不定愁訴とは「体がだるい」、「頭が重い」、「物事に集中できない」、「やる気がしない」といった症状を訴えながら医療機関で検査しても異常が見つからず、病気を特定できない状態を呼ぶ臨床用語です。日常で「何となく体調が悪い」と感じても差し迫った症状がないと我慢しがちですが、不定愁訴には治療が必要な病気が隠れている可能性もあるので注意が必要です。
女性の場合はホルモンバランスの変化などにより不定愁訴が起きやすいとされます。思春期、結婚・妊娠・出産、更年期は環境も大きく変化するため精神的、内分泌学的な要因が考えられ、特に更年期になると「更年期不定愁訴症候群」と呼ばれるように60~70%は経験するといわれます。また女性は家庭や職場でもストレスを受ける場面が多く、その影響でイライラする、体がだるい、むくみや冷えといった症状につながることがあります。
女性に多い原因として考えられるのが鉄欠乏(鉄不足)です。月経(生理)により一定量の血液が失われることで血液中に含まれる鉄分が不足して「立ちくらみ」、「便秘」、「下痢」といった不定愁訴につながります。また血糖値が正常範囲を超えて低下した場合などに機能性低血糖症となり「冷や汗」、「不安感」、「強い眠気」といった症状を起こすことが多いことも不定愁訴との関連が指摘されています。
不定愁訴は英語で「Unidentified Complaints」といいますが、近年は世界的に「医学的に説明できない症状」を意味するMUS(medically unexplained symptoms)という言葉が使われています。MUSとして研究が進むなか「頭痛・腰痛・肩こり」や「手足のしびれ」など、つらい症状が長期間続いているのに調べても医学的な異常がみられないときは「自律神経失調症」と診断されることや「パニック症」「うつ病」との関連が疑われることもあります。
男性に多いのは職場のメンタルヘルス対策として課題となっている適応障害です。仕事をこなす優秀な人材だとしてもストレスに対応できず適応障害を起こす可能性があり、不定愁訴はその精神的な症状として知られます。不定愁訴がみられて原因がメンタルヘルスにある可能性があれば、症状の悪化を防ぐために社内の理解を促す必要があります。