人材採用

売り手市場化で採用手法の見直し必至(中途採用編)

再び採用スケジュールが変わる新卒採用、人材不足が慢性化している中途採用、多様な労働力の活用などの課題に対して、従来型の採用手法では人材確保が難しくなっている。2016年の日本の雇用情勢と企業の人材採用数の予測を、企業の人材採用を支援する主要人材コンサルティング会社100社を対象にアンケート調査で聞いた。(中途採用編)

日本人材ニュース

目次

中途採用はグローバル人材の奪い合いが活発化

中途採用でも売り手市場化が一層進むことになりそうだ。ホワイトカラーの人材紹介で上場するジェイ エイ シー リクルートメントの松園健社長は「TPPやAEC(ASEAN経済共同体)など国際関連情勢の影響が急速でないにしろ緩やかに進み、引き続き海外に進出する日系企業はアジアに限らず増加傾向を示すと考えられる」

「特にグローバル事業を進める幹部人材の需要が増加することが見込まれ、全般的に国内を含めたグローバル人材の奪い合いが活発化すると予想する。内需も外国人の観光需要や消費需要に伴って、サービス業を中心に語学系人材のニーズは高まっていく」と展望する。

幹部人材やグローバル化に対応できるバックオフィス人材の採用

リクルートで転職情報サービスを提供する佐藤学リクルートキャリア執行役員中途事業本部本部長も「中国経済の動向によってグローバル経済に影響が出てくることが予想されるものの、既存事業の拡大、新規事業の開発を急ぐ企業の人材不足感は強く、採用意欲は2015年同様に高止まりが続くと予想する」

「また、転職市場の活況を受けて個人側の転職意欲も高くなっているが、企業の求人ニーズはそれを上回り、引き続き転職者有利の状況が続くとみている」と売り手市場化を予測する。

昨年との違いでいうと2015年は若手人材の採用が活発だったが、2016年は若手人材をマネジメントする幹部人材やグローバル化に対応できるバックオフィス人材の採用が活発になるという声が上がる。

企業競争力を高めるためには人材の強化が急務

●現在の企業競争力と今後強化すべきもの

日本人材ニュース
(出所)労働政策研究・研修機構「構造変化の中での企業経営と人材のあり方に関する調査」

従来の採用手法では人材を確保できない企業が続出

売り手市場化でどの企業も求めるようなスキルや経験を持った人材に複数のオファーが集中する。そのため従来の採用手法では人材を確保できない企業が続出するだろう。

このような競争から抜け出すためには、まずは経営理念や価値観を整理して社内で共有し、自社の魅力や自社で働くメリットをより積極的にアピールしていく必要がある。 採用方法の見直しのための条件としてインテリジェンスの峯尾太郎取締役兼常務執行役員は、「採用要件の見直し」「採用ルートの多重化」「候補者に対する目利き力」「面接官の口説き力(面接力)」の4点を挙げる。

外部労働市場を意識してキャリアアップの機会、賃金や処遇の見直し、働きやすい環境づくりなどの対策を講じる。また、求める人材に応じた特徴的な人材紹介会社や転職求人サイトの利用、SNSを活用したダイレクト・リクルーティング、社員紹介など様々な採用手法を活用する。

そして他社より早く内定を出すための採用プロセスも見直さなければならない。採用後には人材育成という観点から、より早いキャリアアップの機会を与えることも候補者には魅力的な条件となる。

全社で採用に取り組むような社内の協力関係を作り上げる

LinkedInなどのSNSを活用したダイレクト・リクルーティングを本格的に導入できるかも一つのポイントだ。ただし、ダイレクト・リクルーティングはコストがかからずに人材を採用できると考えがちだが、この認識は間違っている。

確かに人材会社に支払うコストは削減できるが、採用担当者が人材会社と同じ働きをしなければならないため採用担当者を増員する必要が生じてくる。

ダイレクト・リクルーティングを実現している大手外資系企業では、採用担当は7~8人以上の体制をとっている。これと同等の体制をつくり出せるかどうか、採用責任者にとってはチャレンジとなるだろう。

同時に人材紹介会社との関係の見直しにも着手したい。リクルーティングのパートナーとして担当コンサルタントと密接な関係を築くために、求人情報だけでなく事業内容や組織風土まで理解を深めてもらう必要がある。

