次世代リーダーのすそ野を広げる「若手育成プログラム」を導入【富士フイルムビジネスイノベーション】

富士フイルムビジネスイノベーションは、今年4月から入社3年目までの全社員を対象にした「若手育成プログラム」を本格的に導入した。同社の次世代リーダー育成の取り組みやプログラムの内容などについて、同社人事グループ長兼教育グループ長の伊熊邦彦氏に聞いた。(取材・執筆・編集:日本人材ニュース編集部

富士フイルムビジネスイノベーション 伊熊さん

伊熊 邦彦氏
富士フイルムビジネスイノベーション
人事部 人事グループ長 兼 教育グループ長
富士フイルムホールディングス
人事部 統括マネジャー

事業概要を教えてください

1962年、富士写真フイルム(現 富士フイルムホールディングス)とゼロックスが対等合弁して誕生した富士ゼロックスが母体です。2019年に富士フイルムホールディングスが富士ゼロックスを完全子会社化し、2021年に現在の社名に変更しました。

複合機やプリンターなどの販売を行うオフィスソリューション事業、顧客企業の状況に応じたDX環境の構築と運用を提供するビジネスソリューション事業、オフセット印刷からデジタル印刷までをカバーしたグラフィックコミュニケーション事業を展開しています。

次世代リーダー育成に注力している背景を教えてください

AIの発達、グローバル化の進展、地政学リスクの高まりなど、経営環境がここ5年あまりで複雑化、高度化する中、価値を持続的に創出できる人材が何より必要です。

具体的には、強い思いを持ち、主体的に行動できる「当事者意識」、変化を脅威ではなくチャンスと捉える「挑戦意欲」、未来を見据えて問題の本質をつかみ、取り組むべき課題を見つけ出す「課題形成力」という3つが不可欠だと考えます。

この3つを備えた上で、事業や組織をけん引する次世代リーダーの早期育成が重要な経営課題となってきています。

この場合の次世代リーダーとは、サクセッションプラン(後継者育成計画)を念頭に置き、入社5年目以降の中核人材から、課長職、部長職といった将来の経営・事業を担う候補層を対象としており、特定の職位に限定せず、役割や成長段階に応じて、広く捉えています。

次世代リーダー育成の具体的なプログラムについて教えてください

プログラムは、将来を描き、具体的な戦略を立案してもらい、最後は経営に対する提言を行う戦略系、見識を磨き、判断のよりどころを学ぶリベラルアーツ系の2つに分かれています。

戦略系の研修は社長や役員による講話や社外講師の知見に加え、実務に近い課題設定のもとで検討を行い、経営戦略への理解を深めることから始まります。

それを踏まえ、自身が5年後、10年後の当社を経営すると仮定し、現在直面している経営課題をしっかり理解したうえで、それを解決するための方策や計画を考え、最後は経営層に対し、その内容の提言を行うという流れです。一般職、課長職、部長職、それぞれの階層ごとに同様のプログラムを8カ月かけて運用しています。

リベラルアーツ系に関しては、哲学、宗教、歴史、思想、倫理などを集中的に学ぶプログラムを用意しています。毎月数冊の書籍を読んでもらい、ある問いに対する答えを自分なりに考え、それをもとに研修に臨んでもらいます。

単に教養を高めるということではなく、本質を深く考える力と判断のよりどころとなる見識に磨きをかけ、大局観や人間力を鍛える内容です。

●富士フイルムビジネスイノベーションの次世代リーダー育成体系

富士フイルムビジネスイノベーション図表①
基幹人材研修では、次世代リーダー(オールFBの未来を創造し、あるべき姿に向けて会社/組織を前進させられる人)に必要な素養(①自社の将来を描き、戦略シナリオを描く力/②見識を磨き、未来を切り拓く力)を養う

これらの研修を受ける社員はどうやって決めるのでしょうか

富士フイルムビジネスイノベーションはもちろん、販売会社である富士フイルムビジネスイノベーションジャパン、国内の関連会社から将来の経営リーダーにふさわしい候補者を選抜しています。各プログラムで毎回十数人といった規模です。

社員の選抜はサクセッションプランと連動しています。人事部門が情報を提供し、役員や部門長とやり取りしながら、最終的な決定は役員が下します。

役員は「次はこの社員を育てたい」「次の部門長はあの社員がふさわしい」という思いを必ず持っており、その思いを人選につなげることが非常に重要だと考えています。役員には、選ばれた社員に対し、しっかりした動機付けも行ってもらいます。

