インセンティブは成果に連動した金銭的な報酬として使われるシーンがよくあります。ただし、インセンティブには動機や奨励といった意味もあり、金銭的な見返りだけを指すワードではありません。従業員のモチベーションにつなげるための制度づくりなど、金銭以外で従業員のやる気を引き出すための施策もインセンティブに含まれています。具体的には、福利厚生での還元や特別研修、昇進などが該当します。
以前の日本では、年功序列や終身雇用制度が一般的であったため、企業に長く勤めることが安定した生活を得るための方法でした。しかし、景気の後退とともに企業の体質にも変化があらわれます。長期的に働くことだけが評価対象になる時代は終焉に向かい、個々人の生産性の高さがより重要視されるようになりました。成果を上げる個人に対して金銭的な報酬を与える企業も増えていきます。ただし、その反動で個人への重圧も大きくなるようになりました。多様化の時代に合わせて評価制度を刷新し、より多面的な視点での評価が求められています。
インセンティブを設定するメリットは、従業員のモチベーションアップと行動の明確化があります。インセンティブは従業員それぞれの頑張りや成果に見合った評価をするための制度であり、自分の努力が認められていると実感できれば、モチベーションが上がり仕事により集中して取り組めるようになります。また、インセンティブを設定することにより、何をすれば会社から評価されるのかが分かりやすくなるため、目標から逆算して明確な行動計画を立てることができるようになります。
ただし、インセンティブには課題があり、評価方法に納得感を得られなければモチベーションが下がり逆効果になりますし、個人主義が進むと組織への悪影響にもなります。例えば評価の基準が曖昧で分かりにくい場合、表彰されても疑問が残るため、すぐにやる気につながらない恐れがあります。また、個人がより評価されるようになると、評価される従業員の偏りが生まれ、評価されない従業員の不満がつのる可能性もあります。 インセンティブを設定する際は、曖昧な内容や矛盾した制度にならないよう、企業方針に沿って制度を検討することが大切です。また、公平性と透明性のある評価方法を作り、従業員の納得感を得るための工夫を取り入れるようにしましょう。