そのためには選考結果などを詳細にフィードバックして、コンサルタントが推薦してくる候補者の面接通過率を上げていかなければならない。

採用手法を大きく変えていくためには、採用担当者だけが頑張るのではなく、全社で採用に取り組むような社内の協力関係を作り上げていかなければ成功することはできないだろう。

最適な採用ツールや人材会社を選択して活用

日本人材ニュース

多様な労働力の活用でシニアと女性活躍推進の潮流

アルバイト・パートの採用数については、他の雇用形態よりも増加を予測する回答が最も高く74%となった。一方、人材派遣は60%と最も低かった。しかし昨年半ば、改正労働者派遣法が成立して様々な規制が取り払われたため今後、人材派遣を利用する企業は増加しそうだ。

少子化による慢性的な人材不足によって、シニアや女性の労働力活用は一層進みそうだ。売り手市場化と法改正によって、これまで働く場を見つけられなかった柔軟な働き方を求めるシニアや女性が、アルバイト・パートや人材派遣といった雇用形態で働くことも増えそうだ。

シニアの活用では専門性の高い人材を派遣や請負で積極的に採用するケースも目立ってきている。

シニアや女性を社員として確保する動きもでてきている。人材不足に陥っている流通・サービス業や製造業では、一足早くパート・アルバイトを契約社員や地域限定社員として社員化しはじめている。ホンダは昨年12月、社員の定年を現状の60歳から65歳に引き上げる方針を発表した。

女性活躍の推進の取り組みとして、短時間労働、在宅ワーク、モバイルワークなどの導入を検討する企業も多く、生産性の高い優秀な人材の定着施策ともなっている。

このような多様な雇用形態の労働力を活用するためには、適切な評価システムと明確なフィードバックが不可欠だ。これまでの新卒からの育成システムを前提とした能力主義から、成果を基準にした評価システムへと組織全体の変革が起き始めている。

人手不足の分野を中心に求人が増え続けている

●求人広告掲載件数(対前年同月比)

日本人材ニュース
(出所)全国求人情報協会「求人広告掲載件数等集計結果」

主要人材コンサルティング会社に聞く 「企業の人材需要と採用の課題」(後半)

①企業の人材需要
②企業の人材採用の課題
③人材業界の展望、自社の事業展開

リクルートキャリア(現リクルート) 
佐藤学 執行役員 中途事業本部 本部長

①中国経済の景気動向によって、グローバル経済に影響が出てくることは予想されるものの、既存事業の拡大、新規事業の開発を急ぐ企業の人材不足感は強く、採用意欲は2015年同様に高止まりが続くと予想している。また、転職市場の活況を受けて個人側の転職意欲も高くなっているが、企業の求人ニーズはそれを上回り、引き続き転職者有利の状況が続くとみている。

②人材を採用するために、採用したい人材の要件を明確に示することと、採用したい人材へ自社の情報や魅力をいかに伝えるかなど様々な工夫が必要となると考えている。

③事業を通じて社会に貢献し、お客様から選んでいただける存在となるために、私たちが提供しているサービスが目の前にいるお客様のためになっているかをとことん突き詰めていきたいと思っている。また、業界全体で切磋琢磨して人材サービス産業を良くしていきたいと考えている。

ロバート・ウォルターズ・ジャパン 
デイビッド・スワン 代表取締役社長

①特にバイリンガル人材を求める企業では16年を通じて活発な採用活動が続くと予想される。消費財・小売業界では、優秀な営業職人材の不足が深刻化。製造業でも、化学、アプリケーション、セールスエンジニアの採用競争が激しくなり、医療・医薬・バイオテクノロジー業界では、品質保証・薬事規制のスペシャリストの需要が特に高まるだろう。ファイナンシャル・プランニング&アナリスト(FP&A)、サプライ・プランニング、人事採用のスペシャリストに対する需要もほとんどの業界・分野で高まるだろう。

②採用時には、候補者が複数のオファーを受けている可能性を考慮し、自社で働くメリットを積極的にアピールする必要がある。人材確保のため、候補者の年齢・経歴に対し一段と柔軟に対応する姿勢が必要になってくるほか、社内での育成を視野に入れ、若手のプロフェッショナルを採用する体制も整えるべきだ。

