ワールドカフェ(World cafe)は、堅苦しい会議と違いカフェのようにくつろぎながら多くの人と積極的に対話する手法で、組織の垣根を越えて集まり特定のテーマについて交流する「ホールシステムアプローチ」のひとつとして知られます。1995年に提唱したアニータ・ブラウン氏とデイビッド・アイザックス氏の共著『ワールド・カフェ~カフェ的会話が未来を創る~』(2005年/日本語版2007年)は10カ国で翻訳出版されました。誰もが参加して交流しやすいワールドカフェの特徴から企業や自治体、コミュニティといったさまざまなシーンで導入されています。
ワールドカフェの参加者数は16人以上が望ましいとされ、1,000人以上でも可能です。横浜市で行われた『イマジン・ヨコハマ』(2009年)や福岡市による『ふくおか未来カフェ』(2012年)のワールドカフェには約500名が参加しました。進め方は4~5名で1組となりテーブルを囲むように着席します。各テーブルには模造紙とペンやマジックを準備しておき、落書き感覚で思ったことを描けるようにします。ファシリテーターから示されたテーマにそって対話しながらメモや絵などで模造紙に表現していきます。1ラウンド(一般的に10分~30分)が終わったら席替えして2ラウンド、3ラウンドと別のメンバーで対話を行い、最後に参加者全体で共有します。
行う場所は本当のカフェでなくてもよいのですが、リラックスした空間を作ることが大切です。参加者を迎える際におもてなしの心を忘れず、会場にお花を飾る、心地よい音楽を流すことも効果的です。お菓子や飲み物などを自由に楽しめるようカフェコーナーや各テーブルに置いておくのもよいでしょう。とはいえ、日常と変わらない単なる雑談の場にならないように参加者にはワールドカフェのエチケットとして「対話を楽しむ」、「話をよく聞く」、「分からないことは質問する」、「意見を否定せず受け入れる」といったことを心がけたうえでリラックスして対話するように伝えておきましょう。
日本でもいろいろな場面でワールドカフェが開催されていますが、「楽しいだけだといわれて戸惑っている」「単なる話し合いの方法に終わっている」など内容を懸念する声も聞かれます。世界中に広がる中、ワールドカフェの本質を見失わないように十分配慮して行うことが課題となりそうです。