私たちから動機付けの大切さを訴えたこともあってか、研修に参加する社員の態度や姿勢、アウトプットに対し、役員から質問を受けることも多くなりました。

研修は受けたら終わりだとよく言われますが、このプログラムは違います。役員も人事もその社員のキャリアを考え、しっかりとした動機付けを行って送り出す。そして、私たちは参加者の様子をきちんと把握したうえで、役員にフィードバックしています。

研修に参加した社員からはどのような声がありますか

戦略系に関しては、受講生同士が厳しい研修を乗り越えることで絆も深まり、同じ役職での横のつながりができることを評価する声が多いです。いざという時、チャットを使ったやり取りも行うことができ、仕事のスピードが段違いに早まったそうです。

会社を変革していくための課題形成力を高いレベルでアップグレードする非常にいい場になっているという声もあります。

リベラルアーツ系に関しては、かなりハードな内容で負担も非常に大きいのですが、評判は非常に良いです。研修後も自らの見識を継続的に磨いていくために、課題書籍を読み直しているという声が多数あります。研修だけで終わっていないという意味で、事務局としても非常に嬉しく思います。

経営層からの評価はどうでしょうか

社長や役員が一体となって実施するプログラムですので、人事部門との間で大きな方向性として認識に違いはありません。

ただ、変革を構想し実行できる人材の継続的育成という課題に応えるべく、今年4月から入社3年目までの全社員を対象にした「若手育成プログラム」を本格的に導入しました。これは次世代リーダー育成プログラムのすそ野を広げる意味があると考えています。

「若手育成プログラム」はどのような内容でしょうか

入社後3年間を「育成期間」と見なし、「3年で一人前に育てる」ことを目的としています。プログラムの内容を策定するにあたっては、現場のマネジャークラス約30人にヒアリングしました。

1年目は課題形成力と問題解決力に関して基本的な考え方を学び、2年目は学んだスキルを実務で生かすイメージをつかんでもらいます。3年目は2年間で習得したスキルや考え方を担当業務で実践します。秋にはその成果について、部門長、上司、同期社員の前で質疑応答含めて30分程度の発表を行ってもらいます。

成果発表会は、4月に人材開発拠点として東京・豊洲に開設した「Growth & Innovation Lab.」で行います。約600人が収容でき、都心における人材開発拠点としては大規模な空間です。

実は3年目の若手を対象に、昨年12月からプログラムの短縮版を導入済みで、その成果発表会を11月に「Growth & Innovation Lab.」で行う予定です。

富士フイルムビジネスイノベーション図表②
4月に開設した人材開発拠点「Growth & Innovation Lab.」で、若手育成プログラムの成果発表会を実施する

成果発表の内容は、どのようなものになるのでしょうか

開発系社員の場合、継続的に発生する品質上の問題に関する真の原因探究であったり、営業系社員であれば、売り上げを伸ばすための具体的な戦略の提案だったりします。業務の延長線上にあり、目標管理シートにも記載されるもので、人事評価にも反映します。

成果発表会では、同じ年次の仲間と比べた自分の仕事レベルが如実に判明することになります。しかも、そのレベルの高低は、本人はもとより上司の責任でもあります。そういう意味で、マネジャーの育成責任もより一層問われる仕組みとなっています。

今後の展望をお聞かせください

次世代リーダー研修がまさにそうなのですが、内部に閉じた形から、社外とのつながりを意識した内容を加えたいと考えています。

特に当社では、IT・AI技術を活用したソリューション・サービスの強化を目指しており、最先端の技術動向を実務家、学者など、社外の有識者との交流や対話を主にしたプログラムを設けることで、環境の変化により柔軟に対応できるリーダーの育成にも注力したいです。

さらに国内だけではなく、海外含め、研修とサクセッションプランの連動をより強めたいと考えています。「研修は研修」「配置は配置」というわけではなく、それらを一貫して行っていきます。研修や教育を点で終わらせたくないのです。

点を線に、さらに面につなげていく。それによって、持続的に人材が育ち、また将来的な事業継承をスムーズに行える基盤がつくられていくことを願っています。

(2026年5月22日インタビュー)

富士フイルムビジネスイノベーション株式会社

代表者/代表取締役社長 浜直樹
設立/1962年2月20日
資本金/200億円(2026年3月31日現在)
従業員数/5946人(単独、2026年3月31日現在)
本社/東京都港区赤坂9-7-3


【企業インタビュー記事はこちら】

東京流通センター バナー
タレントブリッジ
製造・建設分野の採用に強い人材紹介会社(転職エージェント)
アクセスランキング
パンフレットを郵送