③特にバイリンガル人材を求める企業を中心に、2016年を通じて活発な採用活動が続くと予想される。クライアント企業の人材不足に対応するためにも、当社は2016年も一段の人員増強を進めていく予定だ。

プロフェッショナルネットワーク 
田口朗 人材紹介事業部長

①企業のキャリア人材需要は引き続き堅調に推移すると思われる。ただし、その多くが特定の年齢層の需要に偏っており、需要に供給が追いつかない状況、求められる年齢層、経験、キャリアと求職者層のアンマッチ状態が生じて久しい。この状況は今後も続くのではないかと思われる。

②企業が特定の年齢層にこだわった求人を続ける限り、多くの企業でなかなか必要な人材が採用できない状況が続くのではないかと思われる。人事制度を柔軟に設計、運用し、ダイバーシティを推し進めて、活用できる人財の幅を拡げる努力がなお一層求められるのではないか。

SUCCESS21 
仲直樹 エグゼクティブコンサルタント

①昨年の消費財業界は、インバウンド需要の高まりやラグジュアリーブランドが新店舗を立ち上げるなどもあって、販売職の採用が引き続き盛況だった。この勢いは今年も継続する考え、業界経験者や語学ができるスタッフを求める傾向はより一層強まると思われる。

②業界全体の募集意欲が高い分、既存社員へのしっかりとしたフォローを怠ると、次から次へと人材の流出が起きる危険性がある。人材紹介などを通じた採用活動を行う場合は、担当コンサルタントに対する詳細な情報提供やスピード感を意識した選考日程、選考結果がNGの場合の明確な理由を伝え、フットワークの軽さ、歩み寄りができるスタンスなど優先的に人材を紹介される関係性の構築が重要と考える。

③密なお付き合いの継続性。企業の潜在的な情報を上手く引き出すための働きかけをまず当社が積極的に行っていくことが重要と考える。

MS-Japan 
中園隼人 取締役

①全ての業種において人材採用は活性化している印象を受ける。当社は経理・人事・法務・経営企画といった一般企業の管理部門および、弁護士・公認会計士・税理士といった士業マーケットに特化した人材紹介を行っているが、いずれも過去最高の成約状況となる見込みである。20代の人材ニーズは高いが、実際に採用しやすく、即戦力として活用もしやすい30 ~ 40代の人材ニーズも高まっており決定件数が伸びている印象。ハイクラスの50代以上の人材もコンスタントに決定しており、総じて人材ニーズの高まりを感じる。

②新卒、中途を中心に、正社員採用はますます活発化すると考えられる。どの業界においても、深刻なマンパワー不足の到来に備え、人材の採用戦略を見直している印象を受ける。人材定着性や教育的側面から見ても、正社員を採用したいという企業の本音はあると思うが、どうしても正社員採用が難しい場合、アルバイト・パートといった正社員以外の雇用形態の人材の活用も必要となる。将来的に労働人口が減少していくことは明確であるため、多様な人材活用に関してチャレンジが必要になる年になるのではないか。

③2016年も人材業界は全般的に好調な年になると考えられるため、どの会社も優秀なリクルーティングアドバイザーおよびキャリアアドバイザーの確保と、優良登録者の拡大が、最も重要な経営課題になるだろう。既存社員のモチベーションを維持させつつ、会社にコミットさせ、定着して貰えるようにするかということにも配慮しないと、大切なマンパワーの流出というリスクも発生するため、十分な注意が必要。人材紹介会社自体が医者の不養生にならないよう、あらゆる角度から経営を常に見つめ直し、景気の波に乗り続けられるような努力が不可欠だ。

テクノブレーン 
能勢賢太郎 代表取締役社長

①引続き技術者の採用ニーズに関しては旺盛と思われる。新卒を含めた若手までも確保する動きが出ている。特に世界的に不足しているBtoBの発想で取り組めるエンジニアのニーズが強まっている。

