ハインリッヒの法則

ハインリッヒの法則とはアメリカの損害保険会社の安全技師であったハーバート・ウィリアム・ハインリッヒが労働災害における調査から見つけ出した法則です。同じ人間が起こした330件の災害のうち、1件が重大な事故(死亡や手足の切断等)だとすれば、その背後に重大事故に至らなかった29件の軽微な事故(応急手当だけですむかすり傷程度)が潜んでおり、さらにその背後には事故寸前だった300件の異常“ヒヤリハット”(ヒヤリとしたりハッとしたりする危険な状態)が隠れているというもので「1:29:300の法則」とも呼ばれます。ハインリッヒは1931年に出版した「Industrial Accident Prevention, A Scientific Approach」その法則を提唱しました。

日本では1951年に邦訳した『災害防止の科学的研究』(ハインリッヒ著 ; 三村起一監修)が出版されたことで広まり、厚生労働省による『職場のあんぜんサイト』でも「ヒヤリハット事例」を紹介しています。交通事故につながる事例では「配送中に車内でビニール袋が風で舞い、運転手の視界を妨げた」や「狭い道でトラックの後退を誘導中、電柱との間に挟まれそうになった」などのヒヤリハットがあれば、有害物との接触事例には「塩素タンクに塩素を補給中、飛散した塩素が目に入りそうになった」、「浴場の清掃業務で漂白剤の入った容器に、誤って洗浄剤を入れてしまい異臭を感じた」など一歩間違えば重大事故につながりかねないものが少なくありません。

ハインリッヒの法則では、このようにヒヤリハットが329件あれば次は重大事故が起きる確立が高いと警鐘を鳴らしているのです。企業のみならず医療現場や交通安全指導においてヒヤリハット事例を出し合い、どのようにしてヒヤリハットを減らしていくのか対策を立てて共有することが大切です。 現場で働く人たちが「こんな時にヒヤリハットが起きそうだ」と事前に予測することでトラブル回避につながります。たとえば自動車の運転で「たぶん事故は起さないから大丈夫だろう」と安易に考える“だろう運転”ではなく、「もしかしたら駐車車両のかげから歩行者が飛び出してくるかもしれない」と危険を予測する“かもしれない運転”によりヒヤリハットを少なくすることができます。

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