくの繋がりを作るために使います。たとえば、自分が普段関わらない範囲の人たちは、何をしているんだろう?と把握するために、Twitterを見ている気がします。広い範囲での情報収集や他の人の動向が気になるから使っているというのが、Twitterです。クローズドな、オフラインと変わらない感じでのコミュニケーションツールは、LINEやInstagramですね。多くはないのかもしれませんが、匿名の趣味用のアカウントを持ったり、愚痴るための裏アカを作ったりという使い分けをしている人も一定数います」と話していました。

シチュエーションやツールごとに、目的は何か、自分の立ち位置は発信者、受信者、双方向のいずれなのか、双方向の場合は、両者のバランスや話題の範囲や深さをどれくらいにするのか、といった枠組みを設定し、コミュニケーションを図る––。それが、私が日々学生や若者と接して感じた、彼らのスタイルです。SNSだけでなく、日常生活でも状況別にコミュニケーションの線引きは行われています。

ここで発信しても情報は流出しないし、的確な情報を提供できれば、相手のニーズに応えたり、そこから導き出されるフィードバックやコメントに期待したりといったメリットが生まれる。そう感じられたら、彼らは、親しさとは無関係に、プライベートも含めた話題を積極的に話します。相手への親しみではなく、必要性と守秘義務的な安全性のいかんによって、Z世代の発信者としての情報量や内容量が変化する、と考えていいでしょう。

ひとへの興味が生まれにくい

ハキハキと自分のことをよく話してくれるから、親しくなったのだと思い込んで、こちらもプライベートな話をしたり、気軽に飲食に誘ったりすると、予想外の反応に戸惑うことになります。

「そっか、じゃぁ、今度、場所を変えてまた、いろいろ話そうね」と言った途端、笑顔が消えて、「あ、はい。えぇ、まぁ」と煮え切らない反応をされてしまう。あるいは気持ちよく返事をしてくれたのに、一向に一緒に食事に行こうとする気配が見えない。そんなことが実際に起きています。

彼らにしてみれば、「あの時、あの状況では必要だったから、充分に情報を提供した。しかし、食事に行って続きをする意味や目的がわからない」と感じて敬遠するのです。SNSの前の世代は、相手との距離が縮まれば、仕事にも好影響が期待できると考える癖がついていて、とかく「仲良くなろうとするスイッチ」が入りがちです。しかし、Z世代はそこに強い違和感を感じてしまう。その顕著な例が、「おじさん構文」が嫌がられる理由ととらえています。

Z世代にとって、毎日はシチュエーションとそれに合った役割・行動の集大成。ある場面で共有した情報はそこで完結しており、それを異なる状況に引っ張るのは、不自然です。彼らは、自分という人間トータルに対して理解や共感を求めることが少なく、逆に、他人に対し、状況や役割を超えた興味や関心をほとんど持ちません。

Z世代の人との会話を振り返ると、質問と答えのバランスが、極端に悪いのです。聞かれたことには答えるし、必要だと思ったことについては質問もします。しかし、目の前の相手がどんな人なのかを探る質問が出てくることは、ほとんどありません。世代が異なるからだと考える人もいるでしょう。

しかし、そうではないようです。キャリア科目の授業で、相手を知るためのグループワークを時々実施していますが、ちょうどZ世代が登場する数年前から、内容が急に浅くなりました。その点を指摘すると、「相手への興味を深めるためのきっかけがどこにあるのかが、わからない」というのです。

プライバシーがいとも簡単に暴かれ、人間関係が急に崩壊してしまう世界に子供時代からいたせいか、相手に対して真っ直ぐな興味や関心を向けて踏み込んでいくことに躊躇してしまう。それが続いた結果、相手を知りたいという純粋な気持ちが生まれにくくなった、というのが私の見立てです。

それでも、時々、彼らの興味のアンテナを揺さぶる出会いはあるようです。
どうしてその道を選んだんですか?
そんな経験をして、立ち直れたんですか?
仕事に限定した内容ではなく、人への関心を伺わせる質問が彼らから発せられたら、Z世代が距離を縮めようとしている証です。それまでは、快活にコミュニケーションを取れていても、親しくはないと考えた方が、いいでしょう。話の内容を分析しながら、相手のこちらへの興味や関心の有無を図りつつ、いきなり踏み込まないでじっくりと関係を探っていくのが、彼らとの密な人間関係の構築につながります。

親しくなることは、必要なのか

柔軟な発想が生まれるケミストリーは、お互いをよく知るチームから生まれるという考えを、ネット以前の人は持っています。かくいう私もそのひとりです。しかし、「相手をよく知れば知るほど、良い仕事ができる」という考え自体が、Z世代には受け入れられていない可能性は、大きいと考えます。

Z世代は何を考えているか、わからない。人当たりはいいが、なんだか距離感をうまくつかめない。そんな不満が職場から聞こえてきますが、彼らにしてみれば、「仕事はちゃんとやっているし、気持ちよく対応しているのだから、十分では?」と感じているのかもしれません。

ジョブ型雇用が進んでいけば、「仕事上の付き合い」という割り切りは、さらに進んでいくでしょう。振り返ってみれば、私たち自身、インターネットの登場以来、その影響を受けて、初対面の人と気兼ねなく打ち解けたり、仕事関係の人と気軽に雑談を楽しんだりという機会も、年々、減ってきています。

また、そういった変化を実は、否定することなく受け入れてもいます。世代を超えて、人を深く理解し、絆を作るスタイルが失われており、Z世代はそれをより強く体現しただけという見方もできそうです。

過去の価値観と今のスタイルの間で落とし所を定めないまま、過去のフィルターでZ世代に違和感を感じているのなら、おそらく悩むだけ無駄でしょう。本当に求められている職場での人間関係とは、どのようなものなのか。既成概念を持たずに真剣に検討し、それを共有することが、急務ではないでしょうか。

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就職・採用アナリスト/就職情報会社勤務後に独立。働く若者と職場を元気にするをモットーに、授業科目・セミナー講師、寄稿等。 某私大にて、学生が選ぶベストティーチャー(大規模授業)受賞(2015年度、2019年度、2020年度)。近著に「キャリアデザインの教科書」(労働調査会 共著) 国家資格キャリアコンサルタント。

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