②本当に欲しい人財層の確保と人手の確保。

③変わらずニーズはと強いと思われる。当社は人財コンサルタントの育成に全力を注ぐ。

インフィニットHR 
長谷部太 取締役 人材紹介統括責任者

①中小企業は、企業文化の継承をする人材(新卒)と、自社文化に対して柔軟に理解出来る能力がありながら、少しずつ進化発展させられる人材(魅力ある中高年人材)が良いのではないかと感じ始めている。それは、短絡的な採用ではうまくいかず入社後の成果も乏しい事実と未成熟で表層的な転職希望者が多くなった帰結だと思われる。

②なぜ人材を採用するのか、という事業戦略性のある明確なストーリーを伝えることが必要であり、いい人が居たらとか補充という安易な言い方は誰の心にも響かない。そしてなによりも、中小企業は今こそ企業理念、会社の強みや存在意義、事業方針や価値観の共有などを整理し、まずは社内で理解を深め、その上で採用活動に活かす必要があると思われる。目先の短絡的思考や付け焼刃的なやり方からの脱皮が必要である。また、外部要因も変化しているので労働市場での賃金に理解を深め、旧態依然とした自社都合の給与体系も見直す必要があり採用問題と直結している。

キャリアエピソード 
備海宏則 代表取締役

①16年もテロ、自然災害等リスクは多々あるが、そういったリスクが無ければこれまで通り順調に人材需要は拡大すると思う。特にある程度経験を積んだ30代、40代を中心に企業は需要があると思う。なお人材マーケットでは50代も多く転職活動されているものの、この層の需要が限られ転職活動の長期化が起こりやすくなっている。また業界再編のある家電、ヘルスケアなどは一気に転職せざる得ない方々が増加する可能性大かと思う。

②最近のトレンドであるLinkedInを中心にしたSNSの使用などダイレクトリクルーティングによりどれだけコストを抑え、良い人材を確保できるかがポイントだと思う。徐々にダイレクトリクルーティングも浸透してきたものの、まだまだおよび腰で人員を割けていない企業も多いかと思う。そこをどう打破するかが課題かと思う。

③ここ数年の好調さをどこまで持続できるかがポイントだろう。また、企業の好調さが続いたとしても企業の求める採用ニーズが多角化(ダイレクトリクルーティングなど)、ピンポイント化(厳選)しているため、なかなかこれまで通りの人材紹介では売上げの伸びが鈍ってくると思う。当社としてはより企業(クライアント)に入り込み一般のマーケットに出てこない求人ポジションをいち早くつかめるように尽力したい。

ヘイズ・スペシャリスト・リクルートメント・ジャパン 
マーク・ブラジ マネージング・ディレクター

①16年も引き続き経験とスキルを兼ね備えた人材への需要が拡大すると見ている。とりわけ高度なスキルを必要とするIT、エンジニア、医療関連の人材に対する需要はさらに拡大していくと思われる。また、安倍政権による女性活躍推進への取り組みから、女性に対する需要も高まることが予測される。

②我々が世界31カ国の労働市場における人材の需給効率を調査したグローバル・スキル・インデックスによると、日本の「人材ミスマッチ」は年々深刻化しており、15年の調査では米国やアイルランドと並んで日本は世界最悪という結果となった。限られた人材をめぐる獲得競争はより一層激しさを増すことが予想される。企業は最新の業界水準と照らし合わせて賃金レベルへの見直しを行うとともに、トレーニング制度の拡充、働きやすい環境を整えるなど、自社の魅力を高める策を講じなくてはならない。また、エンゲージメントの強化による人材の流出を食い止めることも重要だ。

③16年も人材業界は更なる活況を呈すると見ている。ITのスキルに加えて、統計やデータ解析などマルチなスキルが必要とされる「データサイエンティスト」のように、高度なマルチスキル人材への需要は更に高まるだろう。一方で、限られた人材をめぐる獲得競争はより一層激しさを増すことが予想される。「ヘイズ・ジャパン」は英ロンドンを本拠地に世界33カ国・244拠点で展開している人材紹介サービスのグローバルリーダー「ヘイズ」の日本法人で、13の業種・職種に特化したコンサルタントが「正社員紹介」「契約・派遣社員」「採用アウトソーシング(RPO)」「ITソリューションズ(業務委託)」の4つのサービスを提供し、企業の人材採用と個人のキャリアアップを支援している。深刻な人材不足へのソリューションとして、ヘイズ・ジャパンは正社員、契約、派遣、業務委託(IT)、海外からの人材獲得など様々な形態での人材紹介をワンストップで提供することを強みとしている。

