ディーセントワーク(Decent Work)のdecentは「適正な、まともな」という意味があり、「decent work」は日本語で「働きがいのある人間らしい仕事」と訳されます。ILO(国際労働機関)事務局長のファン・ソマビア氏が1999年に提唱したスローガンであり、2015年に国連総会で採択された2030年までに達成すべき持続可能な開発目標「SDGs」(Sustainable Development Goals)のなかでもディーセントワークの推進が掲げられています。
交通手段の発達やIT技術やインターネットの進歩、国際的な市場開放などによるグローバル化は各国の経済成長を進めて利益と発展をもたらす一方、国内における貧富の格差や失業率の増加、各国間の所得格差拡大といった深刻な問題を生みました。そんな背景からILOは、「労働者の人権・権利」という基本的な価値の実現を謳うディーセントワークを21世紀の中心的活動目標に据えたのです。
日本では厚生労働省が「ディーセントワーク(働きがいのある人間らしい仕事)実現への取組」として、ILOは「雇用の促進」、「社会的保護の方策の展開及び強化」、「社会対話の促進」、「労働における基本的原則及び権利の尊重、促進及び実現」を4つの戦略的目標に位置づけており「男女平等及び非差別はこれらの目標において横断的な課題とされている」としています(『厚生労働省』HP「ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)について」より)。また「SDGs」は17のゴール・169のターゲットから構成されており、そのなかのゴール8に「働きがいも経済成長も」というディーセントワークを促進する項目が入っています。
2020年春頃から新型コロナウイルス感染症の影響でテレワークなど働き方が変化するなか、日本労働組合総連合会によるディーセントワーク学習動画では「働きがいのある人間らしい仕事」について「安定して働けていますか?」「仕事とプライベートのバランスはとれていますか?」「給与は十分ですか、貯金もできますか?」「差別による不当な扱いを感じませんか?」というチェック項目を示し「1つでもNOがあればディーセントワークではないかも」と呼びかけています(『連合』HP「国際活動:ディーセントワークの実現」より)。