アサーションとは相手を大切に尊重しながら、自分自身の意見や気持ちを率直に、誠実に伝えるコミュニケーションスキルの1つです。企業や団体における「従業員一人ひとりが不安や恐れを感じることなくいつでも安心して発言、行動できる組織の状態」を表わす心理的安全性(Psychological safety)の観点からも注目されています。
アサーションのもととなった英語の「Assertion」を直訳すると「断言、断定、主張」となり、コミュニケーションスキルとしてのアサーションとは少しニュアンスが違います。1949年に出版された書籍で医療用語として使われたのが起源とされ、対人関係に悩む人のカウンセリングに取り入れられたと言われます。その後、1970年頃にアメリカの黒人差別における公民権運動をきっかけに「相手を傷つけないよう配慮しながら、しっかり主張はする」というアサーションの考え方が確立され、日本では80年代に紹介されました。
当初は教育や医療の現場で活用されており、最近は企業でもアサーション・トレーニングを取り入れています。アサーション理論では自己主張のパターンは主にアグレッシブ(攻撃タイプ)、ノン・アサーティブ(非主張タイプ)、アサーティブ(攻撃的タイプと非主張タイプのバランスがとれた状態)の3タイプからなります。
アグレッシブは自分中心に考え、相手のことは全く考えずに自己主張するやり方で、自分の意見が正しいという前提が強く、相手の言い分や気持ちに耳を貸さず意見を通すタイプです。ノン・アサーティブは逆に自分の意見や感情を出すことなく相手に合わせるやり方で、自信が持てず自分を後回しにして相手を思いやるタイプです。アサーティブは自分の気持ちや考えを主張しつつ相手のことも配慮したやり方で、意見が食い違ったとしてもお互いが歩み寄って理解しあおうとするタイプです。3つのタイプを知ることで日頃のコミュニケーションに役立てることが大切です。
企業においてはアサーションを身に付けることで、社内コミュニケーションの活性化や従業員のメンタルヘルス改善、さらに取引先と円満な関係を作ることにつながります。なおアサーションスキルを高めるには「DESC法(デスク法)に基づくコミュニケーション」、「I(アイ)メッセージによるコミュニケーション」などの方法があります。