ジェイ エイ シー リクルートメント 
松園健 代表取締役社長

①TPPやAEC(ASEAN経済共同体)など国際関連情勢の影響が、急速ではないにしろ緩やかに進み、引き続き海外に進出する日系企業はアジアに限らず増加傾向を示すと考えられる。特にグローバル事業を進める幹部人材の需要が増加することが見込まれ、全般的に国内を含めたグローバル関連の人材の奪いあいが活発化すると予想する。内需も外国人の観光需要や消費需要に伴って、サービス業を中心に語学系人材のニーズは高まっていく。有効求人倍率や完全失業率などの景気指標からも、今年度も昨年同様に人材需要は高まると考えられる。

②グローバル事業の人材獲得面では、今後ますます国内外共に給与含めた処遇改善が採用力の決め手になっていくため、事業展開と同時に生産性の追求と利益確保による処遇改善への取り組みのバランスが課題として挙げられる。首都圏外のオーナー系企業を中心とする経営の後継者確保の需要は引き続き高いが、年俸処遇や採用関連費への投資、多様な採用チャネルの活用に課題が残る。ダイバーシティへの対応に関して、まだまだ形式的な活用が目立ち、事業上における多様性の対応や、実体のある活用がもう一段求められる。優秀な人材獲得策の点からも、多様性に対応した多様な経歴の人材獲得が重要になっていくと考えられる。

③人材紹介においては、いかにグローバル人材需要に対応できるかが事業拡大の大きな差になってくる。若手を中心とした大量型就職、転職市場はよりシステム(ビックデータ活用、AIなど)に代替。それらに対応できない紹介会社は、ブティック型で小規模化が進み、業界の二極化がより進む。 当社は、今年の位置付け、昨年の東証1部上場を実現して以降更なる飛躍するための基盤整備とし、真のInternational Recruitment Consultancyを実現するために、国内外のキーとなる人材需要に対応できるプロフェッショナルなコンサルタント集団として、高いコンサルティング力と事業規模拡大の両面を構築していく。

インテリジェンス(現パーソルキャリア) 
峯尾太郎 代表取締役社長

①企業の採用ニーズは引き続き高く、17年4月の消費税増税にむけて16年も緩やかな上昇が継続すると想定。団塊の世代の引退による労働力不足が一段落してくる想定から、直近の上昇基調は若干落ち着くとみられる。

②求人数の伸びに対して求職者が緩やかに減少するトレンドは続き、有効求人倍率はもう一段上がるとみている。企業からすると、採用競合の数は変わらないが採用が難しくなるため、「採用要件の見直し」「採用ルートの多重化」「候補者に対する目利き力」「面接官の口説き力(面接力)」が求められる。

③企業が直接人材データベースをサーチし、採用競合よりも早く個人にアプローチできるサービスとして「ダイレクト・ソーシング」サービスを開始。

フジキャリアデザイン 
森英昭 取締役人材紹介部長

①改正労働者派遣法への各種対応で、派遣労働者の直雇用化が進み、また派遣労働者の中でも無期化が主流になると考えられる。昨年からの限定社員化や派遣労働者の直雇用化の影響で各社が抱える労働者が増え、転職者の採用意欲は漸減していくのではないだろうか。そうなって欲しいわけではないがほとんど全ての業種職種で「求人も採用も少ない」になっていくのではないだろうか。

②若年労働力が減り続ける中、限定社員化、直雇用化に加えて高齢者雇用義務化の影響を受けて、企業の高年齢化とそれによる労働生産性の低下が改めて問題化してくると考える。そんな中で、転職市場は各企業の手薄な世代と弱点を的確につかみ、10年後、20年後を読み切る先読みと経営判断が要求されてくると考える。

③企業の人材バランスの変化(高年齢化、限定社員を含む正社員化、派遣労働者の直雇用化)により、これまで通りの人材紹介に限界がくる中、人の手を介した、より丁寧なマッチングが必要になってくると思われる。当社でも各企業のニーズに敏感に対応をすべく、情報収集をスピーディーに行い、また特化した専門チームの強化を行っていきたいと考えている。

スプリング プロフェッショナル ジャパン(現LHH)
ラニス・ヤーザブ マネージング・ディレクター

①15年に引き続きIT分野の採用動向は、過去数年で最も好調に推移するとみられる。アナリティクス、クラウドソリューション、およびサイバーセキュリティ部門で働く人材の需要が大変高い。また16年は東京オリンピックに向け、建設・小売・ホスピタリティ分野の求人市場も成長が見込める。製造業においては長年のオフショア開発の影響により優秀なエンジニアのニーズは高いが人材不足の状態が続くと考えられる。

②多くの求職者はよりよいワーク/ライフバランス、より早いキャリアアップの機会、そしてより良い賃金を求めている。企業の求めるスキルとパーソナリティを備えた求職者が複数のオファーを受けることも珍しくない中で、企業は明確な役割目標と採用プロセス、インタビュー構造、スムーズなコミュニケーションとフィードバックプロセス、採用までのタイムラインを設定する必要がある。IT求職者においては常に進化する技術スキルニーズに対応するため、より新しく価値の高いスキルセットを求めて転職する傾向が高まっており、企業側もそれを支援するプログラムを準備する必要がある。

③職場での多様性とインクルージョンに関する関心・ニーズがますます高まっている。スプリングプロフェッショナルは、ITや製造業での女性従業員増加のための雇用戦略や、上級管理職登用に必要なシステム開発へのアドバイスを行っていく。

マイナビ 
山本智美 上席執行役員 紹介事業本部長

①全ての業種・職種において、企業の採用意欲は旺盛であり、衰える見通しはない。ITは「マイナンバー」「セキュリティ」「クラウド」といったキーワードと共に採用強化。自動車メーカー・その関連部品メーカーに加え、大手電気メーカー、電子部品メーカー、半導体メーカーなど積極採用に舵を切る企業が増加し、幅広い職種で追加募集がかかっている。法人営業・個人営業・販売サービスなど、いずれのポジションも増加傾向。無形商材はもとより、メーカーや商社、金融・不動産関連営業も法人・個人問わず活発である。

②各業界で企業間の採用競合度が高まっているため、応募条件の緩和が進んでおり、特に営業職においては、業界経験不問の求人が増加している。最近の新卒採用の充足度低下の影響もあり、中小企業に限らず第二新卒や15卒までも中途枠で取り込む傾向が強まっており、良い人材の採用に非常に労力が必要である。

③引き続き、あらゆる業界ニーズに応えるべく、営業網拡大・営業マンパワー強化に邁進するとともに、人材育成が重要課題である。

コンコードエグゼクティブグループ 
渡辺秀和 代表取締役社長

①好調な業績と競争スピードの加速を背景に、多くの企業で積極的な採用が継続すると予想される。特に幹部候補となる「リーダー人材」と「ITスペシャリスト人材」の争奪となるだろう。両人材とも、人材市場でひっ迫しているため、採用時の提示条件も高騰してきている。16年はこの傾向が一層強くなるだろう。大きな価値を生み出す人材には多額の報酬を払い、代替が可能な人材には報酬を抑える傾向が強まってきており、日本においても「人材の二極化」が本格的に進んできている。

②成長意欲の高い「リーダー人材」を採用するためには、経営者として必要な経験を若いうちから積める環境を整えることが大切だ。優秀な人材に対して抜擢人事を行なう企業が増えてきているため、人材を横並びで扱っている企業は、優秀な人材のリテンションに苦戦することになるだろう。また、優秀な若手人材の中には、「社会貢献」への関心が高まっていることから、自社の事業が社会変革にどのように関わっているのかを適切に説明する力が、採用上の重要なファクターとなってきている。

③引き続き、自社キャリアコンサルタントの採用と育成に尽力し、相談者とクライアント企業の期待に応えられる体制を強化する。

アクシアム 
渡邊光章 代表取締役社長・キャリアコンサルタント

①マネジメント人材の求人について、コンサルティング・ヘルスケア・IT・リテール業界を中心に、ここ数年増加傾向にあったが、いつまでもその流れが続くとは考えにくい状況だ。アジアを中心に続いてきた各業界のグローバル展開が終息。中国ではかなりの撤退も行われ、活況だったグローバル人材の求人についても、一段落しそうだ。中途採用全般はまだ増加傾向にあるだろうが、08~10年のような急激なリセッションに備える企業も見受けられ、注視したいと考えている。

②売り手市場の現在、競合他社も積極的に採用を行っているため、これまで以上に審査プロセスを迅速に進めないと候補者を他社に採用されてしまいかねない。また、採用条件(報酬レンジ)についても高騰傾向にあるため、社内バランスだけを基準に提示額を設定し、劣位に陥るケースが多発している。

③「地方創生」や「事業継承」に関する求人ニーズが急速に増えていると感じる。そのような領域で、これまでにも人材紹介実績を多数もつ当社としては、今後ますます増加する要望に応えるべく、それらの領域における採用支援サービスの充実を図っていく。

ランスタッド 
猿谷哲 代表取締役社長 兼 COO

①労働生産人口が減少する中では人材確保は困難であり、企業は効率的かつ合理的なマネジメントが必要だ。社内人材、特に女性を活用しきれていないことが、生産性が上がらない一要因となっている。企業は人材活用の最適化のために、「時間軸」ではなく「能力軸」への思考の変換、そしてどのような働き方が可能なのかを議論すべきではないだろうか。また、法整備や社会インフラを含め、女性が働きやすい環境整備も課題だ。今後、男性の介護離職の増加も予測されることから、女性の登用をCSRの義務的観点ではなく、“全リソースの最適化”と捉えることも大切だ。

②景気改善の影響もあって、各社とも優秀な人材の採用に苦労している状態だ。16年以降もこの課題は続いていくことから、企業は「採用」だけでなく、いかに社員のロイヤルティーを高め「定着」を図っていくかが重要になっている。あらゆるビジネスがグローバル化していることから、国内だけでなく世界でどう競争力を高めていけるのかに目線が移っているが、一方で、人員増でコストを増やせないというジレンマも抱えており、いかに有能な人材を確保し、どう生産性の向上につなげていくのか、難しい舵取りを迫られている。

③ランスタッドは2011年の経営統合により、企業側、候補者側が直面するあらゆるフェーズに対応できるようになった。2016年はこの体制を強化し、全てのニーズにワンストップで応えられるようサービスを拡充・深化させていく方針だ。企業側にはランスタッドの世界のベストプラクティスを活用し、人材不足の中で企業としてどう人材を引き付けていくのか=エンプロイヤーブランディングの施策提供を、候補者側には、キャリアアドバイスやカウンセリングを通じ、その人のキャリアを継続的にサポートしていくサービスの展開を考えている。

ダイジョブ・グローバルリクルーティング 
篠原裕二 代表取締役社長

①日本経済は既に世界の経済情勢に大きな影響を受ける状態にあり、中国を起点とした間接的な業績の不安要素が多い年となりそうだ。しかし、国内においては若手を中心とした労働者不足が更に進むため、企業の全体的な採用意欲は更に高まると予測する。しかし、業態毎に淘汰も加速するため、中途人材の流動は活性化するだろう。

②経済情勢の不安要素が残る中、新卒、中途とも大手安定企業に希望が偏り、中小企業は人材調達が更に困難になると予測する。また、大手安定企業においても賃金上昇とスキルのバランスが悪化し、より生産性の高い人材を獲得する必要が発生する。 そのため優秀な育児中の女性や一定のスキルを有する高齢者、在留許可を有するバイリンガル外国人の採用が更に進むことになるだろう。

③2015年度は日系企業のグローバル対応が急激に進み、スキルの高い日本人バイリンガルの需要が高まった。英語にてマネジメントできる人材が増加したことで、2016年度は不足する人材の調達を外国人に広げる企業が増加すると予測する。調達難易度により二極化するが、IT系の高度人材や製造、介護など国が調達を後押しする人材の流動が高まる。当社においては、日本人ミッドキャリアバイリンガルをDaijob.comで継続強化しながらも、日本企業の需要に合わせた外国人対象サービスも既に準備している。

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